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異世界で賢者になる  作者: キノッポ
第二章
50/89

第50話

 オーディン王国に戻った。

 女王フレイヤとは今後の詳細をある程度詰めたので、関係は維持されていくだろう。

 俺から与えられる精霊力の多さにフレイヤもミラさんも嬉しそうだったからね。


 オーディン王国に戻ってまず王との話し合いが行われた。

 まず俺の賢者への復帰。

 これに合わせて俺とアーネス様、マリアナ様の婚約の発表。

 これは予定通りだ。


 問題は大賢者やその他賢者達との調整である。

 もともと王家支持派だった人達とはすでに大筋で調整がついている。

 俺の能力の全てを明かすことはない。

 伝えている内容は、まずは進化について。

 戦具を進化させることで常時覚醒状態を維持できること。

 そしてその進化までに必要な魔力量を俺が視ることが出来ること。

 俺の魔具は戦具の情報を視ることができる特殊な魔具だった、ということになっている。


 そして王家は進化した騎士達によって王家の迷宮で大量の等級魔石を得る予定である。

 これはまだ予定で、これから王家の迷宮の最上級を攻略することで実際に達成することになる。

 今後、王家に忠誠を誓う賢者には、仕える騎士のうち一人を進化させるための魔石を王家が与えることを約束する。

 ただし、王家に忠誠を誓う賢者は『弟子』を取ることを約束する。


 この『弟子システム』が俺とアーネス様達が考えた、今後の賢者と騎士の関係において重要な要素だ。

 俺はいつか死ぬ。

 この鍵の魔具の異常な能力はいつか消えてなくなる。

 そうなった後も、オーディン王国が平和に栄えるためにどうするべきか。

 俺達が生きている間に、溜められるだけ等級魔石を溜めることも重要だろう。

 でも、それ以外に自然と騎士を進化させるシステムを作りたかった。


 いまいる賢者の騎士の進化には、俺達の力でかき集めた等級魔石をつぎ込む。

 そして進化した騎士を得た賢者は、その騎士を使って等級魔石を溜めていく。

 やがて弟子を取ってもらい、自らが溜めた等級魔石を使って、その弟子が迎え入れた騎士を一人必ず進化させる。

 これを繰り返していけば、最低でも一人の賢者に一人の進化騎士の組み合わせが生まれることになる。


 その年によって違うものの、平均すると賢者一人に対して騎士は五人の割合で存在する。

 弟子システムによって進化騎士を手に入れた賢者は、自分がいつか取ることになる弟子のために魔石を溜めながらも、進化騎士をあと4人持つことを目標に頑張ることになるか。


 魔具の魔力増幅は今後も重要になる。

 ただ2倍未満の者でも賢者の資格を喪失させることは無くす。

 必ず進化騎士を一人持った賢者となってもらうのだ。

 いま現在、魔術師と戦士になっている者達にも、賢者と騎士に復帰してもらう予定である。


 さらに、魔力増幅効果がまったくない魔具を持った者が現れた場合、その魔具に何らかの特殊能力があるという前提で、その能力を調査することにした。

 必ずあるのかどうかは分からないけど。


 必要魔力は戦具の卵の大きさに比例することになる。

 そのため進化騎士を得るという目的だけを達成するなら、今後は戦具の卵が小さい騎士候補生は人気となるかもしれない。

 でも戦具の能力は卵が大きいほど高いのも事実だ。

 ただ能力だけで賢者と騎士の関係が決まるわけじゃない。

 人と人だから、一番大事なのは相性だ。

 この辺はあまり王家側で制御しないで、自然な流れにある程度は任せることにした。

 どうしても良い相手に巡り合えない者だけ、王家側で調整して紹介するとか。


 これからやってみて、またいろいろ問題が出てくるだろう。

 俺が死ぬまでまだまだ時間はあるんだ。

 その間に弟子システムで試行錯誤しながら、徐々に良い形を作っていければいいな。


 さてさて、今後のことの調整は王に任せて、俺は俺でやらなくてはいけないことがある。

 王家の迷宮の最上級の攻略だ。

 そのための戦力を整える必要がある。


 まず、既に俺の騎士としたアンナ達5人の戦具を進化させて、属性を付与する。

 必要魔力の法則は一定だ。

 まず孵化に必要な魔力を100とすると、その50倍の5000で進化、その100倍の10000で属性付与となる。

 5人の必要魔力はこうなるわけだ。



アンナ:800→進化40000→属性80000

リーズ:750→進化37500→属性75000

カヤ:770→進化38500→属性77000

エルゼ:700→進化35000→属性70000

ルシア:720→進化36000→属性72000



 合計で561000の魔力が必要になる。

 覚醒1回分は既に与えているから、これより少し減るけど。

 それでもマリアナ様の戦具を進化させるのより少ないとは……。


 マリアナ様の戦具を進化させることは、マリアナ様との約束もあるので最優先事項です。

 進化まであと70万ほど。

 俺の基礎魔力はいま1300ほどだ。

 再び俺の基礎魔力を増やすことも本格的にやっていく。


 10日間ほど、俺の魔力を全て時間停止空間の拡張に費やした。

 アンナ達の食糧や水とお湯のためのスペース確保だ。

 ティアの再生のおかげで、10日間の間にかなり拡張することができた。


 通常の空間はスヴァルトを匿ってもらう時にだいぶ拡張してあるので、アンナ達5人が増えてもまったく問題ない。

 むしろスペースはまだまだ余っている。

 これからまた増えていくしね。


 時間停止空間の拡張が終わったら、アーネス様、マリアナ様、モニカ、ティア、ディア、そしてアンナ達5人を加えたチームで、王家の迷宮の上級を探索する。

 まだ最上級に挑むわけではないので、ひたすら等級魔石を集めるのだ。


 ティアがいるおかげで、騎士が怪我を負っても治療魔法を使わずに済んでいる。

 ティアの治癒や再生で治せるから。

 鍵の魔具に精霊力はまだまだあるし、王家の迷宮の探索でも精霊力は溜まっていく。

 もし無くなったらアーネス様にフレイヤ王国に連れていってもらって、フレイヤとミラさんが集めた精霊石から、半分の精霊力を頂いてくればいい。

 ナルル達も魔石と精霊力を集めているから、それももらえるしね。


 1日の終わりに余った魔力を、まずはマリアナ様に与えていく。

 アンナ達には悪いけど、これは最優先事項という約束なので!

 日々、俺の基礎魔力は増えていくから、必要日数も減っていくしね。


 こうしてまず30日間、王家の迷宮の上級を探索した。

 一度戻って補給を休息で10日間ほど休む。

 休むといっても、もちろんマリアナ様に魔力を与える。

 1日の間に休むことも出来て、与えられる魔力も2倍ほどになる。

 そして、休息が終わる10日目に、マリアナ様の戦具は進化した。



「ついにですね」

「はい!」

「いったいどんな進化になるのか楽しみだな」

「まさか竜が出てきたりして」

「いや~まさか」

「まさか……ね?」

「そんな気がするっしょ」

「ちょっとモニカさんやめてください」


 見えている戦具の情報では竜だ。

 確かに竜が出てきてもおかしくない。

 万が一を考えて鍵の空間の中で進化させることにした。


「いきます」



マリアナ様

1000000/2000:修復

1000000/100000:覚醒『竜』

1000000/1000000:進化『竜』



 必要魔力は溜まった。


「マリアナ様どうぞ」

「はい!」


 戦具の進化。

 アンナ達も実に興味深そうに見ている。

 俺達はもう3回目になるけど、初めて見るからね。

 さて、何が出てくるのか。


「む~~~~!」


 戦具の中で魔力が蠢いている。

 100万もの魔力だ。

 とんでもない魔力が戦具の中で高まっていく。


「言うことを聞きなさぁぁぁい!!」


 意味の分からないマリアナ様の叫び声と共に、戦具が爆発? したかのように輝いた。

 いや、実際爆発したんじゃないか?

 マリアナ様は大丈夫か!?


「マリアナ様!」

「だ、大丈夫です」

「グルゥ」


 グルゥ?

 いま獣の声が……。

 え? やっぱり出ちゃったの?


「竜ですか?」

「あの……これ……」

『え?』


 マリアナ様が手に持つ戦具の鞭。

 みんなの視線がそこに集まる。

 その鞭は茶色と緑色の混ざったただの鞭だ。

 表面が鱗みたいになっていたから、この鞭が大きくなって竜になるのかと俺は思っていた。

 でも鞭はそのままです。

 大きさ変わってないです。

 変わったのは鞭の先端に……竜? と思われる顔があるのだ。

 よく見ると鱗の表面に小さな、本当に小さな翼のようなものも見えるが。

 あれではとてもじゃないが、空は飛べないだろう。


「これが竜?」

「は、はい。竜です」

「ふむ……」

「グルゥ」


 はっきり言って可愛くない。

 まったく可愛くない。

 見た目は竜というより蛇に近い。

 もっとこう……柔らかくて大きな翼を持った竜をイメージしていたんだよね。

 その翼にダイブして、もふもふしたかったんだよね。

 全国のもふもふファンに俺は何て言ったらいいんだ。

 これ完全に蛇ですよ。


「竜というより蛇ですね」


 アーネス様が直球で言ってしまった。


「お姉様違います! これは竜です!」

「よく見れば小さな翼が見えるがな」

「グルゥ」


 鳴き声も可愛くない。

 そして竜の顔も可愛くない。

 めっちゃ睨んでくるんですけど。

 こう……目がくりくりってしていて、パタパタ羽ばたいて、可愛らしい竜もあったのではないか?

 なぜだ? なぜこんな竜を授けたのだ! いったい誰が!


 俺だった。


「えっと、生きてますよね?」

「はい」

「戦具の情報を視たいので、鍵挿しても大丈夫です?」

「大丈夫です。私の言うことはたぶん聞いてくれます」

「では」


 たぶんなの? と不安に思いながらも鍵の魔具を挿し込んだ。



マリアナ様

0/20000:修復

0/2000000:付与『暗黒』

0/10000000:解放『ニーズヘッグ』



 こうなりますよね。

 分かっていたけどね! 推測できてたけど!

 修復するだけで2万! 竜の鱗を治すのに魔力いっぱいいるもんね!


 そして付与に200万!

 属性は暗黒……まぁこの陰湿な感じの蛇みたいな竜には、確かにお似合いの属性かもしれない。

 なんだよ、こっち睨むなよ。


 最後の解放には1000万。

 どんだけ大食いなんですか。

 ただ、解放する名は知っている。

 トールが言っていた言葉と一緒だ。


 ニーズヘッグ。

 トールに神獣は竜だと告げたら、ニーズヘッグのことか? と確かに言った。

 この竜がニーズヘッグなのか。

 古代の神が知っていた竜……つまり古代の神々の時代に生きていた竜ってわけだ。

 なんかすごい。

 そして何を誇らしげな顔をしていやがる。


「どうですか?」

「付与は暗黒。そして解放は……ニーズヘッグです」

「ニーズヘッグ? どこかで聞いたような」

「トールが言っていた竜のことです」

「ではこの竜がそのニーズヘッグ?」

「なのでしょう。ただ解放がニーズヘッグなので、この戦具の竜がニーズヘッグなのか分かりませんが」

「自分はニーズヘッグだと言っています」

「え? 分かるのですか!?」

「はい。私の頭の中に声が響いてきます」


 え? もしかしていろいろ聞けちゃったりします?

 ミーミルの泉がどこにあるか知ってたりします?


「フヴェルゲルミルの泉に自分を連れていけ、と言っています」


 知らんがな。


「ミーミルの泉がどこにあるか知っているか聞いてもらえます?」

「はい……『知らんがな』と言ってます」


 お互い知らんがな!

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