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異世界で賢者になる  作者: キノッポ
第二章
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第49話

 俺はトールの言葉をみんなに告げた。


 スキールニルは魔術とルーン文字を極めた者で、呪いの魔術も得意なこと。

 ラグナロクを生き延びたこと。

 黄金のリンゴで永遠の若さを手に入れていること。

 ユグドラシル、つまり世界樹にルーン文字というもの刻んで何かしていること。

 それが平和のために良いことなのか、悪いことなのか見極めて、悪いことならスキールニルを止めろと言われたこと。

 トールは神獣という言葉は知らなかったこと。

 神獣は竜だと告げると『ニーズヘッグ』という言葉が返ってきたこと。

 知恵と知識を求めるなら『ミーミルの泉』を探せと言われたこと。

 そこには最も賢い巨人、賢者の神ミーミルがいるらしいということ。


「ラグナロクとは、古代の神々の最終戦争のことですね」

「終焉の刻ラグナロクっしょ」

「古代の神々がみんな死んだとされるその戦争を生き延びた神ということですか」

「でも人族なんですよね?」

「人族と言っても、今の人族とはわけが違うでしょ」

「ルーン文字ってなんでしょう?」

「分からないわ」

「イズンのリンゴとは違う黄金のリンゴ?」

「ニーズヘッグという言葉も分からないですね」


 みんなあれこれ言うけど、何も答えがでないものばかりだ。

 そして最も問題なのが……。


「ミーミルの泉。まったく聞いたこともないですね」

「賢者の神……つまりアルマ様達賢者の神様ってことでしょうか」

「言葉からしたらそうなりますね」

「そのミーミル様? はラグナロクで死んでいないってことなのでしょうか」

「う~ん、どうなんだろう」

「そもそもどこにあるのかも分からないのに、探しようがないですよね……」


 ごもっとも。

 何の手掛かりもなしに探すなんて不可能だ。

 とりあえずオーディン王国に戻ったら、ミーミルの泉という言葉を誰か知っているか調査はしてみよう。


「さて、話は少し変わって。モニカ」

「うっす」

「モニカの解放『トール』ですが、女神フレイヤとの戦いで使ったことで……無くなりました」

「アルマ様も見えないということですね?」

「はい。見えません」


 モニカの戦具の情報を見ても、そこに解放は存在しなかった。

 ただ……。



モニカ

資格:神の使い

1000/1000:修復



「資格という新たな情報が見えていて、そこに『神の使い』と書かれています」

「神の使い……モニカが?」

「えっへん」

「ほえ~モニカさん神の使いになっちゃったんですか!」

「モニカ偉いっしょ」

「偉いかどうかは分かりませんが、たぶん古代の神トールを解放したことで、神の使いという資格を得たんだと思います」

「なら、私は『ブリュンヒルド』を解放すれば同じく神の使いになれると?」

「その可能性はあるかと」

「私も……」

「マリアナ様も……たぶん」


 進化に100万の魔力だから解放となれば……恐ろしい魔力が必要だけどね。


「しかし、解放はいつでも使えるものではないはず」

「あのおっさんの方から声をかけてきたっしょ」

「雷神トールね。おっさんじゃないから」

「必要な時に向こうから呼びかけてくる……ということか」


 解放が使える条件は不明だ。

 今回は女神フレイヤの力に反応したのかもしれない。


「とりあえず、今後の方針ですが」


 まず明日、女王フレイヤとミラさんから聞ける情報を聞く。

 スヴァルトが暮らす町について詳細を詰めたら、俺達はオーディン王国に戻る。

 予定通り、アーネス様、マリアナ様との婚約を発表する。

 オーディン王国の大賢者やその他の賢者達との関係は王を中心に徐々に調整していくが、アーネス様達と俺で考えた計画を進めること。

 王家の迷宮の最上級迷宮を探索して攻略すること。


 基本的には変わらないけど、フレイヤ王国の女王とその側近を駒……とはもう呼ばないけど、仲間? としてこちらの意に従って動いてもらえることは、今後何かと都合が良いだろう。

 別にこき使おうってつもりはない。

 オーディン王国とフレイヤ王国の関係をさらに良くして、スヴァルトの偏見と差別を無くしていければ、それでいいんだから。


「今後の大きな目標が王家の迷宮の最上級迷宮の攻略であることに変わりはありません。マリアナ様の戦具を進化させて属性付与まで持っていくことも」

「はい!」

「解放が一度きりとなれば、戦具としての能力はすでに限界まで高めて頂いたということですね。ならば、後は私自身の問題。自らをより鍛え磨き上げていくだけ」

「モニカもやるっしょ」


 前回の王家の迷宮の最上級を探索した時に、すでにアーネス様とモニカの戦具は進化していた。

 そこからの戦具としての上積みは属性付与だ。

 属性付与もかなり大幅に戦具として強化されているけど、解放が一度きりだから、もうこれ以上の戦具としての上積みは望めない。

 だから、今後はアーネス様達自身が強くなっていく必要があるというわけだ。


 ただ、アーネス様達となら最上級迷宮は必ず攻略できると信じているけどね。

 その準備のためにもオーディン王国に戻らないと。

 まずは明日、女王フレイヤとミラさんとの話し合いだな。






「なるほど。このようなからくりであったか」

「なんて素晴らしい能力……」


 翌日。

 フレイヤとミラさんを鍵の空間の中に招いた。

 この中が一番安心して話せるからね。


「それで、我に何を聞きたいのだ?」

「まずは精霊獣について教えてください」

「うむ。世界樹に精霊力を捧げると、イズンのリンゴを授かることは知っておるな? イズンのリンゴを食べたエルフはハイエルフとなり長き命を授かる。同時に精霊獣を授かることがあるのだ」

「誰でもというわけではないのですね?」

「うむ。みながみな授かれるわけではない。なぜなら精霊獣を授かることが出来た者がその国の王となるからだ。つまりフレイヤ王国で精霊獣を授かることが出来るのは我だけ。我が死なない限り、フレイヤ王国では新たなに精霊獣を授かる者は現れぬ」

「なるほど。フレイヤ様の精霊獣は『精霊豚』ですよね?」

「うむ。見た方が早いであろう」


 フレイヤが両手を前に出すと、手の先に精霊力の渦が集まり、そこから1匹の豚が現れた。


「お~ピグモン。今日も可愛いの~。元気じゃの~」

「ピグモン?」

「うむ。我が名付けた名前じゃ」

「見る限り……ちょっと不思議な豚に見えますけど、精霊獣って実際何が出来るんですか? 強いのですか?」

「精霊獣は加護を与えてくれる。戦いにおいては何の役にも立たぬぞ」

「加護?」

「うむ。ピグモンの加護は『多産』じゃの」

「たさん?」

「多産じゃ。つまり妊娠しやすく多くの子を産める加護じゃ」

『なっ!』


 全員反応しました。


「女王フレイヤ様。その加護はフレイヤ様だけに与えられるのですか?」

「ん? そうとは限らぬ。ピグモンが気に入った者には加護を与えるぞ」

「ど、どうすればピグモン様に気に入って頂けるのですか!?」


 豚に様付けしちゃってるぞ。


「ピグモンの好物を与えると加護をもらえるだろうな」

「ピグモン様の好物とは?」

「黄金じゃ」


 黄金?


「黄金とは……黄金ですか?」

「うむ。黄金じゃ。ピグモンは黄金が大好きでの。黄金をばりばりと食べるのだ」


 なんて金のかかる豚なんだ。


「精霊獣の加護はいいとして。他の精霊王国の王も精霊獣を持っているのですよね?」

「そうだ」

「さきほど仰った精霊獣は戦いにおいて何の役にも立たないとは、フレイヤ様の精霊獣に関してですか? 他の精霊王国の王が持つ精霊獣で戦闘能力が高い精霊獣とかいますか?」

「いや、おらぬはずだ。我が知る限り、戦闘能力を持つ精霊獣は聞いたことがない。精霊獣とは加護を与えるだけだ」


 世界に恩恵を届けるというおとぎ話はここから来ていたのか。

 しかし、そうなると俺の推測の一つが外れてしまったな。


「フレイ王国の王フレイが持つ精霊獣が何かご存知ですか?」

「知らぬ」

「そうですか」

「奴の精霊獣がどうしたのだ?」

「いえ……ちょっとした推測だったのですが、フレイ王が持つ精霊獣は狼で、とても強いのではないかと思いまして」

「ふむ、狼とな?」

「はい。実は、オーディン王国に現れた魔獣がいまして……」


 あのフェンリル級の魔獣の件を話してみた。

 俺の話を聞いたフレイヤは何かを思い出すように考えると……。


「奴も神器を授かっているはずだ。それに関係するのかもしれぬな」

「神器の話が出たので、その話にいきましょうか。世界樹の守護者から賜った神器。それが『ブリーシンガメン』という首飾りでしたね」

「うむ。消滅してしまったがな」

「その世界樹の守護者が何者なのかは分からないのですよね」

「分からぬ。永遠の時を生きているとも言われておる。我も会ったのは一度きり。それも我が女王となった150年ほど前にな。それ以来、一度も姿を見たことはない」

「フレイヤ様が『ブリーシンガメン』を世界樹の守護者からもらっているなら、フレイ王も何かもらっているはず。それがあのフェンリル級の魔獣に繋がるかもしれないというわけですね」

「推測に過ぎぬがな。それに世界樹の守護者が神器を与えるのはここフレイヤ王国の女王とフレイ王国の王だけだ。他の精霊王国の王が神器を持っているという話は聞いたことがない」


 何かは分からないけど、フレイ王も神器を持っている。

 これは要注意だ。


「世界樹の精霊力を捧げるウルズの泉とは何ですか?」


 ミーミルの泉と同じ『泉』繋がりだから聞いてみた。


「それも世界樹の守護者が設けた泉だ。精霊王国の各地にある泉で、そこで精霊力を捧げることが出来るようになっている」

「どんな泉なんですか?」

「後で観にいくがよい。我にはただの泉にしか見えぬが、世界樹の細い根が一本伸びてきておる。その根を伝って精霊力が世界樹に流れるのだ」

「ミーミルの泉というのを聞いたことがありますか?」

「ミーミルの泉? 分からぬな」


 だめか。


「刻印されていない精霊石を何個か欲しいのですが」

「構わぬ。用意させよう」


 その他に世界樹の仕組みや精霊術、精霊具について聞いたけど、目新しい情報は無かった。

 フレイヤに新たな精霊術『性技』と新たな精霊具『透ける衣』があることは伏せておくことにした。


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