第48話
女王フレイヤに鍵の魔具を押し当てる。
ガチャリと音と共に開いた。
フレイヤ
制約:スキールニルの契約(解除:0/1000)
精霊力:800
精霊術『魅了』
精霊術『囁き』
精霊具『黄金の首飾り』
精霊獣『精霊豚』
やはり制約があった。
精霊獣を持ってるぞ。
でも豚?
精霊力800って女王にしてはあんまり高くない気がするけど、俺の鍵の魔具が異常なだけで、世界樹から得る精霊力ならこれでも高い方なのだろう。
精霊術は魅了と囁き。
精霊具の黄金の首飾りは最初に着けていた首飾りだろう。
女神フレイヤを召喚した首飾りは違うもののはずだ。
あれはどこにいった?
女神フレイヤと共に消滅したのか?
まずは制約の解除だ。
フレイヤ
精霊力:800
精霊術『魅了』
精霊術『囁き』
精霊具『黄金の首飾り』
精霊獣『精霊豚』
0/1000:精霊術『性技』
0/1000:精霊具『透ける衣』
制約を解除したら精霊術と精霊具が増えた。
制約状態では与えられないのか。
ただ増えた内容を見るに……しばらくフレイヤには与えない方が良さそうだな。
「フレイヤ様。聞こえますか。制約を解除しました。これでフレイヤ様は解放されましたよ」
「あ……ああ……か、解除? 制約? な、何を言っている?」
「意識が戻りましたね。僕がフレイヤ様の制約を解除したんです。僕にはそういう能力がありまして」
「ば、馬鹿な。制約の解除など」
「本当です」
ティアが前に出た。
「私はご主人様に制約を解除してもらいました。ですから、世界樹だって何だって話すことが出来ます。例えば……」
ティアは制約によって話せないことを俺の前で話してみせた。
「な、なぜ話せる!?」
「フレイヤ様も話せますよ。さぁ、話してみてください」
「そんなことが……あ、あれ? あの拒絶が起きない? なぜ……」
「僕が制約を解除したからです。本当ですよ」
「ほ、本当なのか? しかしあの制約が無ければ……」
「世界樹から精霊力を与えてもらえないですよね? それは大丈夫です。なぜなら、僕がフレイヤ様に精霊力を与えられるからです」
「ば、馬鹿な! なぜそんなことが」
「なぜと言われても、僕には出来るからです。詳細をお伝えするつもりはありません。さて、フレイヤ様は制約から解放されました。今後の精霊力は僕から与えられます。どういう意味か分かりますね?」
「我を脅迫するつもりか!」
「どう捉えるかはフレイヤ様次第ですが……ちなみに、いまフレイヤ様は精霊力を800ほどお持ちでしたか、ティアはすでにフレイヤ様より多い精霊力を持っています」
「な、なに?」
「精霊術も3つ、精霊具は2つ持っています。フレイヤ様より多いですよね? 制約によって与えられるものより、僕が与えられるのは1つ多いんです。それに精霊力も世界樹よりずっと多く与えられます。世界樹に精霊力を捧げても、その10分の1しか返ってこないのですよね? 僕なら逆に……何倍にもしてフレイヤ様に与えられますよ」
「よ、世迷言を」
「嘘か本当か。何を信じるか。全てフレイヤ様次第ですけど……制約が解除されたことは、お分かりになれますよね?」
「た、確かに制約は無くなっているようだが……」
まぁ急に受け入れるのは無理があるだろう。
フレイヤの制約は解除したんだ。
あとはゆっくり受け入れてもらえればいい。
俺以外に精霊力を与えられる存在は……いないはずだから。
スキールニルは分からないけど。
問題は俺の駒にするのがフレイヤだけにするかどうか。
この場を知っているのは……。
「取り急ぎ聞きますが、ここで僕をフレイヤ様のコレクションとしての人形にしようとしたことを知っているのは、外にいるミラさんだけですか?」
「そ、それは……」
「これに関しては時間があまりないので答えてもらえないと、いろいろ困るんですよね。だってこの中に入ってそれなりの時間が経っています。外で待機しているミラさんが何か行動を起こすようなら……面倒なことになるんですが」
「くっ……ミラだけだ。他に知る者はおらん」
「分かりました。ではミラさんを中に連れてきてもらえますか? ミラさんの制約も解除します。あ~逃げたら……きっとオーディン王国と全面戦争になりますよ? もうあの古代の女神フレイヤを召喚する首飾りはないんですよね? 僕達の強さは分かったはずです。戦えばどうなるか、分かりますよね?」
「わ、分かっておる! あんな……古代の神のような強さを見せられては、戦争などする気も起きぬわ」
「良かったです。フレイヤ様が僕達に友好的に行動してもらえるなら、フレイヤ様にも強力な力を与えることになりますから……」
「くっ、完全に脅迫ではないか」
「先ほども言いましたが、どう捉えるかはフレイヤ様次第ですよ」
フレイヤは外で待っているミラさんを中に連れてきた。
あっという間に俺達に囲まれたミラさんは抵抗することもなかった。
フレイヤが敗北したと察したのだろう。
ただ、そこから俺に制約を解除されるとは思わなかっただろうけど。
「これでミラさんも制約から解放されました」
「ほ、本当に?」
「信じ難いが、確かに世界樹のことなどを話そうとしても、あの拒絶は起きぬのだ」
「本当ですね……制約が……」
事態を受け入れる時間を少し与えて、落ち着いてもらう。
二人が知っていることをいろいろ話してもらわないといけないからね。
「さて、そろそろいいですか? まず状況を整理しましょう。フレイヤ様は僕をコレクションに加えようとしましたが、あえなく返り討ち。僕達が勝ちました」
「うむ……」
「フレイヤ様とミラさんの制約は僕が解除しました。今後、お二人は僕の仲間として行動してもらいます。僕がこれから言うことを聞いてくれるなら、今後もフレイヤ王国で自由に行動してくださって構いません。また、その対価として僕がお二人に精霊力を与えます」
「アルマの望むことは何だ?」
「まず、今後もオーディン王国と友好関係を築いてください。つまりフレイヤ様は今後もフレイヤ王国の女王でいてください。ミラさんもフレイヤ様を支える存在として」
「それはもちろん構わぬ」
「次に、このフレイヤ王国にスヴァルト達が安心して暮らせる町を作ってください」
「スヴァルトが?」
「はい。スヴァルトの魔力暴走は知っていますね? あれ、実は僕がもう解除しています。少なくともフレイヤ王国のスヴァルトは全員解除しました」
「なにっ!?」
「そこにいるナルルとディアが証拠です。とは言っても分からないでしょうが。ちなみにスヴァルトはもう僕達の仲間です。僕の魔力によって二人は相当強くなっていますから……戦っても勝てないですよ」
フレイヤを俺の駒にすることで成したいことがこれだ。
スヴァルト達の安住の地。
それをこのフレイヤ王国に作ってもらう。
魔力を与えたり精霊力を与えたりするのと、町を作るのは違う。
僕にはない能力だ。
女王フレイヤにはその能力がある。
だからやってもらう。
その見返りに精霊力を与えるのは安いものだ。
「スヴァルト達が安心して暮らせる町を作って頂けたら、見返りとして今後、フレイヤ様とミラさんが集めた精霊石の精霊力を、僕がお二人に与えます。しかも集めた精霊力を5倍にして」
「5倍?」
「それも僕の能力だと思ってください。とにかく集めた精霊力を5倍にしてお二人に与えます。世界樹から与えられる精霊力と比べたら、どっちがお得か簡単ですよね?」
本当は10倍だけど5倍にしておいた。
半分は俺がもらいます。
「それに二人が信頼するエルフが他にいるなら、その人の制約を解除して同じような条件にしてもいいですよ。あまり数が増えすぎると僕が大変なので、無限にとはいきませんが」
「分かった。制約を解除されたいま、世界樹から精霊力を与えてはもらえぬ。ならば、アルマの話に乗るしかない」
「ええ、私もそう思います」
「お二人が賢明な方で良かった。今後スヴァルトへの差別や偏見は少しずつでも構いませんので、無くしてもらえるようにお願いします」
「わ、分かった。努力しよう」
これでスヴァルトの問題は一気に解決に向かったぞ。
後はこっちの問題だ。
「さて、フレイヤ様とミラさんに聞きたいことがいろいろありますが、僕も状況をいろいろと整理できていないのが現状です。今日のところはこれで終わりにして、明日またゆっくり話し合いたいのですが」
「う、うむ。それがよいであろう」
制約を失ったいま、変な気を起こすこともないだろう。
あるとすれば、世界樹に精霊力を捧げてみて、本当に精霊力が与えられないか試してみるとか?
やりたいならやればいいしね。
「さきほど渡した精霊石はどこに?」
「我の部屋に置いてあるが」
「では今後の友好の証として、あの精霊石にある精霊力をフレイヤ様に与えますよ。5倍にしてね」
ここまでしておけば、大丈夫だろう。
その日、俺とモニカはフレイヤの館に泊まった。
アーネス様達は鍵の空間の中です。
他のエルフに見られたらだめだからね。
フレイヤの部屋に行って、実際に精霊力を与えてあげた。
どのくらいの精霊力が自分に与えられたか感じることが出来たようで、その膨大な精霊力にさすがのフレイヤも感動していた。
これで本当にもう大丈夫だろう。
精霊獣のことや世界樹、スキールニルのことなど聞くことはまだあるけど、それは明日だ。
いまはアーネス様達と情報を整理することにしよう。
モニカと一緒に鍵の空間の中に入った。
「今日は本当にみんなお疲れ様。みんなのおかげで何とか乗り越えられたよ」
「全てアルマ様の導きによってです」
今回は反省が大きすぎて、持ち上げられると何だか罪悪感が湧いてしまう。
「ご主人様。スヴァルトのためにありがとうございます。まさかスヴァルトが安全に暮らせる町を女王フレイヤに求めて頂けるなど……こんなこと夢にも思えませんでした」
「ナルル達のことを考えた時に、どこかにスヴァルトが安心して暮らせる場所があればな~ってずっと考えていたからね。フレイヤを僕の下に置こうと思った時に、あのことは真っ先に思いついてたんだ」
「これで仲間達と一緒に暮らせます」
「さて、今日起きたことを少しみんなで整理しよう。フレイヤの部屋で彼女に精霊力を与えた時に、もう一つだけ追加で聞いておいたんだ。古代の女神フレイヤを召喚した首飾りのことを。あれはフレイヤの精霊具の『黄金の首飾り』ではなく、世界樹の守護者から賜った『ブリーシンガメン』という神器だそうだ。神器の中に古代の女神フレイヤの力が眠っていて、世界樹に危険が迫る時に使えと言われていたそうだ」
「世界樹の守護者ですか」
「うん。そいつがスキールニルだと思う。モニカの解放によって古代の神の雷神トールが僕とモニカの中に現れてくれた。そして雷神トールの神器を得たモニカがオッタルという女神フレイヤの戦士を倒してくれて、さらにフレイヤの魂を解放してくれたおかげで、僕達は勝てたわけだけど、そのトールが言ったんだ」
俺はトールの言葉をみんなに告げた。




