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異世界で賢者になる  作者: キノッポ
第二章
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第43話

 ギルドにミラさんへの連絡をお願いしてから返事が来るまで10日間ほどかかった。

 どうやらミラさんはハイエルフの居住区にある迷宮に行っていたそうだ。

 ハイエルフ自ら迷宮を探索するんだね。


 返事には迷宮から戻ってきたばかりで準備があるため、5日後にと書いてあった。

 その5日後に連絡がきた。

 手紙には期待していた女王フレイヤ様にお会いできることが書かれていた。

 フレイヤ様に直接精霊石を渡せることになったぞ。

 3日後に謁見だ。


 女王フレイヤは魅了系の精霊術を使える可能性が高い。

 自分に状態異常の耐性を上げる魔法をかけておいた方がいいだろう。

 魔法を使う時は魔力を増幅してくれない鍵の魔具だから、基礎魔力1000ぐらい込めて状態異常耐性を上げようかな。


「いよいよだね」

「これで私も戦具を授けて頂けるのですね!」

「まずはアルマ様とフレイヤ様が話し合ってからだ。神獣に関する情報が得られた場合は、マリアナの戦具を孵化させないことだってあるのだからな」

「分かっています、お姉様」


 ティアの再生のおかげもあって、1日に使える魔力は3000をキープ出来ていた。

 1日にモニカに与えられた魔力は3万。

 こうなりました。


モニカ

500000/1000:修復

500000/500000:解放『トール』


 解放の魔力が溜まった。

 50万の魔力が溜まった時、モニカの勘でどうかと聞いたら意外な答えが返ってきた。


「使えないっしょ」

「使えない?」

「戦具に拒まれている感じがするっしょ」

「どういうことだろう」


 モニカの勘の答えは、使えないであった。

 戦具に拒まれる?

 戦具には意思があるってこと?

 分からないけど、使えないなら仕方ない。

 もしかするとモニカの成長と共に使えるようになるかもしれないしね。


 モニカの解放が溜まったことで、今度はアーネス様に魔力を与えつつ、空間の拡張も続けている。

 時間停止空間はいくらあってもいい。

 貯蓄できる食糧、水、お湯が増えるのだから。





 3日後、ギルドに行くとミラさんがいた。

 ハイエルフの居住区への立ち入りは原則禁止されているが、こうしてハイエルフの招きがあれば例外的に入ることができる。


「ミラ様。本日は女王フレイヤ様にお会いできる機会を頂き、本当にありがとうございます」

「フレイヤ様もアルマさんに興味を持たれましたので。それにしてもあれだけの精霊石をこの短期間で一杯にするとは……アルマさんはよほどの働き者か幸運の持ち主ですね」

「たまたま運が良かっただけです。それに戦うのは僕ではなくてモニカなので」

「うっす」

「そちらの戦士が……」


 ミラさんのモニカを見る目はあきらかに侮辱の色が見えた。

 胸が大きくて褐色肌のモニカはスヴァルトに似ていると言えば似ている。

 しかも騎士の落ちこぼれの戦士だ。

 ミラさんからすれば太って醜い女に見えているのだろう。


「ではこちらの馬車へ。道中に外を見ることがないようお願いします。魔道具のカーテンで開けられないようにはなっておりますが」

「了解しました」


 ハイエルフの居住区までの道のりを見させないのか。

 王都の中央区域がハイエルフの居住区だと分かっているけど、どのルートを通っていくのか知られたくないのかな。

 特にこれからいく場所は女王フレイヤと謁見するために、女王の館に行くしね。


 ミラさんは別の馬車に乗っている。

 俺とモニカの二人だけを乗せた馬車が動き始める。

 1時間ほど揺られたところで、目的地に到着したようだ。


「お降りください」


 フレイヤ王国ではちょっと珍しい男性のエルフの兵士だ。

 女性の方が圧倒的に多いとはいえ、男性のエルフがいないわけではない。

 馬車を降りて兵士についていく。

 大きな館の前にミラさんが待っていた。

 先に着いていたようだ。


「ようこそ、フレイヤ様の館へ。女王もお待ちかねです」


 笑顔のミラさんに案内されて館の中に入る。

 豪華な館だ。

 調度品も一流のものばかりなのだろう。

 黄金を使ったものが多いように見える。


「戦士の方はあちらの部屋でお待ちください」

「む? モニカも」

「いや、モニカはあの部屋で待っていて」

「……了解っしょ」


 不満顔なモニカをエルフの兵士が連れていく。

 モニカのことをみんな見下したように見ているな。

 やっぱりスヴァルトに似ているからか?


「では参りましょう」


 モニカがいなくなったことでより上機嫌になったミラさんに連れられて、館の最上階の一番奥の部屋へとやってきた。

 ここが女王の間のようだ。

 重厚な扉の前でミラさんが立ち止まる。


「フレイヤ様。オーディン王国の魔術師アルマさんをお連れしました」

「よい。入れ」


 ゆっくりと扉が中から開かれる。

 この館は外見からして豪華だったけど、この女王の間はとんでもない。

 床一面が黄金だぞ。

 柱に天井もか。

 どんだけ黄金好きなんだ。

 黄金の床の先にある黄金の玉座に、女王フレイヤ様は座っていた。

 なるほど一瞬見ただけで、その美貌はエルフ族の中でも一際美しいと分かる。

 何ていうか惹きこまれて魅了されてしまいそうな美しさだ。

 それとも魅了系の精霊術をすでに使っているのか?

 状態異常耐性を上げているから、この程度で済んでいるのかもしれない。

 ミラさんに事前に言われた通り、女王の間に入るとすぐに膝をついて頭を下げた。


「オーディン王国の魔術師アルマでございます。光栄にも世に名高い女王フレイヤ様のお目にかかる栄誉を授かり感謝の極みでございます」

「よい、顔を上げよ。ミラからそなたのことは聞いておる。大変働き者の魔術師とな。エルミアが渡した精霊石だけではなく、ミラが渡した精霊石を輝かせたそうではないか。それも短期間に」

「お褒めに預り光栄です。たまたま幸運にも霊物に多く遭遇できただけです」

「謙遜するでない。あれだけの精霊石を輝かせたのだ。胸を張ってよいぞ」

「ありがとうございます。私だけではなく戦士のモニカが頑張ってくれたおかげです」

「ほ~そなたの戦士は……それなりに出来るようだ」

「はい。ですがハイエルフの方達と比べられると、その差は歴然でございます。さすがは世界樹に選ばれた種族の中でも高位の存在であらせられます」

「ほっほっほ。ミラの言う通り口が達者ではないか」

「とんでもございません。本心からでございます」

「何が望みなのだ?」


 フレイヤ様は俺を見定めている。

 進化戦具を持つモニカがハイエルフに劣っているとは思えない。

 むしろティアから見えた情報から推測するに、モニカ一人でこの女王の館を制圧出来てしまいそうな気もする。

 でも油断は禁物だ。

 ハイエルフがどれだけ精霊力を溜めていて強いのか知らないのだから。

 それが女王となれば、相当な精霊力を溜めているだろう。


「私の望みは世界樹に精霊力を捧げて、世界に恩恵を広げることです。それが我がオーディン王国のためになると思っています。そのためにもこの精霊石をフレイヤ様にお渡し出来て幸せでございます」

「くっくっく。良い、良いではないか。その輝き。素晴らしいぞ」


 両手に持った精霊石をミラさんが受け取ると、フレイヤ様に側に行き渡した。

 その時、何かをミラさんに耳打ちしたのが分かった。


「アルマよ。そなたに特別にある栄誉を授けよう。本来なら人族では決して立ち入ることが許されぬ場所に入ることを特別に許可する。そこは迷宮だ。この精霊石をそこで輝かせることが出来るか?」


 フレイヤ様の手に置かれた精霊石。

 ミラさんからもらったものよりさらに大きいぞ。

 精霊石の表面もまるで輝いているようだ。

 質、大きさ共に最上級の精霊石ってわけだ。


「未熟者なれど、フレイヤ様から賜る精霊石を必ずや輝かせてみせます」

「そなたに入ることを許可する迷宮は『世界樹の迷宮』である。本来はハイエルフしか入ることが許されぬのだぞ」

「ははっ! 光栄の極みでございます」

「世界のために頑張るがよい。ああ、もちろんあの戦士も一緒に連れていくがいいぞ。ただ、世界樹の迷宮はとても危険だ。そなたと戦士が命を落とすこともある。それでも行くか?」


 どの程度の難易度なんだ?

 まさか最上級迷宮?

 仮に最上級迷宮であっても、属性付与されたアーネス様とモニカがいる。

 マリアナ様とティアとディアもいるし、ナルルも来てくれている。

 入口付近で戦うには十分な戦力だと思えるけど。

 ハイエルフしか入ることが出来ない迷宮、しかも世界樹の迷宮だ。

 ぜひとも中を見てみたい。


「はい。行かせてください」

「くっくっく。よいだろう。後で誓約書に署名するがよい。そなたと戦士が命を落とした時に、オーディン王国へそなたと戦士が自らの意思で世界樹の迷宮に行ったことを証明するものだ」

「わかりました。精一杯頑張ります」


 ここで振ってみるか。


「我がオーディン王国には古いおとぎ話に神獣が登場します。神獣はオーディン王国を悪魔から守ったそうです。世界樹に精霊力を捧げると精霊獣が産まれて世界に恩恵を届けるという話を聞きました。二つの話は似ているように思えてなりません。オーディン王国を悪魔から守ってくれた神獣とは精霊獣のことではないかと、私は考えています」


 フレイヤ様はミラさんの時と同じように精霊獣を持ち上げられていることに良い反応を浮かべているように見える。


「面白い考えではないか。確かにエルフ族を守護する存在として精霊獣の話はある。それがそなたの国を悪魔から守った神獣と一緒かどうかは分からぬが」

「そうでしたか。フレイヤ様なら何かご存知ではないかと思いまして」

「そなたに比べれば長き時を生きておるが……神獣で我が聞いたことがあるのは、かつて世界を支えた存在であり、世界の終わりを告げた存在でもある、という話だけだ」

「世界を支えた存在であり、世界の終わりを告げた存在……」

「そんなに神獣のことを知りたいなら、ここではなくフレイ王国に行くべきだったの」

「フレイ王国は神獣のことに詳しいのですか?」

「フレイ王国の王フレイがの。奴は古代の神話のことをずいぶん研究しておる。遥か過去を知ってどうするのか我には分からぬがな」

「そうでしたか……」


 フレイ王国の王フレイは古代の神話を研究している。

 面白い話を聞けた。

 フレイが古代の神話を研究していることと、マリアナ様に執着していることは、やはり神獣に繋がるのか。

 マリアナ様の戦具の卵に神獣がいると分かっている?

 いや、それならもっと早くに強引な手法を取ってくるのでは?

 確信は持てないが、マリアナ様のあの巨大な戦具の卵からして、その中に神獣がいるかもしれないと思った。

 どうにかしてマリアナ様を妃に迎えて、その後にじっくり調べるつもりだったとか。

 推測にしかならないけど、フレイがマリアナ様の戦具の卵の中に神獣がいるかもしれない思っているのは間違いなさそうだ。


「貴重なお話ありがとうございます。早速ですが、誓約書に署名の後に世界樹の迷宮に入りたいと思います」

「今晩ぐらいはゆっくりしていかぬか?」

「お気遣いありがとうございます。ですが、私は一刻も早く精霊力を集めたいので」

「良い良い。アルマは本当に働き者だ。そなたの活躍を祈っておるぞ」


 そう言って俺を見るフレイヤ様の顔は、蛇が獲物を狙うかのような笑顔だった。


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