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異世界で賢者になる  作者: キノッポ
第二章
41/89

第41話

 黄金に輝くリンゴ。

 ティアのイズンのリンゴが現れた。

 リンゴを手にとりまじまじと眺めるティア。

 そしてついにリンゴを食べた。


「はむ……お、美味しい!」

「モニカも食べたいっしょ」

「だめだよ。ティアがちゃんと全部食べてね。中途半端なハイエルフになったら大変だ」


 もぐもぐとティアはイズンのリンゴを全部食べ終えた。

 食べている時からティアの体から黄金色の輝きが溢れていたが、食べ終わるとより一層強い輝きを放つ。

 神々しいといえばいいのか。

 思わず拝みたくなってしまうな。

 しばらくすると黄金色の輝きは消えていった。



ティア

精霊力:1000

精霊術『治癒』

精霊術『結界』

精霊術『再生』

精霊具『白法衣』

精霊具『白雪杖』

0/10000:種



 あれ? 何も変わってないぞ。

 イズンのリンゴが消えただけだ。

 精霊獣の情報は追加されていない。

 ハイエルフになったとかもないし。

 ティアがじっと俺を見つめてくる。


「おめでとう。これでティアはハイエルフだね」

「何かティアのことで新しく分かったことありましたか?!」


 やっぱり気になるよね。


「ハイエルフになったとかは視えないね。そもそもハイエルフってエルフ族が考えた言葉だからかな。イズンのリンゴを食べたエルフは長命になるから、普通のエルフとは違うという意味でハイエルフと位置付けた。その情報は僕には視えないけど、ティアは長命になったんだと思う」

「精霊獣は……」


 そこやっぱり気になるよね。


「ティアには精霊獣の祝福はなかったみたい」

「そ、そうでしたか」

「でも、精霊獣の代わりの祝福が出てきたよ」

「えっ?! なんですか?!」

「種だね」

「種?」

「うん、種」

『種?』

「うん、だから種だって」

「種……とは何の種ですか?」

「分からない。でもきっとすごい種なんじゃないかな。マリアナ様の神獣と同じだけの精霊力を必要としているから」

「ほえ~。私の神獣と同じ」

「それはきっとすごい種だな」


 種のことは今まで伏せていた。

 精霊獣の代わりということにしておこう。

 何の種なのか分からないけど、役に立たない種ではないだろう。

 精霊力10000も必要なんだから。

 植えたらずっと豊作が続くとか、きっとご利益があるはずだ。


「精霊力も1000まで上げておいたよ。明日からの探索で、みんなを守ってあげてね。新しい精霊術『再生』と精霊具『白雪杖』はどうかな?」

「はい。ご主人様から授かった新たな力が分かります。精霊術『再生』は治癒では治せないような重い怪我や病気を治せます。精霊具『白雪杖』は私の精霊術の効果を大幅に上げてくれるようです」


 ティアの力の源は精霊力だ。

 鍵の魔具に溜めた精霊力分しか俺も与えられない。

 ティアは支援回復系の精霊術だったから、いざという時の出番まで精霊力を温存できるのがありがたい。

 これが戦闘系だったら、戦うために精霊力を消費することになるからね。


 マリアナ様の戦具の卵の神獣も、9990/10000となっている。

 これで後は鍵の魔具に溜められるだけ精霊力を溜めて、最後に持っている精霊石を輝かせたらいい。

 精霊力はこれでいいとして……明日からは魔力だ。

 俺の基礎魔力をもっと上げていく。

 そして、明日はついに属性付与を試す。



アーネス様

73250/1200:修復

73250/120000:付与『聖属性』

73250/600000:解放『ブリュンヒルド』


モニカ

100000/1000:修復

100000/100000:付与『雷属性』

100000/500000:解放『トール』



 モニカの魔力を10万まで先に与えたのだ。

 明日は雷属性の付与を試してみる。


「大丈夫っしょ。モニカの勘は当たるっしょ」


 モニカ曰く、雷属性の付与は一時的ではなく永続的なものだそうだ。

 戦具に魔力が溜まった感じからして、モニカの勘がそう言っているそうな。

 モニカの勘は当たるから、明日は期待しよう。


 属性付与が永続的なものなら、次はいよいよ『解放』となる。

 モニカの解放に必要な魔力は50万。

 今の俺では気軽に溜められる魔力じゃない。

 まぁ、こんな魔力を気軽に溜められるようになるのもどうかと思うけど、せっかく鍵の魔具のおかげで基礎魔力が増えていくんだ。

 オーディン王国のためにも、志は高く持たないとね。

 それとマリアナ様のためにも。


 あいかわらず戦具を得られないマリアナ様。

 明日からの上級迷宮の最奥部での探索でも、おそらく実質戦力にはならない。

 特に迷宮主との戦闘では。

 この探索が終わって女王フレイヤ様に会えることが出来れば……結果がどうであれ、マリアナ様の戦具を孵化させることになっている。

 ただ……会えなかったらどうしよう!





 翌日。

 昨日恐ろしいことが判明してしまった

 ティアが新たに得た精霊術『再生』だ。

 治癒よりも高い回復効果を持つこの精霊術……なんと俺の体力と精力も再生してしまったのだ。

 昨日はティアとお風呂に入っていたんだけど、そこでティアが再生を試してみたら、自分の体力と精力が回復したのが分かった。

 あまりに恐ろしい効果である。

 そして、ティアは分かっていたようだ。

 使用者本人であるティアは分かっていたのに、あえてみんなの前では内緒にしていたのだ。

 俺はその場で土下座する勢いで、ティアにこのことを内緒にしてもらうようお願いした。

 ティアは快諾してくれた。

 素晴らしいほど可愛らしい笑顔と共にこう言って。


「ティアと二人きりの時だけ使いますねっ!」


 ティア……恐ろしい子!



 そんなわけで迷宮探索です。

 この上級迷宮の迷宮主に関する情報はない。

 最奥部まで探索するエルフ族なんてほとんどいないそうだ。

 そんなことをするのはハイエルフだけだそうな。


「念のため迷宮主を見つけてからにしようか」

「了解っしょ」


 モニカの勘を疑うわけじゃないけど、勘は勘だから。

 雷属性付与を使って、やっぱり消費型でしただと勿体ない。

 せめて迷宮主を見つけていれば、それも有効活用できる。

 初めて使う雷属性をモニカが使いこなせるかは別問題として。


 さすがは上級迷宮の最奥部とあって、魔物の攻勢も激しいものがある。

 とはいえ、俺達はまだまだ余裕だけど。

 基本陣形で問題なく対処できているし、少し陣形が乱れることがあれば空を舞うアーネス様がすぐに上空からサポートしてくれる。


 迷宮主を見つけたのは空を飛ぶアーネス様と、偵察用魔霊獣を持つディアが同時であった。


「いた」

「あれですね」


 アーネス様が降りてくると、強力なゴーレムの群れを見つけたと報告してきた。

 同じくディアの闇鷹の眼もそれを捉えていた。

 中央に一際大きいゴーレムが1体。

 その周りを取り囲むようにゴーレムが6体いるそうだ。


「迷宮主と見て間違いないね」

「あの頑丈そうな体……何の材質か分かりませんが、持ち帰られるならお願いしたいです」

「了解」

「いくっしょ?」


 モニカはやる気満々です。


「もちろん、やるっしょ」


 俺の言葉に笑顔で答えるモニカ。

 金剛の斧を構えると精神を集中していく。

 斧と鎧の戦具の中で魔力が爆発的に高まっているのが分かる。

 10万もの魔力がいま雷属性となるべく蠢いている。


「なっ……」


 まさにそれは雷鳴。

 ゴォォンという轟音と共にモニカに雷が落ちたように見えた。

 実際は逆か。

 モニカから雷が発生したのだろう。

 黄金色の斧と鎧は、その色を輝かせながら雷を纏っている。

 無数の黄金の雷の線が斧と鎧を駆け巡っているのだ。


「どう?」

「魔力が減る感覚は無いっしょ」

「モニカの勘が当たったね」

「これすごいっしょ。今ならアーネスっちに勝てるっしょ」

「ほ~私にか」

「こらこら、ここで試合はしないでよ」

「アーネスっちが聖属性を付与されたら勝てないっしょ。帰ったら勝てるうちに試合するっしょ」

「それずるくない?」


 二人の試合はさておき、問題はどれだけすごいかだ。


「どれだけすごいか見せてもらえるかな? こっちに向かってきているようだし」

「ういっす」


 あれほどの魔力の爆発と雷鳴だ。

 迷宮主と取り巻き達はこちらに近づいてきていた。

 俺達を視認すると、敵意を露わに襲い掛かってくる。


 次の瞬間、モニカが取り巻きのゴーレムを1体叩き潰していた。

 見えなかった。

 モニカが動いたのがまったく見えなかったぞ。


「む、速いな」


 アーネス様は見えているのね。

 雷属性によって動きが高速化……光速化と言った方がいいか。

 とにかく速い。

 モニカは真正面から叩き合うのが得意だ。

 重量のある金剛の斧と鎧はそのためにうってつけの戦具と言えた。

 その重さに雷の速さが加わって、とんでもないことになっている。

 取り巻きのゴーレムが次々と叩き潰されていく。


 迷宮主のゴーレムも黙っていない。

 両手からビーム砲のようなものを放っている。

 でもモニカが速すぎて当たらない。

 あっという間に6体の取り巻きを叩き潰し終えた。


「やっちゃっていいっしょ?」

「いいけど……」

「待て。モニカばかり活躍させんぞ!」


 アーネス様も羽ばたいて迷宮主と戦い始めた。

 続いてナルルとディアも参戦する。

 俺とマリアナ様とティアは後ろで高みの見物です。


「モニカの攻撃凄まじいですね」

「あれなら最上級迷宮の魔物も」

「ですね」

「ご主人様達が勝てずに退却した王家の迷宮の最上級ですか」

「うん。オーディン王国に戻ったら、あそこを探索して攻略したいんだよね。等級魔石をたくさん手に入れられるだろうから。それを王家が貯蓄すれば」

「お父様頑張っていましたね」

「さすがは王様だね。スヴァルト達を匿ってもらうために何度か戻ったけど、賢者騎士達との話し合いは上手い方向に進んでいるようだね」

「大賢者様達からはずいぶん反発を受けていたようですけど」

「それは仕方ないかな。まだ僕の存在を公表していないからね。帰ったら正式に公表するから、そうすれば大賢者様達も王家に従うはずさ。そうでなければ、自分達が不利になると分かるだろうから」

「ご主人様がいれば他の賢者はいらないのでは?」


 ティアの疑問だ。

 まぁそう思っちゃうよね。

 でもそれでは国の形が持たない。


「僕しか賢者として認められなかったら、他の賢者はきっと他国に行ってしまう。僕が生きている間はそれでもいいかもしれないけど、僕が死んだ後はそうはいかない。それに賢者の権力が僕だけに集中するのは良くない。例えそれがもっとも効率的であってもね」

「でもご主人様に魔石を集中させるのが、最も栄える道では?」

「今言ったように、僕が生きている間はそうかもしれない。僕はいつか死ぬ。次代の人達のことを考えないとね。ただ……賢者と騎士の関係性は変わっていくだろうけど。特に進化の存在によって」

「私達が最上級迷宮を攻略できれば、多くの等級魔石を支給することができます。大賢者だけではなく」

「最低でも一人の賢者に一人の進化騎士。これが出来ればオーディン王国の国力はすごいことになる。どうしても賢者の数は騎士の数より少ないから、結局は魔力増幅効果の高い魔具を持つ人に、多くの進化騎士を持ってもらうことになるだろうけど」

「進化騎士が当たり前になったら、精霊王国は太刀打ちできないでしょうね」


 オーディン王国だけが強くなり過ぎたら。

 王は他国を侵略するつもりはまったく無いでいる。

 でも次代の王達はどうなるか分からない。

 王には男の子供がいない。

 娘が二人とも戦具の卵を授かるという奇跡を得たことで、アーネス様の主となる賢者が時代の王となるか、アーネス様が女王として即位するかどちらかの予定だった。

 アーネス様の主の賢者には俺がなってしまった。

 俺は王にはなりたくないので、出来ればアーネス様に女王として即位して欲しい。

 政治のこととか分からないし。

 アーネス様に以前話したら、頑張ります、と答えが返ってきた。

 頑張って! アーネス女王!


「そろそろ決着がつきそうですね」


 ずいぶん早い。

 王家の迷宮の上級迷宮の迷宮主の時は30分近くかかったはずだ。

 10分もかかっていない。

 それだけモニカの攻撃力が上がっているのだろう。

 アーネス様にも聖属性を付与できれば……最上級迷宮もいける気がしてきたぞ。



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