第4話
綺麗なお姉さんは好きですか?
ハイ、大好きです。
可愛い女の子は好きですか?
ハイ、大好きです。
そんなわけで学院3年生となりました。
あれから2年。
魔力と魔法の勉強に励み、さらには教養や一般常識、歴史のことなども学んだ。
前世ではこんなに勉強したことなかったよ。
俺頑張った!
賢者学院の中で俺の評判はすこぶる良い。
先生達の中での評価も高く、騎士学院の方でも噂になっているらしい。
同じ敷地内にある学院とはいえ、広大な敷地で東と西に分かれており、会うことも話すこともない。
しかし噂はどこからともなく流れていくとか。
いや、絶対先生達が噂を流しているとかしか考えられないけど。
今日は待ちに待った騎士候補生達と初めて顔を合わせる日だ。
騎士学院側の噂もちらほら聞こえてきていた。
だから注目されている騎士候補生のことは何となく分かる。
「それでは賢者学院3年生を紹介します」
10人しかいない賢者学院3年生の俺達は一人ずつ先生が紹介していってくれる。
とは言っても、紹介の時に名前だけ呼ばれるだけなのだが。
俺達は大きな会場の前で、それなりの間隔を空けて椅子に座っている。
自分の隣に魔具の卵を出して。
名前を呼ばれたら立って軽くお辞儀をする程度だ。
一番拍手が大きかったのは俺である。
そんな俺をモードル君がまた睨んでいた。
俺達とは逆に騎士候補生達の人数は凄まじい。
俺もちょっと勘違いしていた。
騎士学院3年生の子達と顔合わせするのかと思っていたら違った。
なんと騎士学院1年生から5年生までの女の子達が集まっていたのだ。
総勢265人。
1学年当たり平均で53人もいるのか。
俺達10人の前に265人の女の子達がいる。
530の瞳の視線を集めている。
正直言って緊張してあんまり居心地よくない。
そんな俺とは対照的にモードル君とかは実に心地よさそうだ。
彼女達からの視線を当然のように受け止めている。
いやいや、ここら辺がこの世界の純粋な人とそうでない俺との違いか?
それとも貴族と捨て子の違いか?
俺達の紹介が終わると、事前に決まっていたのだろうが、騎士候補生の女の子達はいくつかのグループに分かれて俺達に挨拶にくる。
グループの分け方は、まずは学年ごとだ。
そして学年の中で、いくつかのグループに分けられている。
それは戦具の卵の大きさだろうな。
挨拶に来るときには、戦具の卵を出している。
戦具の卵の大きさを確認するのが大事だから。
逆に俺達の魔具の卵の大きさも見ているわけで。
グループの戦具の卵の大きさは、そのグループの中ではだいたい同じだ。
最初に1年生から挨拶に来た。
まだ10歳の女の子だけど、かなりしっかりしている印象を受ける。
特に戦具の卵の大きさがちょうどいいぐらいの女の子達は、何か自信に満ち溢れているかのようだ。
逆に卵が小さい女の子達は自信なさげ。
これってもうすでにカースト制度のようなものが出来上がっているのでは?
騎士学院の生活がどんなものか見てみたいと思ったこともあるけど、これは見ない方がいいな。
絶対怖いと思う……。
俺に挨拶する中で戦具の卵がかなり大きめの女の子達の気合の入りようは凄かった。
戦具の卵が大きすぎても賢者に選ばれない。
性能は良いが魔力の燃費が悪いから。
でも魔具の卵が馬鹿でかい俺なら、魔力増幅効果がかなり高くて、戦具の卵が大きい自分でも選んでくれるかもしれないと思っているのだろう。
自分を売り込むためのアピールは10歳の女の子でも凄まじいものがあった。
1年生に続いて2年生。
2年生に続いて同学年となる3年生。
265人の挨拶を受けるのも大変だ。
ぶっちゃけ名前なんて覚えきれません。
次は一つ年上の4年生のようだ。
4年生の最後のグループが挨拶にきた。
戦具の卵が小さいグループから挨拶にくるので、つまり4年生の中で戦具の卵が大きいグループとなる。
「モニカっす」
「え、は、はい。アルマです」
「よろしくっしょ」
「……よろしくお願いします」
挨拶にきた中でモニカさんという女性の挨拶は印象的だった。
それまでみんな丁寧に挨拶しつつも、自分アピールがすごいという感じだったのに、このモニカさんはめちゃめちゃ軽い挨拶だったのだ。
見た目も印象に残った。
まず珍しい褐色肌。
オーディン王国でも南の方の出身なのだろう。
瞳は俺の同じ黒い瞳だ。
髪は銀髪ショートで活発な感じがする。
顔立ちは綺麗……というよりカッコいいといった方がいいかもしれない。
ぱっと見でボーイッシュな印象を受ける。
でも身体はめちゃめちゃスタイルが良い。
なんていうかエロい。
特にピンク色の唇がエロい。
そしてあの迷信通りだ。
いや、きっと迷信ではないのだろう。
戦具の卵が大きい女性は胸も大きくなる。
モニカさんはいま14歳だけど、すでに胸が膨らんでいた。
これからさらに成長したら間違いなく巨乳になる。
今でもすでにエロい雰囲気なのに、これからさらにエロくなるというのか!
ちなみに戦具の卵も大きかった。
俺の魔具の卵を同じぐらいの、大人一人分ぐらいの大きさの卵だった。
俺は挨拶にきた一人一人に丁寧に挨拶を返している。
隣を見ればモードル君達はいかにも自分が上だぞ! といった大柄な態度を取っていた。
まぁ、あれが普通なんだろうけど。
賢者は騎士を選ぶ立場。
そして選ばれた騎士を使う立場なのだから。
最後に5年生が挨拶にきた。
事前の噂で聞いていた人がいる5年生だ。
噂でもなんでもなく事実なんだけどね。
5年生にはこのオーディン王国の王女様がいらっしゃる。
名前はアーネス・オーディン。
オーディン王国の第一王女様だ。
戦具の卵も大きいと聞いている。
そして5年生最後のグループが挨拶にやってきた。
「アーネス・オーディンです。噂に名高いアルマ殿にお会い出来て光栄です。どうぞお見知りおきを」
「あ、アルマです。お褒めに預り光栄です。僕の方こそアーネス様にお会いできて光栄です」
「アルマ殿。ここは学院でございます。そして私は騎士候補生であり、アルマ殿は賢者候補生です。私に対して敬語は不要でございますよ」
「あ、いえ、でも、それは、その……」
そうなのだ。
例え王族であったとしても、賢者と騎士の関係性は変わらない。
王女様だろうと、騎士となれば賢者を主として仕えることになる。
基本的に賢者と賢者候補生は誰に対しても敬語は不要とされている。
さすがに王に対して相当な無礼な態度を取れば、何らかの罰が下されることはあるかもしれないが、それも絶対ではない。
理由は簡単だ。
その賢者が溜めた魔力と抱える騎士の価値は、王国にとって何よりも大事だからである。
ちなみに、俺は喋る時の一人称は『僕』である。
猫を被っているわけではないが、前世の記憶があるせいか頭の中で考える時の一人称は『俺』となっている。
「ぜひとも私のことは気軽にアーネスとお呼びください。今後とも交流を深めていければ幸いです」
「え、えっと……はい。今後ともよろしくお願いします……ア、アーネス……様」
「ふふふ」
ちょっと悪戯っぽい笑みを浮かべるアーネス様
噂に聞いていた通り美しい王女様だ。
綺麗な金髪ボブに青い瞳、そして美しい顔立ち。
実際には勝気な性格と聞いているけど、すごく優しそうなお姉さんに見える。
透き通るような白い肌も美しい。
さっきのモニカと同じく、めちゃめちゃスタイル良くていい身体をしている。
やっぱり胸も大きい。
モニカより1歳年上ということもあるけど、モニカより胸が大きい。
そして戦具の卵も大きい。
でも戦具の卵はモニカと同じぐらいだ。
つまり俺の魔具の卵と同じで、大人一人分の大きさだ。
噂で聞いていたからもっと大きいのかと思っていた。
いや、最初にモニカを見たからそう思ってしまったのだろうな。
モニカの噂は聞いたことなかったから。
そのモニカが俺と同じぐらいの大きさの卵だったから、アーネス様の卵はもっと大きいと勝手に想像してしまっていたのだろう。
5年生の挨拶が終わり、これで全員から挨拶を受けた。
これで解散かなと思っていたら、なぜか俺とモードル君だけ残るように言われた。
広い会場の中で俺とモードル君と先生、そしてアーネス様だけが残る。
何があるんだ?
「改めて挨拶を。オーディン王国第一王女のアーネス・オーディンです。アルマ殿とモードル殿に残って頂いたのは、もう一人、騎士候補生から挨拶を受けて頂きたいからです」
「あん? もう一人?」
モードル君がとても王族に対する態度とは思えないような口調で言った。
いや、許されるんだけどね。
許されるんだけど、だからといってそれがいいかどうかは違うんじゃないか? と思ってしまうのだけど。
「騎士学院3年生のマリアナ・オーディンです。私の妹でオーディン王国第二王女です」
あ~! 聞いたことある!
忘れてたよ。
噂で俺達と同じ3年生に王女様がいるって聞いたことあったじゃん。
そういえば挨拶の中にいなかったな。
「本来ならみなと一緒に挨拶をするのですが……本人の希望により別枠での挨拶をさせて頂きたく存じます。アルマ殿とモードル殿の貴重なお時間を頂いてしまい申し訳ありません」
「ふん! 別にいいぜ」
「だ、大丈夫ですから。顔をお上げになってください」
いきなりアーネス様が頭を下げて謝るもんだからびっくりしたよ。
まさか王女様が頭を下げるとは。
でもどうしてみんなと一緒ではなく、こうして別枠での挨拶なんだろう?
「いえ、これは妹の我儘でしかありませんから。では……」
アーネス様が視線を先生に向けると、先生はマリアナ様を呼びにいったようだ。
そして待つこと1分ほど。
会場の中にマリアナ様が入ってこられた。