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異世界で賢者になる  作者: キノッポ
第二章
39/89

第39話

「これでどうかな?」

「素晴らしいです! さすがはご主人様です!」


 何をしてもナルル達は俺を褒めてくれる。

 悪い気はしないけど、ちょっとこそばゆいな。

 でも、これだけの広さの居住空間を見せられたら、誰だって驚嘆するか。


「今のところ50人ぐらいが定員かな。食糧と水とお湯の問題は残るけど」

「何から何まで本当にありがとうございます」

「ま~これは……ご主人様? の役目でしょ」


 鍵の空間をかなり拡張した。

 時間停止空間ではなく、普通の空間の拡張である。

 目的はスヴァルト達の居住空間。

 フレイヤ王国内の各地のスヴァルトがどんどん王都に集まってきている。

 さすがにこのスヴァルト区域に匿っていても、やがてはハイエルフに察知されてしまう。

 そうなるとなぜスヴァルトが集まっているのか問われることになる。

 そんな悩みをナルルから聞いて、俺は言った。


「僕の鍵の空間の中に入ってもらうというのはどうかな?」


 もともと王都のスヴァルト区域に住んでいたスヴァルトはそのままで、各地から集まってきているスヴァルトを鍵の空間の中で受け入れることになった。

 いまのところ各地からやってきたスヴァルトは28人だ。

 これからまだ増えていく。

 ナルルもフレイヤ王国全体でスヴァルトが何人いるのか詳細な数まで分かっていない。

 でもスヴァルトが産まれてくる確率からして、何百人とはならないそうな。

 多くて100人ぐらいではないかと推測している。


 まだまだこれから鍵の空間を拡張していくから、100人ぐらいの受け入れは問題ない。

 問題は食糧と水とお湯……特に食糧だ。

 人そのものを匿っても、調達する食糧が多くなれば、どうしてそんなに大量な食糧が必要なのか疑問が残ってしまう。

 そこから各地のスヴァルトがここに集まっているのではないかという推測が成り立ってしまっては意味がない。

 時間停止空間の中に貯蓄してあるオーディン王国から持ってきた食糧も、さすがに100人のスヴァルトが食べていけるほどの量はない。


 食糧と水とお湯をなるべく怪しまれないように集めるために、俺とモニカはフレイヤ王国の王都中を駆け巡って、あちこちのお店で少しずつ調達しているのだ。

 これがかなり重労働である。

 アーネス様とマリアナ様を外に出すわけにはいかないし、ナルル達スヴァルトが動くのも怪しまれるし。

 結局、俺とモニカの二人でやるしかなかった。


 俺とモニカが食糧と水とお湯をかき集めている間、アーネス様達は迷宮で魔石と精霊力を集めている。

 あの上級迷宮にはあまりエルフ族は入ってこない。

 スヴァルト区域に近い迷宮だから。

 僕とモニカは最初、たまたまスヴァルト区域に近い迷宮に入っていたわけだ。

 おかげでティアとディアに会えたわけだけど。

 でも万が一、エルフ族が入ってきたときには、スヴァルトの闇魔法でアーネス様達を隠してもらえるから、エルフ族にアーネス様とマリアナ様が目撃される心配はない。


 ミラさんからもらった精霊石はかなり多くの精霊力を溜められるから助かっている。

 女王フレイヤ様の刻印がされていても、俺の鍵の魔具で精霊力を吸収するのは問題ないのであって、精霊力を多く溜められる精霊石はありがたい。

 女王フレイヤ様にお会いして精霊石を渡せたら、もっと精霊力を多く溜められる精霊石を渡してもらえるかもしれない。


 精霊力だけではなく、魔石も必要だ。

 スヴァルトを救うのは精霊力だけど、その後にスヴァルトの能力を上げるのは魔力だから。

 ナルル達の能力を上げるために、アーネス様とモニカにあまり魔力を与えられていない。

 しかもスヴァルトはまだまだ増えてくるのだ。

 もっと俺の基礎魔力を増やしたい。


「やりたいことがどんどん増える……どんどん欲張りになるね」

「ご主人様ならどんなことだって成し遂げられるっしょ」

「そうかな。みんなの期待に応えられるように頑張るよ」

「ご主人様はいつだってご主人様っしょ」


 よく分からないけど、モニカが俺のことを信頼していることだけは分かる。


 本当は上級迷宮の最奥部を探索して俺の基礎魔力を上げながら精霊力を上げたいところだけど……。

 鍵の空間に匿うスヴァルト達の食糧問題もあるしな。

 いろいろと動き辛くなってきている。

 どうしたものか……と思ってアーネス様に相談してみた。




「一度戻ってはどうですか?」

「戻る?」

「はい。オーディン王国に」

「え? 戻っちゃうの?」

「もちろんお忍びで戻ります。各地から集まってきたスヴァルト達を連れてオーディン王国へ戻りましょう。私から王へ事情を説明して、しばらく匿ってもらいます。フレイヤ王国との関係からスヴァルトを住まわせていることを公表するのは難しいですが、匿うのは問題ありません」

「なるほど。そういうことか」

「はい。それにお忍びで戻るなら……私の翼で一気に戻れます」

「確かに、さすがはアーネス様。良い案を教えて頂きました」

「アルマ様のお役に立てて光栄です」


 すぐにナルル達に説明して行動に移すことにした。

 ナルルが各地から集まってきたスヴァルトに事情を説明する。

 みんな俺に魔力暴走の制約を解除してもらったことで、俺に対する信頼は絶対だ。

 ナルルの言葉をみんな素直に受け入れてくれた。


 次の日の夜。

 28人のスヴァルトを鍵の空間の中に入れて、俺達はフレイヤ王国の王都を発った。

 アーネス様に抱きかかえられながら、戦乙女の翼で空高く舞い上がる。

 遥か上空からオーディン王国に向かうのであった。


「全速力でいきます。申し訳ありませんが、結界を展開して頂けますでしょうか」

「了解」


 風の抵抗で体力を奪われないように、俺とアーネス様を包み込む結界を展開する。

 アーネス様は全速力で空を飛んでいく。

 地上から見たら流れ星に見えただろうか。





 と、いうわけでオーディン王国の王都に着きました。

 その日の夜のうちに。

 王城の秘密の地下通路を使って中に入る。

 王城のとある部屋に出ると、呼び鈴を鳴らす。

 しばらくすると侍女長と騎士がやってきた。


「アーネス様! アルマ様も」

「事情があって戻ってきた。夜遅くに悪いが、父上に取り次いでくれ」

「かしこまりました。しばらくお待ちくださいませ」


 その後、夜遅いのに王に会って、もろもろの事情を説明した。

 王はすぐにスヴァルトを匿うことを承諾してくれて、王城の中にある館一つをまるごとスヴァルトのために使うことにしてくれた。


 その日は久しぶりに王城に泊まった。

 消費した食料、水、お湯の補充をして、次の日の夜にはフレイヤ王国の王都に戻る。

 王都の外れでナルルと合流すれば、闇魔法を使ってスヴァルト区域まで戻った。


「急ぎ各地のスヴァルトを集めます」


 オーディン王国が受け入れてくれると分かり、ナルル達は闇魔法を駆使して、各地のスヴァルトを急ぎ集めることにした。

 スヴァルトの魔力暴走の制約を解除しないといけないから、スヴァルト達が集まってくるまで精霊力も集める。

 新たなスヴァルトが30人集まり、全員の制約を解除したところで、またオーディン王国に戻った。

 最初と同じくその日は泊まり、次の日の夜にはフレイヤ王国の王都に戻ってくる。

 そしてまた各地のスヴァルトが集まってきて、その制約を解除していった。





「連絡の取れるスヴァルトはこれで全員となります」

「了解。なら今回はナルル達もみんな一緒に行こうか」

「ご主人様。そのことですが……私達を残してくださいませんでしょうか」

「え? 残るの?」

「はい。ご主人様のおかげで、フレイヤ王国のスヴァルトは救われました。ですが、これからもスヴァルトは産まれてきます。各地のスヴァルトを集めたことで、王都以外でスヴァルトが産まれた時に対応する者がおりません。私達はここに残り、今後産まれてくるスヴァルトを保護できる体制を維持したいと思っています。そして、その時は産まれてきたスヴァルトを救って頂ければ。またフレイヤ王国以外の精霊王国のスヴァルト達もいます。私達が声をかけて出来るだけここに集めたいと思っています。その時もぜひ御力を頂ければ」

「うん。それはもちろん」

「ありがとうございます。ティア、ディア」

「「はい」」


 双子の姉妹のティアとディアが一歩前に出た。


「ティアとディアはご主人様についていきなさい」

「はい!」

「俺様がついていってやるよ」

「二人の力をご主人様のために役立ててくださいませ」

「うん、わかった。二人ともよろしくね」


 話がまとまったところで、今回の34人のスヴァルトを鍵の空間に入れてオーディン王国に向かった。

 3回の合計で92人のスヴァルトがオーディン王国に匿われることになる。

 空を飛びながらアーネス様と話した。


「僕達が身軽に動けるようになるために、オーディン王国でスヴァルトを匿ってもらっているけど、将来的にはスヴァルト達が安心して暮らせる場所があればいいな」

「そうですね。それはスヴァルトの国を造るのと同じ意味を持つでしょう」

「国を1つか……都合良く豊かな土地は空いていないからな~」

「今すぐには難しいかと。ですが、この先どうなるか分かりません」

「ん? どういうこと?」

「アルマ様が女王フレイヤとお会いになった時、何かが起こる気がしています」

「それはなに?」

「分かりません。ですが、何か大きく動く気がするので……私の戦具がそう告げてきます」

「それは良いこと? 悪いこと?」

「どちらもですね。ですがアルマ様ならどのような試練も乗り越えて、やがて大いなる事を成し遂げることは間違いありません」


 アーネス様はさも当然といった顔で俺を見つめてくる。

 俺大丈夫かな~。

 頼りはこの鍵の魔具。

 いや、それだけじゃないか。

 確かに鍵の魔具のおかげで俺はいろいろ出来ているけど、アーネス様やマリアナ様、それにモニカと騎士達、そしてティア、ディアとスヴァルト達。

 たくさんの仲間がいる。

 案外何が起こってもどうにかなるんじゃないかな? なんて思えてきたぞ。


「僕だけじゃない。アーネス様達がいてくれるから、僕は何とかやっていけそうな気がします」

「うふふ。身も心も全てアルマ様に捧げております。全ては御心のままに」


 やがてオーディン王国の王都が見えてきた。

 3回目とあって慣れたもので、34人のスヴァルトを王城に託した。

 その日はゆっくりと休んで、次の日の夜に戻る。

 食料、水、お湯はたっぷりと補充した。


 フレイヤ王国の王都にいるスヴァルトの数に変化はない。

 その中身はだいぶ違うけど。


 さて身軽になったことで、本格的に攻略してみるか。

 この上級迷宮を。


「目標は迷宮主を倒すこと。準備はいいね?」

『はい!』


 アーネス様、マリアナ様、モニカに加えて、ナルル、ティア、ディア。

 俺を加えた7人で、上級迷宮の攻略を始めたのであった。


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