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異世界で賢者になる  作者: キノッポ
第二章
37/89

第37話

 ナルルさんを助けて30日ほどが経った。

 いまギルドに来ている。


「ようやく精霊石に精霊力を一杯に出来ましたよ」

「さすがはアルマ様。こんなに早く精霊力を溜められるとは。ハイエルフの方もお喜びになりますよ」

「ありがとうございます」

「では明日の10時にミラ様がこちらに起こしになります」

「はい。よろしくお願いします」


 俺が精霊石を取引するのはハイエルフのミラさんという人だ。

 この精霊石が刻印されている以上、誰に渡しても同じ結果なのだが、こうして直接取引に応じてくれるのは次の精霊石を渡すためだろう。

 ハイエルフの中にも派閥が存在する。

 最も大きな派閥は現女王フレイヤの派閥だ。

 そして俺の精霊石の刻印は女王フレイヤのものだった。

 明日会うハイエルフのミラさんも、女王フレイヤの派閥の属する人だ。


 ギルドを出た足で、そのままスヴァルト区域に向かう。

 建前は迷宮に向かうことになっているけど、途中でケーラさんの闇魔術でカモフラージュしてもらいながら、スヴァルト区域に向かうのだ。


「おかえりなさいませ。ご主人様」

「……ただいま、ティア」


 ティアはモニカの影響を受けて俺のことをご主人様と呼ぶようになってしまった。

 しかもアーネス様とマリアナ様がメイド服をティアに着させて、俺専属のメイドと勝手に役職を与えていた。

 ちなみになんでメイド服があるかというと……夜に使うためである。

 ただティアに合うサイズが無くて……主に胸の部分のサイズがね。


「オカエリナサイマセ。ゴシュジンサマ」

「無理しなくていいよ、ディア」


 そしてディアもメイド服を着せられている。

 こちらは、本人は不本意のようだ。

 だがみんなの圧に負けて着ているのだ。


「ご主人様おかえりなさいませ」

「ただいま……ナルル」

「はい。ご主人様」


 メイド服最後の一着を着たのはナルルさんだ。

 俺にナルルと呼ばれて嬉しそうに微笑んでいる。

本人曰く、俺専属のメイド長だそうな。

 こちらも勝手に役職に就いていた。


「ナルルさん、やっぱりやめませんか? 僕は別に……」

「あぅぅ! 私ごときではやはりアルマ様のメイド長に相応しくありませんよね。では私はこの場で命を」

「あ~いいです。メイド長でいいです。いいですから、その剣を下してください」


 この調子だ。

 最初に見たナルルさんの印象とあまりのギャップに俺もどうしたものかと。

 半分冗談だと思っているけど、半分本気にも見えるから怖いんだよね。


「ありがとうございます。全てのスヴァルトはアルマ様の忠実な下部でございます。どうか片隅でもいいので、アルマ様のお近くにいさせてください」


 ナルルさんを救ったあの日から、俺はたくさんのスヴァルトを救ってきた。

 もちろんディアも。

 まだこのフレイヤ王国にいるスヴァルトの全てを救えたわけじゃない。

 そもそもこの王都以外にもスヴァルトは住んでいる。

 いま、ナルルさんはフレイヤ王国中のスヴァルトをここに集めようとしている。

 動けないほど重体な人がいれば急ぎ連絡を出してもらい、俺がそこに急行する。

 急行するといっても、アーネス様に飛んで連れていってもらうんだけどね。

 かなり上空を飛んで行ったから、目撃されてはないと思う。

 街の近くに降りたら、あとはナルルさんの闇魔法『霧』と『影』を使って潜入するだけだ。


 スヴァルトを救うために精霊力が必要だ。

 その精霊力はスヴァルト達が集めてくる。

 最初こそ俺達が迷宮で精霊力を集めていたけど、スヴァルトを制約から解放してあげて、闇魔法等を授けてあげれば、もともと強いエルフ族である。

 彼女達自身が迷宮を探索して精霊力を集めてきてくれるのだ。

 ちなみに、精霊力を溜めるための精霊石はギルドから借りている。

 ギルドはいくつか精霊石を保管していた。

 精霊石による精霊力の吸収の差を調べたい、なんて嘘でどうにか押し通した。

 ギルドの人にはそんなことしても無意味だと散々言われたけど、どうにかこうにか押し通して精霊石を何個か手に入れたのだ。

 ギルドが持つ精霊石は刻印されていないが、溜められる精霊力はとても少ないものだった。


 スヴァルト達が精霊力を溜めた精霊石を持ってくる。

 俺が鍵の魔具でそれを吸収して、スヴァルトの魔力暴走と制約を解除する。

 そして俺の『魔力』で闇魔法や魔霊具を授けていく。

 解放されて力を手に入れたスヴァルトは、精霊力を溜めにいく。

 この循環で、どんどん精霊力は溜まっていくのである。


 ちなみに、ティア達はいまこんな感じだ。


ティア

精霊力:100

精霊術『治癒』

精霊術『結界』

精霊具『白法衣』

0/1000:精霊術『再生』

0/1000:精霊具『白雪杖』

0/1000:イズンのリンゴ

0/10000:種


ディア

魔力:5000

闇魔法『影』

闇魔法『闇玉』

闇魔法『絶』

魔霊具『闇弓』

魔霊具『闇矢』

魔霊獣『闇鷹』


ナルル

魔力:10000

闇魔法『霧』

闇魔法『影』

闇魔法『衣』

魔霊具『闇大剣』

魔霊具『闇鎧』

魔霊獣『闇馬』



 ティアの能力を上げるためには精霊力が必要だ。

 でもいま精霊力の多くはスヴァルトを救うのに必要だから、あまり能力を上げられない。


 対してディアやナルルさん達スヴァルトは、俺の『魔力』で能力を上げることができる。

 そう魔力なのだ。

 スヴァルトの力の源は魔力である。

 そのため俺の基礎魔力によって、彼女達はどんどん強くなっている。


 闇魔法が3つに魔霊具が2つ、そして魔霊獣まで得られたのはナルルさんとディアだけだった。

 多くのスヴァルトは闇魔法2つに魔霊具1つだけである。

 それでも強いけどね。


 魔霊獣。

 ナルルさんが魔霊獣の闇馬を得た時は、スヴァルトもみんな驚いていた。

 伝説の中だけに存在するものだったそうな。

 精霊獣との違いを聞いてみると面白いことが分かった。



「私の魔霊獣は私の魔力によって創られます。魔力が切れれば消えてなくなりますが、精霊獣は違います。精霊獣は本当に生きています。そして精霊獣はハイエルフだけが得るものです」

「やっぱり精霊獣は存在するんですね。でも普通のエルフは得られないのですか?」

「はい。まずハイエルフにならないと得られません」

「ハイエルフになる?」

「世界樹からの祝福で『イズンのリンゴ』を与えられることがあります」


 ティアの情報に見えているものだ。


「イズンのリンゴを食べたエルフは何百年と生きられる生命力を得て、エルフの王族と言われるハイエルフとなります」

「なるほど。ハイエルフとはイズンのリンゴを食べたエルフだったのですね」

「はい。エルフ族の寿命は人族とそう変わりません。ただ、老いが最後の最後にしかこないので、エルフ族は長命だと勘違いされています。ですがハイエルフはまさにその長命です」


 ティアに精霊力を与えていくとき、情報で見える上から順に与えられていく。

 新たに追加された精霊術『再生』と精霊具『白雪杖』はイズンのリンゴより上に表示された。

 さらに追加されるものがあるか分からないけど、これらを全て授からなければイズンのリンゴを得ることはできないというわけだ。

 普通のエルフはそれを、世界樹に精霊力を捧げることで得られる精霊力で成そうとする。

 ただそれは現実には難しい。

 世界樹に精霊力を捧げた時、捧げた精霊力の10分の1ほどだけが捧げたエルフに与えられるそうだ。

 俺は逆に10倍にしてティアに与えられるけどね。

 いま存在するハイエルフ達がどのようにして膨大な精霊力を集めて世界樹に捧げたのか。

 おそらく自分の部下となるエルフに精霊力を集めさせて、自分はハイエルフとなっていったのだろう。


 この話をした中で『神獣』に関しても聞いてみた。

 でもナルルさんも神獣に関して何も知らなかった。

 神話やおとぎ話に出てくる存在という認識だ。


「ハイエルフなら何か知っているかもしれません」


 結局、神獣に関しては当初の予定通り、ハイエルフと接触して何かしらの情報があることを期待しよう。



「明日、ハイエルフのミラさんに会うことになったよ」

「女王フレイヤの側近の一人ですね」

「神獣に関して何か聞けるといいな」

「ご主人様なら大丈夫かと思いますが……女王フレイヤにだけはお気をつけください。あらゆる者を虜にすると言われていますが、おそらくそれは何らの能力でしょう」

「精霊術に魅了とかあるのかもね」

「まさにそうです」


 まぁ会うのはフレイヤ女王ではなくミラさんだから、大丈夫だろう。

 でも気を引き締めていこう。

 相手はハイエルフなのだから。


「ゴシュジンサマ、オチャヲオモチシマシタ」

「ディア無理しないでいいって」

「ディア、いつになったらメイド服に慣れるのですか」

「この服の問題じゃねぇ!」

「あら、では何が問題なの?」

「なんでこいつが俺のごしゅ、ぐほっ!」


 うわ~。

 目にも止まらない速さで、ナルルさんの拳がディアのみぞおちに入ったぞ。

 あれは痛い。


「ディア。私達の命を救って頂いたご主人様に向かってなんて口をっ!」

「ぐっ、ぐぬ~!」


 スヴァルトの中でディアだけ、いまだに俺に反抗的な態度を見せている。

 まぁ、それも強がりだって知っているんだけどね。

 だから別にいいんだけど。


「ナルル、いいよ。ディアもちゃんと分かっているから」

「ああ、ご主人様。なんと器の大きい……ディア感謝しなさい」

「くそっ。いつか絶対……ぐほっ!」


 やれやれ。


「いつかなんて言わず、今からやろうか?」

「まぁ、ご主人様ったら。逞しいお言葉」

「な、な、な、なんだとっ!」


 おお、狼狽えてる、狼狽えている。

 面白いな。


「ほら、昨日の夜みたいに。今から勝負してもいいってことだよ」

「ふ、ふ、ふざけるなっ!」

「ああ、羨ましい。ご主人様。ディアは情けなくもご主人様のお誘いを受ける気がないようなので、ここは私が」

「あ~! 私が! ティアが!」

「あらあら。ではこの前のみたいに二人でご主人様に」

「はい!」

「待て! 待て! だ、だめだぞっ! くそ~! なんでこんなことにっ!」

「そんなこと言いながら、昨日は結構可愛いこと言ってたじゃんディアも」

「う、うるさいっ!」

「えっと、確か『ディアはご主人様の』」

「やめろっ! それ以上言ったらころ、ぐほっ!」


 今度はナルルさんとティアの二人からお腹を殴られている。

 可哀想に。


「ご主人様。よろしければ、あちらでぜひマッサージをさせてくださいませ」

「ティアも精一杯心を込めてマッサージさせて頂きます」


 もともと短いスカートのメイド服のスカートをさらに捲るようにして、はにかむ二人。

 そんな二人を涙目でみるディア。

 とりあえず、スヴァルトに平和な時間が流れているのは間違いない。

 まだまだ救わなくちゃいけないスヴァルトはいるけど。


「うん。それじゃ、ぜひマッサージしてもらおうかな」

「はい。アーネス様達との夜の営みの前に、ご主人様の体をたっぷりと癒させて頂きます」


 そんなことをいうナルルさんの目は、うっとりとしながらも妖艶な魅力に満ちた目をしていた。

 ティアを見れば、こちらもまだ幼い顔のはずなのに、女を感じさせるフェロモンが漂っているようだ。

 そしてディアを見れば。


「ぐぬぬぬぬ~~~!!!!!」


 地団駄を踏んでいるのであった。



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