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異世界で賢者になる  作者: キノッポ
第一章
28/89

第28話

 王家の迷宮を1ヶ月かけて探索した。

 最奥部に行くのに10日。

 そこで狩りをするのに10日。

 戻ってくるのに10日。

 合計30日だ。


 通常ならこれだけの大規模な探索にかかる費用はとんでもないことになる。

 でも今回の探索にかかった費用といえば……温かい食事と冷たい水と大量の暖かいお湯ぐらいだ。

 他に特に何ら費用はかかっていない。

 しかも動いた人数は俺を含めて6人。


 上級迷宮最奥部での狩りは、危険に備えて騎士は覚醒可能な状態であることが望ましい。

 今回もセニアさんクリスさんは覚醒可能な状態だった。

 アーネス様とモニカもだけど。

 でも実際には危険らしい危険はほとんどなく、覚醒を使用することなく無事に探索を終えている。

 一度、モニカが傷を負った時に俺が治癒したぐらいかな。


 魔石の取り分は俺達が半分。

 残りの半分をセニアさんとクリスさんで分ける。

 セニアさん達にとっても信じられないような配分比率で、さらに獲得した魔石の量もとんでもないことになっていた。


「毎月お願いしたいぐらいです」

「私も同じく」

「いずれは……そうなれるように頑張ります」

「1日も早くアルマ殿が大賢者として認められる日を願っております」

「ありがとうございます」


 アーネス様が王家から借りた8等級の魔石500個は、今回の探索で全て返すことができた。

 8等級500個に、7等級を100個つけて返済した。

 7等級は利息ということで。


 基礎魔力は300を超えて、いまは380ぐらいです。

 上級迷宮凄すぎ。

 中級迷宮のゾンビ迷宮とはわけが違うね。

 全ての魔物が等級魔石を落としてくれる。

 最低でも10等級。

 9等級も当たり前。

 最奥部にいけば8等級、7等級も落ちてくる。

 7等級はあのロードゾンビナイトの魔石と同じ等級です。

 つまり単体の強さは中級迷宮の迷宮主と同じぐらいの強さの魔物がうろうろしていました。

 しかも迷宮主でもないのに群れを組んで統率取れた動きしてくるから危険極まりない。

 今回は本当にセニアさん達に助けてもらった。

 アーネス様も貴重な経験になったと喜んでいた。


 今回は6等級の魔石まで落ちた。

 5等級以上は上級迷宮の迷宮主を倒すか、最上級迷宮に行かないと取れない。

 あとはフェンリル級の魔獣を倒すとかね。


 10日ほど休んだら、今度は俺達だけで王家の迷宮を探索する予定だ。

 俺はちょっと心配だけど、あることが成すので大丈夫だろうとも思っている。

 そのための10日の休みでもあるわけで。

 それは……そう進化です。




 数日後。


アーネス様

59990/120:修復

59990/6000:覚醒『戦乙女』

59990/60000:進化『戦乙女』


マリアナ様

9990/10000:戦具

500/10000:神獣


モニカ

49990/100:修復

49990/5000:覚醒『金剛』

49990/50000:進化『金剛』


 準備が整いました。

 アーネス様もモニカも今朝から進化が待ちきれない様子。

 ちょっと可哀そうなのがマリアナ様だ。

 王家の迷宮でゴースト系の霊物を倒して精霊力を手に入れたから、少しだけ神獣の数値も上がっているんだけどね。

 そもそも戦具を手に入れられないことから、かなりストレスが溜まっているようだ。

 アーネス様もモニカもそれは分かっていて、俺との順番を譲ったりして宥めている。

 孵化させると決まったら、マリアナ様の戦具を進化させるまで優先的に魔力を与えることにもなっているんだけどね。


 今回も王家のバックアップで温かい美味しい食事の数々を時間停止空間に入れておいた。

 冷たくて美味しい水と、温かいお湯も忘れずに。

 さぁ準備万端。

 いきますか。




「では進化させます」

「はい!」

「やったっしょ!」

「うう、やっぱり羨ましい」

「ではまずアーネス様から」


 最後の魔力1を流して10倍に増幅された魔力10が戦具に流れる。

 これで魔力6万が溜まり進化可能なはずだ。

 ただどうやって進化するかは、俺は分からない。

 アーネス様が感じられるはずなんだけど。


「どうですか?」

「戦具に多くの魔力が溜まっているのは分かりますが……これを一気に開放するような感じか? 覚醒とは違うといっても、私は覚醒したことがないので」

「それならモニカが最初にやるっしょ」

「む? ……残念だがそれがいいですね。アルマ様から頂いた大切な魔力を無駄にすることがあってはならないので。ここはモニカに譲ります」

「それじゃモニカに」


 モニカの戦具にも魔力1を流す。

 10倍に増幅されて、これで魔力5万が溜まった。


「どう? 何か分かる?」

「分かるっしょ! 覚醒よりもすっごいのができるのが分かるっしょ!」

「やってみるっしょ」

「了解っしょ!」


 モニカ風の口調で言ってみた。

 モニカは戦具の斧を両手で握りしめて意識を集中させていく。

 一瞬で成る覚醒とは違う。

 戦具の中で圧倒的な魔力の流れが外に溢れんばかりに蠢いているのが分かる。


「うぉぉぉぉ!!!! 金剛!!!」


 気合一発と共にモニカの戦具が輝く。

 ロードゾンビナイトの時に見た金色の斧へと変わっていく。

 そしてあの金色の鎧を纏っていた。


「はぁはぁ……終わりっしょ」

「覚醒の時と同じだね。魔力が消えていく感じはある?」

「……無いっしょ。あの時は魔力が消えて覚醒が切れる感覚があったっしょ。でも今は無いっしょ」

「やっぱり進化は常時覚醒状態になれるものだね」

「大発見ですね。これで歴史は大きく変わります」


 今後、賢者は騎士を進化させることが目標となるだろう。

 そして常時覚醒状態の騎士が当たり前の時代がやってくる。

 歴史の転換点と言ってもいいのではないだろうか。


「アーネスっち。気合っしょ。気合でご主人様の魔力を開放するっしょ」

「くすくす。気合か。なるほど。ではやってみましょう」


 アーネス様が白銀の剣を両手で握りしめる。

 モニカと同じく意識を集中させていくと、白銀の剣が光り輝き始めた。

 同じだ。

 溢れんばかりの魔力が蠢いている。

 そしていまアーネス様は真名を感じているはずだ。

 俺は見えていたけど。


「おおおおお! 戦乙女!!!!」


 戦乙女ヴァルキリー

 それがアーネス様の戦具の真名だ。

 白銀の剣はさらに輝き増して美しくなっている。

 そして……アーネス様は蒼い鎧を纏っていて、さらにはその背中から白い翼が生えていた。

 完全に天使様ですやん。


「はぁはぁ……これが私の進化した……覚醒状態の戦具……」


 三人の中でアーネス様の強さは頭一つも二つも飛び抜けている。

 これで常時覚醒状態となれば、とんでもない強さだろう。

 そしてアーネス様が進化した意味は大きい。

 オーディン王国の歴史上、おそらくアーネス様とモニカが初めて進化した戦士だ。

 王族であるアーネス様が常時覚醒状態なら、王家にとってこれほどプラスなことはない。

 大賢者達に対する大きな牽制となるだろう。


「むぅ~」


 マリアナ様がむくれている。

 これは今日もマリアナ様を慰めるために、大いに頑張らないといけないようだ。


「では進化した戦具の試し斬りといきますか」

「はっ!」

「了解っしょ!」

「私だって負けませんわ!」





 王家の迷宮探索3日目。

 最奥部に到着です。

 いや、マジで凄すぎるんですけど。

 覚醒状態の戦具の能力がいかに高いか、思い知った3日間だった。

 金色の鎧を着たモニカは攻撃を受けてもまったくノーダメージだし。

 アーネス様は白い翼の使い方に慣れて空飛んじゃうし。

 マリアナ様も負けじと張り切ってミスリルの鞭をばしばし振るし。

 目の前に現れた強力な魔物を一瞬で叩いて斬って倒してしまった。

 そして進化した戦具には新たな情報が見れた。



アーネス様

1000/1200:修復

1000/120000:付与『聖属性』

1000/600000:解放『ブリュンヒルド』


モニカ

1000/1000:修復

1000/100000:付与『雷属性』

1000/500000:解放『トール』



 性能維持のための修復に必要な魔力が10倍に上がっている。

 さらに『付与』と『解放』という新たな情報が見えた。

 付与は聖属性や雷属性という情報から、属性付与で間違いない。

 アーネス様は聖属性……天使にぴったりだな。

 モニカは雷属性……確かにあの金色は雷の色ともいえる。


 解放が何なのか分からない。

 ブリュンヒルドにトール。

 何を意味するのか。

 進化の上位版と捉えていいのかな?


 付与も解放も進化のように常時その状態を維持できるならいいんだけど。

 覚醒みたいに消費型だと嫌だな。

 試してみないと分からないが、試すための必要魔力が多すぎる。

 気長にやっていくしかないけど、俺の基礎魔力が増えていけば案外近いうちに届くかもしれない。


 王家の迷宮最奥部を探索しながら狩りを20日ほど続けた。

 ここで探索を終えて帰還することにする。

 帰還する理由は食糧の問題だ。

 ぶっちゃけ、食料さえあればいくらでも狩りを続けることが出来ると思う。

 時間停止空間も増やしていっている。

 連続で探索できる日数は今後どんどん増えていくだろう。


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