第27話
王家の迷宮。
オーディン王国王都にある上級迷宮の一つで王家が管理している。
迷宮の構造は巨大な城だ。
そして最上級迷宮に繋がる迷宮でもある。
最上級迷宮の中には上級迷宮の最奥部にいる迷宮主を倒すと、最上級迷宮に繋がる黒い渦が発生して行くことができるタイプのものがある。
王家の迷宮がこれだ。
行くために上級迷宮の迷宮主を倒さなくてはいけないということからして、難易度が高いんだけどね。
アーネス様が俺の戦士となって、すでに10日ほどが経過していた。
王家から借りた8等級魔石で飛躍的に増えた俺の基礎魔力によって、いろいろ準備していました。
まぁ、準備していたといえば何か仕事しているような感じだけど、実際は起きて魔力使って朝飯食って寝ようとしたらモニカといちゃいちゃして、起きたら魔力使って昼飯食って寝ようとしたらマリアナ様といちゃいちゃして、起きたら魔力使って夕飯食べて寝ようとしたらアーネス様といちゃいちゃして、起きたらその日の順番の誰かといちゃいちゃいちゃいちゃしていたら、たまに誰かが乱入してきていちゃいちゃして寝て。
すげ~ぐーたら生活にしか思えない。
前にもこんなことを思っていた気がするが、一応これでも俺がやるべきことを頑張っているわけで。
頑張った結果がこんな感じです。
アーネス様
10000/120:修復
10000/6000:覚醒『戦乙女』
10000/60000:進化『戦乙女』
マリアナ様
9990/10000:戦具
90/10000:神獣
モニカ
11000/100:修復
11000/5000:覚醒『金剛』
11000/50000:進化『金剛』
1日に使える基礎魔力はぐーたら生活でだいたい350ぐらい。
いちゃいちゃしないでちゃんと寝ればもっと使えるんだろうけど……。
10倍として1日に3千5百。
10日あれば3万5千となる。
マリアナ様にはこれ以上の魔力は与えられない。
戦具として孵化しちゃって神獣が無くなってしまう可能性があるから。
ものすごーくマリアナ様は戦具を欲しがっているんだけどね。
でもアーネス様はフレイ王国の狙いがマリアナ様で、さらにはこの神獣を狙っているのではないかと考えている。
フレイ王国の狙い、さらにはエルフ族の秘密を知るためにもマリアナ様には我慢してもらう。
代わりにミスリルを混ぜたお高い鞭の武器を買っておいたので、しばらくはこれで我慢してもらおう。
マリアナ様の鞭使いがすごくて、最初見た時に『女王様!』と心の中で叫んでしまったのは内緒だ。
鍵の空間も拡張した。
リビングルームの他に倉庫部屋を造った。
また各個人の部屋も造った。
俺の部屋を鍵付きにしたら、なぜか反対されて外すことになった。
だって乱入してくるじゃん!
客間という名の部屋も造った。
これはアーネス様達以外の戦士や騎士と一緒に探索することを想定してだ。
実際そうなる予定です。
各部屋にはトイレ。
そしてお風呂場は2つ。
一応男湯と女湯で分けたのだが、その日の順番の人とたいていは一緒にお風呂に入っている。
お湯や食料と水を溜める時間停止空間もかなり拡張できた。
10日の間に様々な準備を整えた俺達は、明日から王家の迷宮を探索する予定だ。
王家の迷宮という名前の迷宮だけど、別に王家だけが探索できるわけではない。
管理が王家というだけ。
ただ探索するのはもっぱら王家や王家支持派の騎士達が多いそうだ。
今回の探索にも、王家支持派の騎士が一緒です。
一人はフィリップ様の騎士セニアさん。
40歳のベテラン騎士だ。
ちなみにフィリップ様は45歳です。
もう一人は王家支持派筆頭賢者イーゴル様の騎士クリスさん。
30歳でイーゴル様の妻でもある。
イーゴル様は魔力増幅効果4倍の魔具を持っているそうだ。
二人のベテラン騎士に三人の戦士と一人の魔術師。
上級迷宮を探索するには明らかに人数不足な構成だ。
普通ならね。
でも俺の拠点があれば、むしろこのぐらいがちょうどいい。
セニアさんもクリスさんも、俺の鍵の空間を見てものすごくびっくりしていた。
そして中にマリアナ様がいるのを見て、さらにびっくりしていた。
アーネス様は王にマリアナ様がここにいることを話さなかったそうだけど、話の流れからして俺と一緒にいるとすぐに推測されていることだろう。
一応セニアさんとクリスさんには、マリアナ様の件は内密にとお願いした。
公表できる日はそう遠くないはずだから。
王家のバックアップを受けて、美味しそうな食事の数々を時間停止空間に納め、大量の冷たくて美味しい水と、温かいお湯も時間停止空間に納め、その他もろもろ必要な物資は倉庫部屋に入れて、準備万端。
さて、行きますか!!
「魔物の構成をおさらいしておきましょう。人型の魔物が多いです。ゴブリンやオーク、それにオーガといった多種多様な人型の魔物が群れを形成しております。どの群れにもリーダーとなる存在がおり統率を取ってきます」
セニアさんが最後の確認をしている。
俺は後ろで待機です。
自分の身の安全を第一に行動するのが、みんなのためなので。
セニアさんが前に出ているときは、クリスさんが俺の護衛。
逆にクリスさんが前に出ているときは、セニアさんが俺の護衛だ。
モニカが俺の護衛をしたかったそうだが、アーネスに説得されていた。
セニアさんとクリスさんの実力はモニカよりも上だからと。
こうして王家の迷宮の探索は始まった。
セニアさんとクリスさんは本当に強かった。
迷宮探索の現場での経験値はアーネス様も話にならないぐらい、お二人の方が上だ。
単なる戦闘力ならアーネス様の方が上だろうけど、迷宮を探索するために必要な技能はそれだけではない。
迷宮の構造の把握や、魔物の特徴から弱点まで。
どのルートを進み、どこで休むとか。
様々な知識と技能が問われるのだ。
ただそんな中でも今回の探索はお二人にとっても初めてのことがある。
俺の鍵の空間の拠点です。
「これはもう反則ですね」
「まったくです。アーネス様達が羨ましい。叶うなら、毎回ご一緒させて頂きたいですわ」
「お二人ならいつでも歓迎です。アルマ様さえよければ」
「僕も構いませんよ。お二人が一緒なら心強いです」
さすがのベテラン騎士二人も、迷宮の中でこれだけ安全に快適に休める拠点があるという恩恵の凄まじさを感じている。
安全に休める、ということがどれほどありがたいことか。
数々の迷宮を探索してきた二人だからこそ、身に染みて思うことがあるのだろう。
それに比べて……。
「ふぃ~お風呂最高っしょ!」
「やっぱり迷宮探索にはお風呂ですよね~」
マリアナ様とモニカは俺の鍵の空間に慣れ過ぎている。
こんなんじゃ俺無しでは迷宮の探索が出来なくなってしまうのでは?
特にモニカだな。
まぁ、それはそれでいいけど。
俺も頑張って働けばいいわけで。
王家の迷宮探索中に、セニアさんとクリスさんからみんなは指導を受けた。
迷宮探索のイロハを教えてもらえて、三人とも真剣に集中している。
俺への指導は……特にない。
そもそも賢者や魔術師が上級迷宮を一緒に探索するなんてない。
とにかく自分の身を安全に考えて、いざとなったら自分一人でも鍵の空間に逃げるように言われた。
モニカとゾンビ迷宮を探索していた時のように、支援魔法などで支援することもしない方がいいだろうと言われた。
理由の一つに魔法を使う際の魔力増幅効果がないこと。
そのため大きな効果を得ようとすれば、魔力を多く消費することになる。
魔力は自分の身の安全のために取っておくべきというわけだ。
またアーネス様達には俺が魔力を消費しなくてもいいようにしっかり戦うように言っていた。
そんなこんなで王家の迷宮探索はセニアさん達も驚くほどに順調にいった。
一番の要因はやっぱり鍵の空間の拠点だ。
安全に休めることで、身体の調子が整っていつでも最高の状態で戦えているのが大きい。
あまりに順調のため、今まで王家の迷宮であまり探索されていない範囲を少し探索したいと申し出があったため、了解した。
そこは今までよりもさらに慎重に動いての探索だ。
これまではセニアさん達が経験したことのある範囲の探索だったのだが、未開拓の地に足を踏み入れたわけだから。
それでも拠点を使っての休みながらの探索で、問題なく進むことができた。
こうして予定の10日ほどで、俺達は王家の迷宮の最奥部に辿り着いたのだが、この間にも俺は加速的に成長していたのであった。
「基礎魔力は200を超えました」
「さすがはアルマ様」
「アルマ様素敵です!」
「ご主人様最高っしょ!」
「基礎魔力200……前代未聞ですね」
「自然回復するのですからね。アルマ殿の言う通り、瞬発力では我が主の方が上かもしれませんが、持続力の観点から見たらアルマ殿の圧勝ですね」
上級迷宮を探索している間も、獲得した魔石の4分の1は俺が吸収している。
残りの4分の1は王家に返すもの。
残りの半分はセニアさん達の分だ。
今回セニアさん達に同行してもらうにあたり、魔石の半分を渡すという約束になっていた。
指導料込みで考えたら安いぐらいだろう。
基礎魔力が増えていけば、1日に出来ることもどんどん増えていく。
こうなったらとことん基礎魔力を増やしていくぞ!




