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異世界で賢者になる  作者: キノッポ
第一章
25/89

第25話

「お姉様……」

「マリアナ……」


 感動の姉妹の再会だ。


「マリアナ……男心を分かっているじゃないか! その短いスカートにスリット! さすがは私の妹だ!」

「お姉様! お姉様の教え通りにアルマ様を誘惑して、わたし女になりました!」


 なんちゅ~再会じゃ。


「もっとこう……感動的な再会でも良かったのでは?」

「む? 私とマリアナはいつもこんな感じです」

「はい。お姉様とはいつもアルマ様をどうやって誘惑しようかと話していました」


 何を話しているんだ。


「それにしてもここは……」

「僕の鍵の魔具の能力です。そこのドアを閉めれば外の世界と完全に隔離されます」

「ほ~……素晴らしい」


 アーネス様は騎士だ。

 モニカと同じですぐに迷宮探索における有用性を考えているのだろう。


「この拠点を使って僕はモニカと中級迷宮のゾンビ迷宮を探索していました」

「なるほど。こういうからくりだったわけですね」

「それで先日、ゾンビ迷宮に行ったらそこに……」

「アルマ様をお待ちしていました」

「なるほど」

「ただいまっしょ」

「あ、モニカ」

「アーネスっちが来たから留守番交代してもらったっしょ」


 交代してもらうなよ。

 鍵の空間のドアを開けっぱなしだったので、部屋に戻ってきたモニカも鍵の空間の中に入ってきた。

 久しぶりに四人が揃った。


「どこまで話したっしょ?」

「まだ拠点に入ったばかりだよ」

「アーネスっちこっち見てよ。トイレとお風呂あるっしょ」

「なっ!! な、なんという贅沢! モニカお前……こんな贅沢な拠点付きで迷宮を探索しているのか!」

「羨ましいっしょ? 羨ましいっしょ?」

「羨ましい!!!」

「お姉様。アルマ様のこの拠点は本当に素晴らしいんです。なんと! お食事も出てきますの!」

「食事が出てくる?」

「あ~それはですね。時間停止空間というのがありまして……」


 しばらく鍵の空間の能力についてアーネス様に説明した。

 聞けば聞くほどアーネス様は興奮されて、そしてモニカとマリアナを羨ましがった。


「ずるい! ずるいぞ! お前達!」

「ご主人様のおかげっしょ」

「アルマ様のお力ですわ」

「アルマ殿! いますぐ賢者に戻ってこの力を王家のために!」

「アーネス様のためならやぶさかではないのですが……いろいろありまして。それに魔力増幅効果は1倍ですし」

「あれ? 話すっしょ?」

「ん?」


 モニカめ。

 まぁいいけど。


「えっとですね。実は鍵の魔具には他にも特殊な能力がありまして……」


 アーネス様は目を輝かせながら、俺の話を聞くのであった。




「これは歴史的なことです。アルマ殿はやはり歴史に名を残す大賢者様になられる御方だった」

「いやいや。証明はできないですからね」

「モニカの戦具が何よりの証明です。しかも覚醒したのでしょう?」

「はいお姉様。この目でしかと見ました」

「アルマ殿の鍵の魔具がただの1倍の魔力増幅効果の魔具なら、こんなことあり得ません」

「まぁそうなんですが。でも本当に第三者に対して証明はできないんです」

「そんなこと問題にならないほどの能力だと思いますが」

「そうですか?」

「はい。ああ……このことをもっと早く知りたかった。そうすれば……」


 アーネス様はがっくり肩を落として残念がっている。

 確かモードル君の騎士になっちゃったんだよね。


「アーネスっちはモードルから魔力もらったっしょ?」

「ああ。魔力を戦具の卵に与えてもらった。しかも……」


 何と王家の貴重な貯蓄魔石を使ったのに孵化できなかったとか。

 アーネス様はモードル君が魔石魔力をちょろまかしているか、魔具の魔力増幅効果が本当は6倍ないのではないかと疑っているようだ。

 モードル君の魔力が登録されてしまっているけど、アーネス様の戦具の卵の孵化までの必要魔力は見れるのかな?


「アーネス様、ちょっと戦具の卵を出してもらっていいですか?」

「もちろん」


 アーネス様の戦具の卵。

 モニカの戦具の卵とほぼ同じぐらいで、少しだけアーネス様の方が大きいかな。

 鍵を挿し込んでみる。

 お、入った。

 鍵を開ける感触も伝わってくる。

 魔力を流して鍵を開けた。



孵化:882/1200 ※モードル・カーラル

解除:0/12000



 見えたね。

 戦具の卵の孵化に必要な魔力は1200か。

 モードル君が882の魔力を与えている。

 6倍だから元の魔力は147か。

 モードル君は魔力操作が下手だったから、ちゃんと魔石から魔力を吸収できなかったんだろうな。

 一応ちょろまかしているわけではないようだ。


「見えました」

「おお。私の戦具の卵はあとどれくらいで孵化なのです?」

「882/1200ですね。一応モードル君はちゃんと魔力を与えていたみたいです」

「予想以上に私の戦具の卵の孵化のために必要な魔力が多かったというわけですか。ですがこれは貴重な情報です。あと残り318の魔力で孵化すると分かれば、それに合わせて王家の魔石を」

「もう1つ見えているものがあります」

「え!?」

「え!?」

「アーネス様の戦具の卵に登録されたモードル君の魔力を解除するために必要な魔力です」

「解除のための……いくつですか?」

「12000です。おそらく孵化の10倍の魔力を必要とするのでしょう」


 魔力を1でも登録したら、孵化のために必要な魔力の10倍を必要とするのが解除か。

 なるほど、解除のために莫大な魔力が必要と言われるわけだ。


「12000ですか……」


 アーネス様が真剣な表情で俺を見つめてくる。


「アルマ殿……どうか私を今からアルマ殿の騎士にして頂けないだろうか! 解除のためにアルマ殿に余計な負担をかけることになりますが、必ず役に立ってみせます!」

「お姉様!」

「さすがはアーネスっちっしょ!」


 この流れで断る男がいるだろうか。

 いるはずない。

 俺も断るつもりなんてない。

 そもそも俺の能力を話した時点でアーネス様なら俺の能力を信じてくれるだろうし、アーネス様の戦具の卵を孵化させるのは俺だと決めていた。


「僕はいま賢者ではないので、最初は戦士になっちゃいますけどいいですか?」

「もちろんです! ですがアルマ殿はすぐに賢者になれます! 私が保証します!」

「ああ、それなんですけど……実はですね……ちょっと待って欲しいんです」

「「「え?」」」


 まだ賢者には戻らない。

 身軽な魔術師がいいんだよね。

 フレイヤ王国に行くためにも。


「実はフレイヤ王国に行こうかと考えていたんです」

「フレイヤ王国に? どうしてですか?」

「マリアナ様、あの件を話していいですか?」

「っ! は、はい……お姉様なら構わないです」

「あの件?」

「実はマリアナ様の戦具の卵の中には戦具以外にもう1つ何かがあります」

「戦具以外に……」

「はい。私の戦具の卵の中は鞭だと感じていました。でもそれ以外に実は何かあるんじゃないかとずっと感じていたんです。でもお姉様にもお父様にも言えなくて」

「そうだったのか……それでそのもう1つの何かとは何なのか分かるのか?」

「いえ、それは分からなくて」

「僕には見えています」

「「「え!?」」」

「最初から見えていたのですが、黙っていました。どうお伝えしたものか、また情報も不足していたので。まずマリアナ様の戦具の卵の中にいるのは『神獣』です」

「「「ええっ!!??」」」


 神獣に関して俺が分かっていることを伝えた。




「それでフレイヤ王国にいって、精霊獣と精霊力に関して調べてみようかと」

「なるほど。確かに関連性は高そうですね」

「マリアナちゃんすごいっしょ!」

「あわわ……私の卵の中に神獣様が……」

「一番の問題は戦具として孵化させたら神獣はどうなるのか? 神獣として孵化させたら戦具はどうなるのか? ですね、最良はどちらも孵化させることが出来るなんですが」

「出来れば両方とも手に入れたいな」


 4人で今後のことをあれこれと話し合うのは、学院の頃に4人で将来の夢を語り合っていたことを思い出せて嬉しかった。

 俺の能力のことはしばらく伏せることにした。

 ただアーネス様は父上である国王には報告させて欲しいそうなので、それは了解した。

 まずはアーネス様の戦具の卵に登録されたモードル君の魔力を解除する。

 その後にアーネス様の戦具の卵を孵化させる。

 これを最優先とした。

 マリアナ様の戦具の卵は、神獣の情報を集めた後だからね。

 ただ戦具の方の魔力は溜めていって、残り魔力1で孵化するところまで持っていこうと思う。


「進化……実は王家にだけ伝わる伝承の中で戦具は進化するとあります」


 進化についても話した。

 アーネス様とマリアナ様は王家に伝わる伝承とやらで、進化の存在を知っていた。

 ただ本当に存在するとは思っていなかったようだ。


 モニカの戦具を進化させる。

 これも目標の一つだ。

 ゾンビ迷宮の迷宮主相手に覚醒を使ってしまったので、ちょっと遠のいたけど。


 マリアナ様だけではなくアーネス様も今後合流する予定なので、鍵の空間も拡張したい。

 今の空間は俺とモニカ二人の拠点として想定していたから、四人となれば狭い。

 トイレも増やした方がいいだろう。

 お風呂のお湯も足りないな。

 寝室も……。


「寝室は一つでいいのでは?」

「当然っしょ」

「そうですわ」

「むぐっ」


 アーネス様がさも当たり前と言わんばかりに言ってきた。

 さっきマリアナ様が女にしてもらったとか言っていたから、俺がマリアナ様とモニカとそういう関係だと分かっているんだろうけど。


「私だけ仲間外れなんてことはないですよね?」

「え~……ありません。むしろ大歓迎です」

「うふふ、良かった。これでも女としての魅力にもそれなりに自信がありましたので」

「お姉様は男性へのご奉仕の精神についても学んでいらっしゃいましたもんね!」

「うむ、当然だ」

「さすがっしょ」


 この人達は……騎士学院でいったい何を学んでいたんだ?


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