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異世界で賢者になる  作者: キノッポ
第一章
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第22話

 俺、この戦いが終わって帰ったら……もっと大きなベッドを買うんだ。


 ゾンビ迷宮探索の1日目の終わり。

 鍵の空間に入り休んだ俺に待っていたのは、マリアナ様からの熱烈なご奉仕だった。

 風呂に先に入れられた俺は、そのまま寝室に向かわされ、同じく風呂に入って身体を綺麗にしてきたマリアナ様から情熱的なご奉仕を受けて襲われてしまった。

 どうして最初は必ず襲われているんだろうか?

 まぁ、いいか。

 その後は襲い返して、たっぷり可愛がったからね。


 リビングで待っていたモニカも、俺達の2回戦が終わったところで参戦してきた。

 大変なのは俺だ。

 魅力的な女性二人に囲まれてご奉仕されるなんて、文字にしたらこれほど贅沢なことはないけど、実際にされるといろいろ大変なのである。

 男としてやられてばかりいられないからね。


 そんなこんなで無事に? マリアナ様とモニカ二人をご奉仕付きの専属戦士とした俺は、魔力を高めるべく今日もゾンビ迷宮探索を頑張るのでした。


 マリアナ様が囮になることで、迷宮探索の進行速度は上がっている。

 荷物も何も持たず、たった三人で迷宮内を駆け抜けていくんだから、そりゃ~早い。

 そして予定通り、3日目の終わりに迷宮の最奥部に到達した。

 ここで強力な魔物を狩りまくって等級魔石を集めまくる……予定だったのが、いまちょっと問題が発生しております。

 なんと迷宮主がどん! と居座っていたのだ。


「迷宮主って最奥部の中のさらに一番奥にいるんじゃないの?」

「そうとは限らないっしょ。迷宮主もうろうろしているから、こういうこともあるっしょ」

「なるほど……強そうですわ!」


 ロードゾンビナイト。

 情報通り巨大な両手剣と鎧を纏った人型のゾンビ系魔物だ。

 身体も大きくて2メートルは確実に超えている。

 ただ取り巻きは聞いていた情報より少ない。

 5~6匹いると聞いていたけど、いま引き連れているのは4匹だ。

 取り巻きが持っている武器は剣が2匹、斧が1匹、弓が1匹。


「やるっしょ?」

「いやいや待って。危険だよ」

「私が囮になりますわ」

「だめです。これはだめです」

「いざとなったら覚醒するっしょ」

「割に合わない。ここは引くよ」

「了解っしょ」

「はいです」


 最奥部で狩りが出来ないのは残念だけど、ここは引いて距離を取った。

 明日にはいなくなっているかもしれないしね。


 迷宮主ロードゾンビナイトを避けて狩りをしていると、思わぬ魔物に遭遇した。

 ゴーストだ。

 フレイヤ王国のエルミアさん達からもらった精霊石。

 これがついに役立つ時がきたのだ。


「モニカ」

「がってん承知っしょ!」


 どこで覚えたその言葉?

 ゴーストに一直線に向かっていったモニカは、戦具の斧一振りでゴーストを倒した。

 魔石を落とさない迷惑な魔物ゴーストは、倒されると霧のように消えていくだけ。

 俺は精霊石を持って近づいてみた。


「おお」

「何か吸い込まれましたわ」


 霧となって消えるだけのはずが、精霊石の中に確かに何かが吸い込まれていった。

 これが精霊力か。

 これを溜めてエルミアさん達に売ればいいわけだ。

 売る時はフレイヤ王国のエルフ族に売らないとね。


「滅多に遭遇できないけど、ゴースト1匹でどれだけ精霊力が溜まるものなのか」

「戻ったら見てもらうといいっしょ」

「そうだね。目安として知っておきたいね」

「あっ! アルマ様! あっちにも!」

「おっ! ゴーストだ!」

「がってん承知っしょ!」


 だからその言葉はどこで覚えたんだ?

 モニカはひとっ飛びでゴーストに近づくと、戦具の斧で叩き倒す。

 早いって。

 精霊石を持って近くにいないとだめなんだぞ。

 必死で走る俺。

 どうにか精霊力を回収できた。


「ふぅ……モニカ。ゴーストを倒す時は精霊石が近くにないとだめだから、あまり僕が離れて倒さないでね」

「了解っしょ」

「羨ましいですわ。私も早く戦具が欲しい……」


 マリアナ様……そのいかにも計算されたうるうる瞳での見つめ攻撃やめてください。

 めっちゃ可愛いんですけどね!

 あざとさはなく、純粋に可愛いですけどね!


「マリアナ様の卵の孵化はまだしばらくかかりますから……待ってください」

「はい!」


 ああ、もっと基礎魔力が欲しい。

 俺のいまの基礎魔力は50。

 モニカの戦具の進化のための魔力も必要だし、早くマリアナ様の戦具の卵も孵化させてあげたい。

 マリアナ様の戦具の卵は神獣の件があるから、どうなるか分からないけど。


「あ、またゴーストっしょ」


 モニカが指さす方を見ると、本当だ。

 珍しい。

 こんな3回も連続で遭遇するなんて、どんな確率だよ。

 とりあえず精霊力頂きましょうか。


「モニカ飛んでいかないでよ」

「了解っしょ」


 三人一緒に駆け出してゴーストに向かっていく。

 ゴーストはこちらに気づいたが逃げる様子はない。

 そもそも魔物は人を見たら襲ってくるからね。


「うぉりゃっ!」


 モニカの一撃で霧となり精霊石の中に精霊力が吸収されていく。

 これでゴースト3匹分だ。


「あっ……」


 今度はマリアナ様が呟いた。

 またまたゴーストですか?

 まさかの4連続とはね~。

 精霊石を持っているとゴーストを引き寄せるとかあるのか?


「あっ……」


 モニカまで呟いている。

 まさか5匹目が?!

 そんな幸運なことが……。


「あっ……」


 最後に呟いたのは俺だった。

 俺が気づくのが一番遅かったからだ。

 やっぱり俺は魔物との戦闘においてはだめだな。

 気配を感じる能力とか低いよね。

 騎士学院で学んでいた二人には敵わないよね。


 俺達の目の前にいたのはロードゾンビナイトだった。


「ゴオオォォォォ!!!!」


 ロードゾンビナイトの咆哮と共に戦いは否応なく始まった。

 こっちの準備を待ってくれるわけもない。

 ゴーストに気を取られていた俺達はロードゾンビナイトの索敵範囲に入っていたことにまったく気づいていなかった。

 そもそもなんでこっちに寄ってきてんだよ!

 お前は迷宮主だろ! 奥にいけよ! 奥に!


「うぉぉぉぉりゃあああ!」


 モニカも気合の雄叫びと共に魔物に向かっていった。

 弓が狙っている。


「アースウォール!」


 取り巻きの弓の初撃を土壁で防ぐ。

 さすがは迷宮主の取り巻きだ。

 弓の威力が凄まじいのだろう……土壁は一発で粉々に崩れていった。


「こっちですわ!」


 マリアナ様が囮となって、取り巻きの剣2匹の注意をひく。

 斧と弓はモニカだ。

 迷宮主は……マリアナ様の方に行ったか。


「グラビディボール!」


 迷宮主の足元にかなりの魔力を込めた重力玉を放った。

 動きが一瞬鈍くなる。

 しかし迷宮主は俺の重力玉をいとも簡単に破壊すると、取り巻きの剣2匹に追われるマリアナ様に向かっていった。


 くそっ!

 鍵の魔具は俺が魔法を使うことに関しては役に立たない魔具だ。

 まったく魔力を増幅してくれないから。

 これがモードル君の魔具だったら、いまの6倍の魔力が込められた重力玉だったっていうのに!


「じゃかしぃぃっしょ!!!」


 視線をモニカに向けると、取り巻きの弓を倒していた。

 取り巻きの斧がモニカに向けて斧を振り下ろしているが、弓を叩き倒した反動そのままに斧を振り上げて防いでいる。

 モニカなら取り巻きの斧をすぐに倒してくれるだろう。


 なら俺はマリアナ様だ。

 取り巻きの剣2匹に追われている。

 華麗に舞うように剣を避けているが、そこにやってくるのはロードゾンビナイト。

 巨大な両手剣が振り下ろされる。


「ブレス!!」


 俺のアースウォールではあの巨大な両手剣を防ぐのは不可能だ。

 弓の一撃で崩れていたから。

 だからマリアナ様の身体能力を底上げした。

 ブレスは対象者の身体能力を一時的に上昇させる支援魔法だ。


「アイスボール!!」


 続けて取り巻きの剣2匹の足元に大量の小さなアイスボールを巻き散らす。

 ゾンビ系魔物のくせに動きが俊敏な取り巻きは、突然足元に大量の小さな氷の玉が放たれて足を滑らせてくれた。


「やっ! はっ!」


 マリアナ様はロードゾンビナイトの巨大な両手剣をかわしながら、さらに取り巻きの剣2匹の攻撃をかわしていく。

 申し訳ないが俺は魔物と距離を取らせてもらっている。

 攻撃がこっちに向いたら危ないからね。

 女性を囮にするのはどうなのかと思ってしまうが、それは前世の記憶からくる価値観だ。

 この世界では当たり前のこと。

 何より俺に危険が及ぶとモニカとマリアナ様の動きを制限してしまうことになる。

 安全な距離を取ることの方が二人のためでもある。


 モニカを見ると弓の取り巻きを叩き倒したところだった。

 少し距離が離れている。

 こちらを確認すると一直線に向かってきている。


「さきに取り巻きを!」

「がってん承知っしょ!」


 壁にならない土壁を出して、剣の取り巻きとロードゾンビナイトを離す。

 一瞬でその壁は崩されてしまうが、その一瞬でモニカは取り巻きの剣2匹に、マリアナ様はロードゾンビナイトへ向かい、上手く魔物を分断させた。


「ブレス!!」


 マリアナ様の動きを見る限り、ブレスがないとロードゾンビナイトの攻撃をかわすのは難しそうに見える。

 マリアナ様の防具はただのメイド服だ。

 いくら肉体が強化されているとはいえ、あの巨大な両手剣を喰らったら死んでしまう。

 ぎりぎりのところでロードゾンビナイトの攻撃をかわし続けているが、両手剣の刃先がかすめているのか、メイド服はところどころ切り裂かれている。


 ただそろそろ俺の魔力尽きそうです。

 まったく魔力増幅してくれない鍵の魔具が初めて恨めしい。

 この先どれだけ基礎魔力が増えようとも、戦闘においては役立たずだな。


「ブレス!!」


 これが最後のブレスだ。

 モニカを見ると2匹目の剣の取り巻きを叩き倒したところだ。

 そこからマリアナ様のところまで距離はあるけど、どうにか間に合うか?

 でも、そもそもモニカで勝てるのか?

 覚醒すれば……え?


「アルマ様!」


 しまった!

 モニカの方を見ている間に、ロードゾンビナイトが俺の方に突進してきていた。

 気づくのが遅れた。

 両手剣の間合いに入ってしまう。


「いやああああ!!!!」


 マリアナ様の叫び声が響いた。

 同時に振り下ろされた巨大な両手剣。

 それは俺の身体を切り裂く……ことはなく、がっちりと受け止められていた。

 金色に輝くモニカの戦具の斧に。


「申し訳ないっしょ。ご主人様を危険に晒すなんて」

「はぁはぁ……いや僕の判断ミスだよ。初めからこうするべきだった」

「一瞬で終わらせるっしょ」

「ゴ……ゴ……ゴゴォォ!!」

「轟け! 金剛!!」


 覚醒したモニカの戦具『金剛』の一撃で迷宮主ロードゾンビナイトは崩れて落ちていった。


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