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異世界で賢者になる  作者: キノッポ
第一章
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第2話

 賢者学院での生活が始まった。

 全寮制である。

 それぞれに個室が用意されていて、掃除洗濯はメイドの人達が全部やってくれるし、料理も専用のシェフがいて、まさに至れり尽くせりだ。


 学院の卒業はそれぞれの事情によって違う。

 まず魔具の卵の孵化。

 これが大きく関わってくる。


 これから毎日魔具の卵に己の魔力を与え続けていくことになる。

 魔法の習得のために魔力を使うこともあるため、毎日どれくらい卵に魔力を与えられるかは個人差が出てくる。

 毎日少しずつでも魔力を与えていけば、だいたい15歳~16歳ぐらいの間には孵化するそうだ。


 魔具の卵が孵化して魔具が現れたら、魔具の魔力増幅効果を確認することになる。

 ちなみに卵が孵化して現れる魔具は、卵の大きさと比例しない。

 本当に鶏の卵ぐらいの大きさの魔具の卵から、普通について歩けるぐらいの杖が現れるのだ。

 ここで魔力増幅効果が2倍未満の者は強制卒業となり、賢者の資格を失う。

 実家に帰って魔力や魔法とはまったく縁のない生活を送ってもいいし、魔術師として冒険者ギルドに登録して活動してもいい。


 魔具の魔力増幅効果が2倍以上の者は、学院生活を続けることになる。

 己の騎士を見つけるために。


 まぁ、あまり先のことを考えても仕方がない。

 今は目の前のことに集中だ。

 今は魔力操作の鍛錬の時間である。

 この魔力操作が上手いと、魔石から魔力を吸収する効率も高まると言われている。

 そして魔法を使う際の魔力消費も抑えられるとか。

 ただ先輩達から聞いた話では、かなり微妙な差らしい。

 ものすごく頑張って魔力操作が上達しても、魔石から魔力を吸収する効率が99%から99.5%に上がるとか、そのぐらいの差らしい。

 魔力操作が出来てさえいえば、魔石に内包される魔力の99%は問題なく吸収できるそうだ。

 そのせいか、魔力操作の鍛錬を怠っている人もいる。

 例えば、俺をものすごくライバル視してくるモードル君とか。


 モードル君は魔具の儀で、俺の1つ前で大人の頭ぐらいの大きさの卵を授かった人だ。

 上級貴族の長男らしい。

 自分が一番大きな卵だと思っていたら、俺の方が大きかったことにショックを受けていた。

 以来、何かと俺をライバル視してくる。

 気のいい奴ならそれでも歓迎出来たんだけど、残念ながらモードル君は残念な性格だった。

 なのであまり近づきたくない。


「ふん!」


 今も魔力操作の鍛錬を一生懸命頑張っている俺を見て不愉快だと言わんばかりだ。

 俺頑張ってるだけだからね。

 君も頑張ったら?


 あまり魔力を使いたくないんだろうな。

 魔力操作の鍛錬でもわずかな魔力を消費している。

 大きな卵を孵化させるためには多くの魔力を卵に与えなくてはいけないとされている。

 早く孵化させたくて、基礎魔力の消費を惜しんでいるんだろう。


 ちなみに魔石魔力を卵にどんなに与えても孵化しないと言われている。

 過去に実験したのだろうか?

 そもそも俺達はまだ魔石から魔力なんて吸収させてもらえないけど。


 魔石はとても貴重なものだ。

 魔力を吸収できるものとなればさらにである。

 魔石はどこから取れるのか?

 答えは魔物からである。

 魔物の心臓が魔石なのだ。


 魔物は迷宮と呼ばれる不思議な空間の中にいる。

 迷宮の中では魔物が産まれ続ける。

 奥に行けば行くほど強力な魔物が生息しており、強力な魔物の魔石ほど多くの魔力を内包している。


 あまりに小さな魔石からは魔力を吸収することができない。

 そのため魔力を吸収することができる魔石からは価値も跳ね上がる。


「ふぅ~……」


 魔力操作の鍛錬はどこまで突き詰めるか自分次第だ。

 研究者の中では、魔石からの魔力吸収効率が高まる魔力操作を極めれば、今は魔力を吸収できないとされる小さな魔石からも魔力を吸収することが可能だと唱える人もいるそうだ。

 ただし、それが出来たとしても吸収できる魔力はほんの僅かだ。

 そもそも小さな魔石は内包している魔力が小さいのだから。

 そのために魔力操作を極める価値なんてないというのが、賢者の中での常識であった。


 魔力を吸収することが可能な魔石は、国が買い取っている。

 また賢者も己の騎士を使って魔石を集めている。

 そうして魔石魔力を溜めていくのだ。


 国から魔石の提供を受けたり、己の騎士を使って魔石を集めたりするのは、魔具が優秀と認められた賢者だけである。

 俺達はまだどうなるか分からない。

 だから魔石を与えられることもない。

 自分で集めることも出来ないし。


 今日の授業と鍛錬が終わると自室に帰る。

 本当に至り尽くせりで、何でも揃っている。

 部屋にトイレとお風呂まであるのだ。

 賢者の資格を失うと、この生活も失うことになる。

 うう……どうか2倍以上の出来れば4倍、可能なら5倍ぐらいの魔力増幅効果のある魔具でありますように。


 魔具の卵を出してみる。

 魔具の儀で授かった魔具の卵は、自分の意思で出したり消したりできる。

 本当に大きい。

 今のところ、俺はこの卵の大きさのおかげで、賢者学院1年生の中で最も期待されている存在だ。

 おかげでモードル君には睨まれてばかりだけど。


 今日残った基礎魔力を卵に注いでいく。

 幸いにも、俺の基礎魔力はとても多かった。

 入学式の翌日の授業初日に、基礎魔力の測定があったのだ。

 俺の基礎魔力は15。

 オーディン王国の賢者学院において、過去2番目に多い数値だった。

 100年以上前に24という基礎魔力を持った賢者がいたそうな。


 俺の基礎魔力の高さに先生達も興味津々だった。

 特に基礎魔力の研究をしている先生からいろいろ聞かれた。

 幼い時から魔力を操り魔法を使うことで、成長と共に増えていく基礎魔力は多くなるとされている。

 俺は5歳……とされている日からすぐに魔力操作を覚えて、7歳の頃には簡単な魔法を使っていた。

 それを聞いた先生は「やはり……」と頷いて納得していた。


 モードル君の基礎魔力は8だ。

 ほかの1年生もだいたい5~10ぐらいである。

 100も200も多いわけじゃない。

 ここに魔石魔力が加われば、さらにこの基礎魔力の差は微妙になってくる。


 オーディン王国の第一級賢者でも、基礎魔力は10前後が当たり前だ。

 ただし魔石魔力は1000を超えているとか。

 1万を超える魔力を溜めているなんて噂もある。


 賢者となればそれほど重要でない基礎魔力だけど、今のこの時期だけは少しでも多くの基礎魔力を持っていて良かった。

 日中の授業や鍛錬で魔力を消費しても、魔具の卵に与えられる魔力が残るから。

 1日に魔力を2ぐらい与えていれば、15歳か16歳ぐらいには孵化するそうだ。

 大きさに比例するとされているから、俺は出来るだけ多くの魔力を与えないといけないけど。

 今日残った魔力10を卵に与えていくのであった。


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