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異世界で賢者になる  作者: キノッポ
第一章
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第14話

 迷宮探索をする際には冒険者ギルドにどの迷宮を探索するか報告することになっている。

 帰ってこなかったら死んだかどうか判断するためだ。

 しかし絶対ではない。

 別に報告しないで迷宮探索をしても罰則は何もないのだ。


 不人気なゾンビ迷宮の近くには誰もいない。

 何とも寂しそうな迷宮だ。

 最下級迷宮でもこんなに人気のない迷宮はないからな。

 最後にこの迷宮に誰かが入ったのはいつになるんだろうか。

 ま、俺達には好都合だ。


「それじゃ、行こうか」

「やるっしょ!」


 迷宮の入口は歪んで揺れる黒い渦だ。

 その中に入ると別次元の空間に繋がっている。

 そこが迷宮だ。

 迷宮によって中の構造は全然違う。

 洞窟のような迷宮もあれば、大きなお城のような迷宮もある。

 このゾンビ迷宮の中は薄暗い森の中だ。


「戦具出していいっしょ?!」

「うん、いいよ」


 モニカは早く戦具を出したかったらしく、ゾンビ迷宮の中に入ると両刃斧の戦具を出して嬉しそうに構えている。


「本当に大丈夫なんだよね?」

「余裕っしょ!」


 本当かよ。

 中級迷宮のゾンビ迷宮を探索する前に、モニカにゾンビ系の魔物と戦えるか聞いてみた。

 答えは今と同じで「余裕っしょ!」だった。

 騎士学院でモニカはかなり強い騎士候補生の一人だったので、その力量は疑っていない。

 騎士学院時代にすでに中級迷宮の魔物と戦ったことがあるそうだ。

 その時は学院から貸与されたミスリル製の斧とミスリル製の防具を着ていたそうだ。

 武器は戦具の斧があるから当時と比べても負けないだろう。

 でも防具は……お金がないせいで、モニカは騎士学院を退学した時に着ていたちょっとみずぼらしくて、ちょっと露出度の高い布の服のままだ。

 攻撃を受けるとやばいかもしれない。


「危ない時はバリア張るね」

「嬉しいっしょ! でもご主人様の大事な魔力を使わるつもりはないっしょ!」


 頼もしい限りだ。

 でも危ない時は惜しみなく魔法を使っていこう。

 何といっても、基礎魔力は自然回復するんだから。

 魔力が切れたら鍵の空間に逃げて休めばいい。


 ゾンビ迷宮は中級迷宮とあって広大な広さを持っている。

 最奥部まで到達するには5~6日かかる。

 今回は最奥部まで行くつもりはなく、1日かけて奥に行ったらその場所で狩りを行う予定だ。

 迷宮の中で魔物は次々と産まれてくる。

 倒しても鍵の空間の中で休んでいる間に、新たな魔物が産まれてくるのだ。


「お」

「きたっしょ」


 薄暗い森の中を進んでいくと、すぐにゾンビの魔物が現れた。

 あれはブラックウルフのゾンビか? なるほど見た目からして気持ち悪いな。

 さらに右から大型のスライムゾンビも見える。

 下級迷宮に出現する魔物のゾンビ系というわけか。

 ゾンビ化していることで、動きは鈍くなっているが耐久力は増えている。

 そして強力な酸を吐き出していて、あれに触れると武器が一気に腐食してしまう。


「モニカいくっしょ!」


 戦具の斧を使った初陣がゾンビ系というのもどうかと思うが、モニカはまったく気にする様子もなくブラックウルフのゾンビに飛び掛かっていった。

 素早い動きが売りのブラックウルフだが、ゾンビ化したことで動きは鈍い。

 モニカの戦具の斧が振り下ろされると見事に当たり……一撃か。

 一撃でブラックウルフは倒れて動かなくなった。。

 耐久力が増したブラックウルフを一撃で簡単に倒してくれるとは……モニカの戦闘技術もだけど、やっぱりあの戦具の斧の性能は高い。


「ヴヴ~~」


 ゾンビ特有の叫び声があちこちから聞こえてくる。

 これちょっと数多くないか?


「誰も迷宮で狩りをしないから、どんどん数が増えていったのか?」

「魔物が多くて倒し甲斐があるっしょ!」


 モニカは重そうな戦具の斧をいとも簡単に振り回して、次々と現れるゾンビ系魔物を斬り倒し、叩き倒していく。

 俺は魔物に攻撃されないようにモニカと魔物の位置を見て動いているだけ。

 本当は魔石採取ぐらい手伝いたいんだけど、スライムみたいにゾンビの腐った肉の中に手を突っ込みたくないし、突っ込んだら手が痛むから出来ないんだよね。


 ひっきり無しゾンビ系魔物が現れるから、モニカも倒しまくって魔石取り出す、倒しまくって魔石取り出すの繰り返しで、だんだん疲労の色が見えてきた。

 中級迷宮でも入口付近の魔物から取れる魔石だと、魔力吸収出来る魔石は少ないんだよね。

 まぁ出現している魔物が下級迷宮に出現する魔物のゾンビ化だから、下級迷宮の魔物より少し強い程度の魔物でしかないわけで。

 魔物によっても多少の個体差があって、入口付近の魔物でたまに魔石魔力を吸収できる魔石だったりする。


「モニカ、一度休憩しよう」

「はぁはぁ、はいっしょ」


 2時間近く戦い続けてくれたモニカはあきらかに疲れていたので、ここで休憩するために鍵の空間に入る。

 この中で安全に休憩です。


「はぁはぁ……」

「モニカ、ちょっと予定を変更する。予定の場所には1日じゃなくて2日かけていくよ。そこで3日滞在ではなくて2日滞在にして狩りをして、また2日かけて戻ろう」

「はぁはぁ……力不足で申し訳ないっしょ」

「そんなことないよ。僕達にとって初めての中級迷宮なんだ。しかも普通の冒険者ならこんなに早く中級迷宮に来ることもない。そもそも中級迷宮を探索する冒険者なんて多くないんだ。本来は地道に稼いで装備を整えて来るんだからね」

「ふぅ……でもご主人様のおかげでモニカ達は来れたっしょ!」

「鍵の特殊能力を使って強引に来ているだけだよ。だから安全第一。モニカの綺麗な肌が傷つくなんて許さないからね? もちろん傷ついたら僕が癒してあげるけど」

「超嬉しいっしょ! むしろわざと傷ついて癒して欲しいぐらいっしょ!」

「こらこら」


 水分を補給して軽く食事をする。

 迷宮の中でこんなにも落ち着いて休憩できるなんて、絶対にあり得ないんだろうな。


「ちょっとトイレっす」

「はーい」


 そしてトイレ。

 ゆくゆくはお風呂場も作りたい。

 お湯を事前に区切った空間の中に入れておけば好きな時に出して……。

 でもそのためには特別なあの空間にしないとな。


 時間停止空間。

 鍵の空間の中をいろいろいじれることが分かって試していたら、異空間の他にも多くの魔力を使うことで時間が停止した特殊な空間を作り出せることが分かった。

 俺やモニカは入れない。

 たぶん生きている生命体は入れないと思う。

 でも水や食事は大丈夫だ。

 この時間停止空間を広げていければ、新鮮で冷たい水を保存できるし、食事だって作り立ての暖かい食事をそのまま保存することもできる。

 そしてお湯をこの中に溜めておけば、いつでもお風呂に使うことができるわけだ。

 ただすごく魔力を消費するので今は無理。

 将来的には実現したい。


「お……これはいけそうだな」


 手に入れた魔石を見ていくと、中に1つだけ魔力が濃そうな魔石があった。

 これなら魔石魔力を吸収できるんじゃないか?

 魔力1にもならないだろうけど。


 俺は魔石魔力を吸収したことがないので勉強で覚えた知識でしかないけど、魔石魔力を溜めるのは本当に大変で、中級迷宮の魔石だと10個ぐらい吸収してようやく魔石魔力1が溜まるぐらいなんだとか。

 魔具を得て賢者になった者は、まずは自分の基礎魔力以上の魔石魔力を溜めることを目標にする。

 それが出来てようやく一人前の賢者と言われるのだとか。

 つまり平均的な基礎魔力が7~8ぐらいなのを考えると、中級迷宮奥の魔石を70個から80個集める必要があるわけだ。

 その賢者の騎士が。

 しかもその騎士の戦具の卵を孵化もさせなくちゃいけない。

 駆け出しの賢者にすればそれだけで1年とか余裕でかかりそうだな。


 あ~本当に鍵の空間がありがたく感じられる。

 迷宮を探索するためにかかる様々な費用や問題を、この空間は一気に解決してくれる。

 騎士や戦士一人で中級迷宮を探索するなんて絶対にあり得ないからね。


 ただし1つだけ難点があるとすれば、俺が同行する必要があるってことだな。

 鍵の空間は鍵の魔具がないと開かない。

 当たり前のことだけど。

 そして鍵の魔具は俺が使うんだから、俺も迷宮の奥に行かなくてはいけない。

 当たり前のことだけど。

 つまり俺の身に危険が及ぶ可能性が高いわけだ。

 俺も鍛えないとな。

 基礎魔力が増えてきて、多くの魔法が使えるようになれば俺だって戦えるはずだ。

 モニカに守られるだけの存在ではなく、戦える魔術師を俺は目指そう。


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