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異世界で賢者になる  作者: キノッポ
第一章
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第12話

「余裕っしょ!」

「余裕だね」


 オーディン王国の王都には、王都の中にいくつもの迷宮が存在する。

 迷宮が多数存在するこの場所に王都を造ったのだから当然だ。

 いま俺達は最下級迷宮に来ている。

 迷宮は広さと出現する魔物の強さによって等級が分かれている。


最下級迷宮

 ほとんどが1日で探索できるぐらいの広さの迷宮。構造も単純で魔物も弱い。


下級迷宮

 2日もあれば全てを探索できるぐらいの広さの迷宮。構造は単純だが、最下級迷宮に比べると少し複雑になる。魔物も弱いが最下級迷宮より少し強い魔物もでる。


 こんな感じでどんどん難易度が上がっていく。

 最下級迷宮と下級迷宮の魔物から取れる魔石は、魔石魔力とはならない小さな魔石だ。

 中級迷宮以上から魔石魔力となる魔石は取れる。

 しかし中級迷宮の奥に行くには、4~5日ほどかかる。

 上級迷宮ともなれば10日ほど。

 最も難易度が高い最上級迷宮だと、奥に行くだけで30日ぐらいかかるとか。


 この最下級迷宮は出現する魔物がスライムばかりと、最下級の中でももっとも簡単とされている迷宮だ。

 スライムは打撃系の耐性を持っている魔物だけど、この最下級に出現するスライムはほとんど耐性なんてあってないようなもの。

 上級迷宮とかに出現するスライムは、打撃系ではほとんどダメージを与えられないそうだけどね。


 モニカが素手でどんどんスライムを倒していく。

 まぁいくら弱い魔物といっても、ここまでモニカが簡単にスライムを倒せるのは、戦具を授かったことで身体能力が大きく向上しているし、騎士学院で鍛えられたモニカだからだろうけど。

 普通の人ではさすがにこうはいかない。


 俺はモニカの後ろを歩いて、スライムの砂粒のような魔石を拾い集めていく。

 本当に小さいな。


 魔ねずみや魔こうもりはスライムより強いらしいけど、取れる魔石の大きさはほとんど変わらないらしい。

 魔ねずみは逃げたりもするし、魔こうもうりは空を飛ぶので面倒だったので、地面をうにょうにょと動くスライムを狩りにやってきたわけだ。


「この分なら危険は無さそうだね」

「迷宮主だけ気を付ければ余裕っしょ!」

「ポイズンスライムか。毒は危険だ。モニカはいま武器がないから、見つけても絶対手を出しちゃだめだよ」

「了解っす!」


 焦らず行こう。

 モニカには鍵で開けられる空間のことは伝えたけど、モニカの戦具の卵に俺が10倍の魔力増幅効果を与えられることや、孵化までの残り魔力が見えていることは伝えていない。

 戦具は他の戦士や騎士が見たら、それが戦具であるかどうかすぐに分かるらしい。

 俺が魔具を見たら、それが魔具かどうか分かるのと一緒か。

 戦具も魔具も所有者と一心同体のものだ。

 普通の武器とは違う何かを、戦士や騎士は感じ取れるのだとか。


 だからモニカの戦具の卵をすぐに孵化させるのはまずい。

 どうしてあんなに大きな卵を俺がすぐに孵化させることが出来たのかとなってしまう。

 大きかったけどたまたま必要な魔力が少なかったのでは? と白を切ることも出来るけど、疑いの目は向けられてしまう。


 そこでモニカの戦具の卵をいつでも孵化させることが出来る状態にしておく。

 990/1000の状態だ。

 この状態で魔力1を与えれば10倍となって10与えられて孵化する。

 まずはこの状態に持っていこう。


 その後は空間の拡充だ。

 空間を出来るだけ広げていく。

 モニカはあの狭い空間で密着し合うのも好きだとか言っていたけど、俺も好きだけど、でも拡充は必要だ。


 夕方になるまでスライムの魔石を集めて迷宮を出た。

 冒険者ギルドで集めたスライムの魔石の半分を買い取りしてもらう。

 残り半分は空間に入れてある。

 後でちょっと検証だ。


 夕飯を食べて部屋に戻ると、モニカがすぐに襲ってきた。

 普通に腕力で負けるけど、襲ってきたモニカを返り討ちにしようとすれば、素直に負けて俺に全てを委ねてくる。

 モニカはかなり情熱的だから、何をしても許してもらえそう。

 でも乱暴なことはしないけどね。

 女性には優しくだ。





「モニカはアマゾネスっしょ」

「え?」


 3回戦が終わったところでモニカがいきなりカミングアウトしてきた。

 アマゾネス。

 オーディン王国の最南端の熱帯雨林に暮らす部族の名前だ。

 オーディン王国の南地方は暑く森林が多い。

 その地方の人は肌が日に焼けて褐色系が多いから、モニカの褐色肌もそうだと思っていた。

 その中でも有名なアマゾネスの部族の出身だったのか。


「アマゾネスは強い雄が好き。だからモニカはアルマっちをご主人様にしたかった」

「そうだったんだ。アマゾネスは部族の名前として有名だけど、でも普通の人族なんでしょ」

「人族は人族。でもアマゾネスはアマゾネス」

「……そっか」


 よく分からないけど、分かったことにしておいた。

 モニカはアマゾネスが主人と認めた男にどれだけ忠実で良い女か力説している。

 自分アピールとは可愛いじゃないか。

 ただ話の最後のオチが、たくさん俺の子を産みたいという話だった。

 アマゾネスが産む子は必ず女性らしい。

 産んだ子はアマゾネスの部落で育てられる。

 アマゾネスとして。


「だからご主人様の子供を産んだら、アマゾネスとして育てることを許して欲しい」


 そういうことは最初に言うんじゃないの?

 いや、まだモニカは俺の子を産んでいないからいいのかもしれないけど。

 でも肉体関係を持つ前に言うべきだと思うけど、その辺はモニカもしたたかなのかもね。

 どうしても俺の子が欲しいと願ってのことだろうから、別に構わないが。


「いいよ」

「さすがはご主人様っしょ! 器が大きいっしょ! あそこも大きいっしょ!」

「いや、あそこは普通だよ」

「大きいっしょ! 絶対大きいっしょ! モニカの中ガンガン広げてくるっしょ!」


 どうなんだろうね。

 男は大きくなった状態で比べることないから分からないのだよ。

 ただモニカの胸が大きいことは分かる。


「モニカの胸は大きいけどね」

「えっへん。ご主人様のも挟める自慢の胸っしょ」

「だね。その自慢の胸でお願いできるかな?」

「もちろんっしょ!」


 こうして4回戦が始まった。




 モニカをどうにかしてダウンさせた後、鍵の空間の中からスライムの魔石を取り出した。

 砂粒のような小さな魔石。

 手の平にとって、魔力を吸収出来ないか試してみる。


 結果、無理でした。

 魔力操作にかなり自信のあった俺は、俺ならもしかして小さな魔石からでも魔石魔力を得られるんじゃないか? と自惚れていたのだ。

 でも無理でした。

 まったく魔力を吸い上げられません。


 そりゃそうですよね。

 そこまで上手く話は進まないですよね。

 でもこれはどうだろう?

 何か起きるかな?

 むしろこっちが試したい本命だからね。


「お?」


 何か起こった。

 具体的には今までと同じだ。

 砂粒のようなスライムの魔石に鍵を押し当ててみた。

 すると、鍵で何かを開けられるような感覚。

 魔力を流してそれを開けてみた。


「あ」


 魔力だ。

 いまほんの僅か、まさに砂粒のような魔力が俺の身体に流れたのが分かった。

 吸収できたのか?

 魔石魔力を得られたのか!?


 でも基礎魔力を使って魔石魔力をわずかに得ても仕方ない。

 そう思ってもう1つの魔石に鍵を押し当てた。

 すると自分の魔力を消費することなく、スライムの小さな魔石から魔力を吸収することができた。

 魔物ごとの判定なのか? 一度スライムの魔石から魔力を吸収すれば、次からは自分の魔力消費なしで吸収できるとか。


 やったね!

 鍵ナイス! マジでナイス!!

 魔石魔力としてはたぶん、0.0001とかだろうけど、吸収出来るのと出来ないのでは話が違うからね。


 方向性は決まった。

 モニカには当分の間、最下級迷宮でスライム狩りをしてもらう。

 素手なのは申し訳ないけど、しばらくは我慢してもらおう。

 俺はモニカの戦具の卵に魔力を与えつつ、空間の拡充をする。

 やることは寝て起きて魔力使って飯食って寝て起きて魔力使って、時々モニカとイチャイチャするという、字面にすると恐ろしいほどにぐーたら生活のように思えるが、必要なことだ。

 夕方になったらモニカを迎えに迷宮に行く。

 そこでモニカが集めてくれたスライムの魔石の半分ぐらいを空間に収納して、後で吸収する。

 残りの半分は売って生活費の足しにする。

 正直、スライムの魔石だけではこの鈴の宿に泊まり続けるだけの稼ぎは得られない。

 俺の金で1ヶ月はいられるのだから、それまでに態勢を整えるんだ。





 思い返せばこの時すでに始まっていたのだ。

 俺の予想を遥かに超える鍵の魔具の能力が。


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