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異世界で賢者になる  作者: キノッポ
第一章
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第1話

「これより魔具の儀を始めます」


 ここは王都にある学院だ。

 正式には『賢者学院』と『騎士学院』という2つに分けられるのだが、単に学院と呼ばれることが多い。

 賢者学院は男が、騎士学院は女が入る学院である。

 誰もが入れるわけではない。

 男は9歳になるまでの間に魔力の才能があると確認された者は賢者学院に入ることになる。

 そして女は9歳になるまでの間に戦具の才能があると確認された者は騎士学院に入ることになる。


 ちなみに強制である。

 才能がある者は必ず入らなくてはならない。

 俺がそうであるように。


 俺は気づいたらこの世界に転生していた。

 しかも5歳ぐらいの幼児として。

 飢えて死にそうになっていたところを孤児院の人に保護してもらった。

 そしてすぐに魔力があるかどうかを確認したところ、俺には魔力があった。

 魔力の才能があったおかげで、俺は不自由なく孤児院で育ててもらえた。

 言葉に関しては最初から理解できたけど、文字は孤児院で教わった。


 保護された俺は誰かが登録せずに生んで育てた5歳児として認定された。

 親から捨てられたショックで記憶の一部を失っていると、都合よくみなしてくれて助かった。

 正確な年齢は分からないので、保護された時点で5歳とされた。

 誕生日ももちろん分からないから、保護された日が俺の誕生日となった。

 名前も思い出せませんと言ったら、院長が俺に新しい名前として『アルマ』と名付けてくれた。


 10歳になったら学院に入ると告げられていた。

 それまでの間は孤児院で勉強と魔力の鍛錬を行った。

 生きるために俺は必死に勉強して鍛錬を続けた。


 魔力の鍛錬はいきなり魔法を使うのではなく、体内にある魔力を扱えるようになることからだった。

 魔力操作という。

 俺は優秀だったようで、魔力操作にすぐに慣れていった。

 院長も喜んでいたっけ。

 まぁ見た目幼児でも頭の中は25歳だったので、理解度は高かったと自分でも思う。

 7歳になると、簡単な魔法を使った鍛錬も始まった。


 この世界の魔法事情はちょっと特殊だった。

 特殊と言っても、俺が前世で呼んでいた小説やゲームの設定からすると特殊ということで、この世界にとっては常識なんだけど。


 まず魔力は男しか持たない。

 女は魔力を持てないのだ。

 男も全員というわけではなく、魔力の才能がある者だけ持つ。


 そして魔力において最も重要なのが『魔力は自然に増えない』ということだ。

 魔力の才能がある者でも、その者が自然と最初から持っている魔力値には個人差がある。

 基礎魔力と呼ばれている。

 この基礎魔力は大人になると自然に増えることはない。

 子供は成長と共に基礎魔力が少しずつ上がるには上がるのだが、劇的に増えることはないそうだ。

 そして成長が止まると、そこからは基礎魔力が増えることはない。


 ではどうやって魔力を増やすのか?

 魔石から魔力を吸収するのである。

 魔石魔力と呼ばれている。

 この魔石魔力をどれだけ溜めているかが、賢者としてどれだけ優れているかとなる。


 基礎魔力と魔石魔力の話を続ける前に、話を『魔具の儀』に戻そう。

 いま賢者学院の魔具の儀の最中である。

 俺は10歳となり賢者学院に入学した。

 その入学式で魔具の儀が行われるのだ。

 魔具の性能が今後の賢者として格付けでとても重要となる。


 魔具。

 魔力を持つ男は賢者と呼ばれる。

 10歳を過ぎた賢者には神から魔具が授けられる。

 遥か古代から存在する魔法陣の上で念じることで、魔具を授けてもらうのだ。


 魔具には様々な種類があるが最も多いのは『杖』『玉』『本』といったものだ。

 種類はどうであれ、魔具にとって最も重要な性能は『どれだけ魔力を増幅してくれるか』である。


 基礎魔力。

 これは食事で栄養を取り、寝て休めば回復してくれる。

 しかし基礎魔力はそれほど多くない。


 そこで賢者は魔石から魔力を吸収して魔石魔力を溜める。

 魔石魔力は使ったらおしまいだ。

 減ってしまう。

 休んでも回復することはない。


 ここで魔具の出番だ。

 魔力を増幅してくれる魔具は魔力の問題から重要となる。

 極端な話で魔力をまったく増幅しない魔具と、魔力を10倍に増幅してくれる魔具があるとする。

 基礎魔力10の賢者がまったく魔力を増幅しない魔具を使えば、当然使用できる魔力は10の魔力だ。

 しかし10倍に増幅してくれれば、基礎魔力だけでも100の魔力を使用できる。


 これが休んでも回復しない魔石魔力となれば、さらにその価値は貴重なものとなる。

 使えば無くなってしまう魔石魔力を使うのであれば、少しでも魔力を増幅して使えた方が有利なのだから。


 ここに女が授かる『戦具』が絡むとさらに魔具の価値は高まるのだが、それは後々に。


『おお~!』


 会場に歓声が起こった。

 見ると大人の頭と同じぐらい大きな卵を持った男の子がいた。

 魔具の卵だ。

 賢者学院の入学式で行われる魔具の儀で授かる魔具は、まだ卵の状態である。

 これからこの卵に己の魔力を与えて孵化させると、杖や本といった魔具が現れるのである。

 魔具の性能は卵の大きさに比例することが多く、きっとこの男の子の魔具は当たりだろうな。

 まぁ大きさが絶対ではないけど……過去にはすごく大きな卵だったのに、まったく魔力を増幅しない魔具だったこともあるらしい。


 魔具の魔力増幅は4倍から5倍が優秀とされている。

 現在このオーディン王国の賢者が持つ魔具で最も高い魔力増幅効果は10倍だそうだ。

 俺も4倍ぐらいの魔具だといいな……。


 せめて2倍! 2倍以上でお願いします!

 孵化するまで分からないんだけどね。

 魔力増幅効果が2倍未満の場合は、賢者学院から強制卒業となり、賢者にもなれない。

 そうした者は『魔術師』となり冒険者として活動することになるそうだ。


「アルマ君、前へ」

「はい」


 どうやら俺の番だ。

 俺が最後なんだけどね。

 今年、賢者学院に入学したのは俺を含めて10人だ。


「魔法陣の中へ。精神を集中して神に祈りを捧げるのです」

「はい」


 神官のようなおっさんに言われた通り、魔法陣の中で精神を集中させていく。

 体内から魔力が魔法陣に流れていくのが分かる。

 魔法陣が光り輝き始めた。


『おおお~~~!!!!』


 さきほどよりもさらに大きな歓声が響く。

 俺の目の前には、とても大きな卵があった。

 俺より大きいぞ……。

 神官のようなおっさんと同じぐらいの大きさの卵だ。


 これは当たりですよね!?

 やったよ院長! ありがとう神様!!


 こうして俺の賢者学院での生活が始まったのであった。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 3年以上放置されているのを承知で読んだのですけど、 やっぱり最終章読みたいです。 最初のころは、設定が今一理解できなかったのかあまり面白くなったのですが、読み進めていくうちに、引き込…
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