第六項 剣は口よりものを言う
物見櫓に行くと案の定レティアが一人で
佇んでいた。此方を振り返ると何しに来たんだと言いたげに睨み、やがてまた前を向いてしまった。
「色々言っても白々しいだけだから単刀直入に言うぞ。何か言いたいなら言いに来い」
「私にだって言いたくないことくらいあります」
「明日からジャルジュと共同作戦かもしれないってのに。お前がそんなんじゃ第二部隊が使い物にならなくなる。少しでいいから話してくれ」
「嫌です」
この調子だと世界が終わっても言いそうにない。なら奥の手だ。
「面倒臭えな、まったく。しょうがない武器もって表出るぞ」
「・・・望むところです」
やっぱり乗ってきたか。話してくれた方が楽なんだがな。
ЖЖЖ
町の広場につくとレティアは背負っていた大剣を鞘から引き抜いた。
「一応聞くが、鞘ありにするか?抜き身にするか?」
「・・・見て分かりませんか?」
レティアの目は殺気に満ちており、剣は迷いなく此方に向けられている。殺されない事を願おう。
「確認しただけだ。ま、死なない程度にやろうぜ?」
俺が二本の剣を構えた瞬間。
「てりゃ!」
グオンという音を立ててレティアが大剣を
振るった。
対して俺は地面に左手の大剣を突き刺してこれを受け、反撃として右手の剣を振るう。
が、レティアはこれを待っていたと言わんばかりに軽々と剣を弾き飛ばした。
「これで条件は同じです」
「だな、俺も本気でやらないとだ」
やられっぱなしは性に合わない。今度は此方から足下を薙ぎ払ってやった。
レティアはジャンプしてこれを避け、そのまま落下と同時に大剣を降り下ろす。
間一髪でこれを避け、隙だらけのレティアを大剣の腹で吹っ飛ばした。
レティアは空中で態勢を立て直して受け身をとり、再び剣を構えると息を整える。
「何故、第一部隊は簡単に敵を受け入れられるんですか!?ザックだってあんなに大怪我を負ったのに何で笑い合えるんですか!」
やっぱりな北を滅ぼしたのはあいつらじゃないと解ってても割り切れないんだろう。
それが普通だし、当たり前の事だ。
「簡単だ。揃いも揃って馬鹿だからだ。あいつらは深く考えないんだよ。同じ食卓にいれば仲間。同じ樽から酒を飲めば家族。肉を分け合ったなら兄弟。そんなもんだ」
レティアが構えている剣がカタカタと震えている。
怖いわけではないたろうし、そうすると力みすぎてるのか。
怒り全開ですね。もう泣きそう。
「それじゃ、それじゃあ私はどうすればいいんですか!」
一気に距離を詰め、レティアは大剣を降り下ろした。
覚悟を決めて大剣を振り上げて俺はレティアの大剣を弾き返す。
だがレティアは弾き返されたのをものともせず叫び声を上げながら再度大剣を降り下ろしてきた。
最早狂戦士とあまり変わらない戦い方だな。
怖い事この上無い。
それから10分程同じようなことを繰り返すとレティアは息を切らしてその場に座り込んだ。
「気は済んだか?」
「はい、お騒がせしました」
「そうか、なら言うことは一つだ。食わず嫌いはよせ。まず自分で接してみてそれから判断しろ」
「・・・分かりました」
大剣を杖代わりにして立ち上がると、レティアは宴会場へと戻っていく。
そして俺は疲れてヘトヘトになった上に汗でベトベトになった。
これだからレティアとの決闘は嫌なんだ。
・・・仕方ない沐浴に行くか。