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ユーレンス大陸史  作者: 新参猫
第一章 種間戦争
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第二項 会談兼お茶会

コンコンとドアをノックする音が部屋に響いた。


「フォルスの投降者、ユルナス・リー殿をお連れしました」


「入ってくれ」


「失礼します」


入ってきたのはとても綺麗な少女だった。

長く銀色の髪を緩く結んでおり

表情も穏やかな印象を受けた。


「何鼻の下伸ばしてるんですか!」


パンッと今度は素手で叩かれた。


「痛て、嫉妬してくれるのは嬉しいが後に

してくr―――。グボッ!」


今度は右ストレートが飛んできた。

しかも赤面のオプション付だ。これは嬉しい。

だが痛い。

そのままリンチが始まった。助けろ誰か!


「えっと、そのどうしましょう?」


「その二人なら放っておいていいよ。何時ものことだから」


ユルナスがオロオロしているとアンセルがお茶を

持ってきた。慣れているのか彼は落ち着いて

いる。いや、助けてくれよ。


「冷めないうちにどうぞ」


「ありがとう、えっとこれは何」


「これかい?これはシーナっていうお菓子でね、今鍛冶屋の娘さんが持ってきてくれたんだ。お茶請けに丁度良いから持ってきた」


「へぇー食べても良いの?」


「どうぞ、ほらそこの馬鹿夫婦、お客さんが食事するんだから埃たてないで」


「分かりました。あと夫婦じゃないです」


「負けた、疲れた、腹減った」


「報告は要らないよ。ほら早く座って」


ユルナスは初めて見るお菓子を暫く眺めていた

が、やがて意を決して口にした。

そして数秒で

目を見開いて言った。


「凄く美味しい!」


「それは良かった、娘さんも喜ぶよ」


「これってどうやって作ってるの?」


「あぁこれはね、ラクロの実をくり貫いた後に好きな果実のジャムを入れるんだ。今回はヘノモの実のジャムだね。

で、その後溶けた砂糖で表面をコーティングしてるんだ。だから最初パリッとしたでしょ?」


「うん、した!」


「外はパリッ中はトローリってな。レティアはこれ好きだよな?」


「ええ大好きです、なので貴方のを一つ頂きますね?」


言い終わるよりも早くレティアは俺の皿から

シーナを一つ口に入れた。


「あ、やりやがったな!」


「会議中に寝ていた罰です」


「正論過ぎて反論できない・・・」


一連のやり取りを見てユルナスはクスクスと

笑った。笑い事じゃない、死活問題だ。


「フフ、二人とも面白いね?」


「見てるだけならね、時々仲裁しなきゃいけないから面倒なんだよね」


雰囲気が和やかになった所でアンセルが話を切り出した。


「そういえば、ユルナスは何で投降したんだい?」


一瞬体を強ばらせたが、俺が自分の皿からシーナ

を彼女の皿に移すとゆっくり話しはじめた。


「えっと、始祖様が居なくなってエッカがリーダーになったの。それから皆おかしくなって、だから逃げてきたの」


「始祖様って?」


「始祖様は始祖様だよ。皆そう呼んでる」


「それじゃあエッカっていうのは?」


「エッカ・ボッカ。フォルスの中では二番目に偉かった」


「そいつが黒幕か」


黒幕が分かったところで本拠地に乗り込む

作戦もない、ましてや兵力もない。

根性とヤル気はあるんだがなぁ。


「勝率も無さそうだしな」


「何がですか?」


「フォルスの本拠地に殴り込み大作戦☆」


「アホですか?」


剣もほろろとはこの事だ。

もう少しいい言い方は無いのか?

まぁ本気で言ってないしな

気にしないことにする。


「流石にそこまでアホじゃない。今俺らが居なくなると中央まで取られることになる」


「え?中央までってどういうこと?」


ユルナスはキョトンとした表情で聞き返した。

その反応に流石の俺も眉間に皺を寄せた。


「知らないのか?北はフォルスによって壊滅的な被害を被ったんだ」


「おかしいよ、フォルスはここ最近一部を除いて国外に出ちゃいけないんだよ?国はおろか町一つ落とせるわけない」


ユルナスが身を乗り出しながら更に言い返す。


「そんな筈はない。現に焚き火の跡とか煙が上が

っているのが確認されてる」


「それこそおかしいよ!フォルスは森を大切にする民だよ?木を燃やすなんてする筈がない」


ユルナスが机をバンッと叩くとメキッという

嫌な音がした。

耐えきれませんぞー、と机が悲鳴をあげている

らしい。耐えろ!


双方の間に嫌な沈黙が流れた。

そこに助け船を出すように伝令兵が駆け込んできた。


「何事だ!」


「敵襲です!ご準備ください」


「クソ、話は後だ奴らあんたを追って

来やがった」


「そんな・・・」


「大人しくしてろよ?まだ聞きたいことが山程ある。レティア、アンセル、行くぞ」


「了解です」


「はーい」


各々愛用の武器を手に部屋を後にした。

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