表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ユーレンス大陸史  作者: 新参猫
第一章 種間戦争
3/52

第一項 意外な来客

どうも皆様、新参猫です。第一章突入です。長くなると思いますがどうかお付き合い願います。

その部隊は敵にも味方にも恐れられた。

有名な殺人鬼やゴロツキ達の総大将など

ろくでもない連中を集めて作られた

寄せ集め部隊だ。

死ぬことを恐れず、殺すことを躊躇わない。

国の人間は理性の無い獣だと蔑だ。

だが彼らを信用し、彼等から信頼された者が

いたことをここに明記する。


彼の名はシュドム・アクリエス。


獣の旅団と言われた部隊を纏め上げた名団長だ。

―――第十二代目オグマの手記


目が覚めると机の上に突っ伏していた。

粗末な組み木の机、身動ぎすればギィギイなる

頼りない椅子。

そして見映えだけはいい役立たずの王国旗。

ここに来てから3ヶ月程たった。

サドナ湖の町マイソーカ

王国を守るために築かれた辺境の町だ。


いい加減起きようと体を起こし伸びをすると

隣から紙で叩かれた。

しまった会議中なのを忘れていた。

会議と言っても隊長格二人でする話し合いのようなものだが。


「作戦会議中に寝るとは良い度胸ですね?」


寝ぼけ眼で隣を見やると普段より

つり目になった青髪の女が此方を見ていた。


「申し訳ない、最近疲れぎみで。そういうお前も隈が出来てるぞ?最近録に寝てないだろ?レティア」


「う、うるさいですよ!」


指摘されたのが恥ずかしいのか顔を赤くして

更にバシバシと紙で叩いてくる。


だが、疲れているのは事実の筈だ。

何せこの町は三日前から断続的にフォルスの侵攻を受け続けている。

その度にレティア率いる第二部隊は最前線で敵を抑えていた。


第二部隊が疲弊しているのは明らかだ。

まして、その隊長が疲れていないはずがない。


ちなみに俺が疲れているのは出撃を許されない

第一部隊を諌めるために毎晩酒に付き合っていた為だ。


「いてて、悪かった。それで何処まで話は進んだ?」


「本当に聞いていなかったんですね・・・

じゃあもう一回説明するのでちゃんと聞いてくださいね?あと今日のデザート下さいね」


「分かった、お願いする」


「では、敵はオールドナ山脈より北を攻略し、現在南下しようとしているようです」


「根拠はなんだ?」


「北の伝令から焚き火の後や煙を見たという話が複数上がっています」


「だとすると確実、か。北が落ちたという根拠は?」


「公国崩壊後私が民をつれて逃げましたから、他の生き残りはいないでしょう」


そう言うと溜め息をつきレティアは席に座った。


「ローゼンガルドの姫君がそう言うならそれも

確実だろうな」


正直状況は最悪だ、本来フォルスの本拠地

アルロートを囲うようにして北、南、東に

陣を張っていたのだが。


「よもや北が落とされるとは。ここ三百年で力をつけたか、或いは出し惜しみをしていたか、どっちにしろ次は俺たちの番だし。ヤバイね?」


「ヤバイのが分かっているなら緊張感を持ってください!仮にも団長ですよ?」


「返す言葉も御座いません・・・」


再び紙で叩かれるかと思われたとき伝令兵が

駆け込んできた。


「何事だ?」


丸めた紙を慌ててもとに戻しているレティアを

横目に聞くと、肩で息をしながら伝令兵は

言った。


「ふ、フォルスから初の投降者が出ました」


「なんだと?今何処に居る?」


「町の広場でお待ち頂いております!」


「すぐに連れてこい!丁重に扱えよ?」


「は!了解であります!」


伝令兵が出ていくとレティアは溜め息をついた。

笑いを堪える身にもなれ、大変なんだぞ。


「なあレティア?」


「何ですか?」


「果報は寝て待てって言うよな」


「貴方の場合は寝過ぎて果報を聞きそびれそうですが?」


「つれないな。おいアンセル!どうせ盗み聞きしてるだろ?お茶の用意を頼む」


天井に向かって言うと天井の一部がずれて

上から白髪の少年がおりてきた。


「また僕?たまには他の人に頼んでよ」


「盗み聞き料だ、ほら取ってこい」


「はーい」


アンセルは納得がいかないと言うように

トボトボと厨房に向かって歩いていった。

いつもの事なので全く可哀想とは思わない。


「さて後は待つだけだな」


「寝ないで下さいね?」


「善処する」


スパンッという歯切れの良い音が辺りに響いた。

いつか叩き返してやる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ