第二項 そして記憶の旅へ
どうも新参猫です。初めましての方は初めまして。のんびり書いているのであまり更新速度は速くないですが、暖かく見守って頂けると幸いです。
中は意外なことにちゃんとした部屋になってい
た。
唯一変なところを挙げるとすれば
大量の魔昌石が飾られていることだけだ。
「どうだい?なかなか良い家だろう」
子供は奥の部屋からエヒネ(紅茶に果汁とジャ
ムをいれたもの)を持ってくると
満足げに言った。
「あんた一人で作ったのか?」
「たわけ、一人寂しくこんな物造れるか!
心優しい友が私に寄贈してくれたのだよ」
机の上にカップを置くとこちらに向かって
手招きをした。
「ほら座りたまえ、色々話すことがある」
「座るまえに一つ聞きたい」
「なんだね?」
「あんたの名前は?」
「これは失礼した、てっきり名乗ってあると思っていた。私はカルマ・ルゼスト。カルマと呼んでくれ」
そう言うとカルマは改めて手招きした。
今度は素直に座った。中々座り心地が良い。
「何故俺をここに呼んだんだ?」
「その質問に答える前に一つ聞こう。
バルホス動乱を鎮めたのは誰だ?」
「アルデナント三世」
当たり前のことを聞かれるとは思わなかった。
だがその答えを聞いてカルマはうんざりした
ように頭を抱えた。
「たわけ!オグマの人間まで騙されてどうする!」
「は?え?騙されてる?どういう事だ?」
今度は背もたれに寄っ掛かりすぎて盛大に
転んだ。忙しいやつだな。
「よーく分かった。少し待っていろ、正しい歴史を記した物を幾つか持っているのでな。お主も読んでみるがよい」
「へーい。っとそう言えば何でこんなに魔昌石が飾ってあるんだ?」
そう言って手近の魔昌石に触れる直前
カルマが触れるなと叫んでいた。
しかし時すでに遅く、俺の意識は失われた。
ЖЖЖ
目を覚めすと目の前に何か煙のようなものが
見えた。
彼が慌てて起き上がると、それは一歩後ろに
下がって此方を覗き込んできた。
どうやらこれは人らしい。
何気なく触れようとすると頭の中に声が
響いてきた。
『たわけ、これ以上面倒なことにするな!』
「その声カルマか?」
『そうだ、悪いが時間がないのでな。手短に 説明するからよく聞いておけ。お前が触れた魔昌石は他人の記憶を追体験する為の道具だ。恐らくお前の目の前に人がいるだろう?そいつに触れると記憶に入れる。なにか質問はあるかね?』
「何時になったら戻れる?」
『分からん。だが戻れる事は保証しよう』
「言ったな?戻れなかったら殺す」
『勝手にしたまえ、それでお前の目の前にいるやつはどんな姿だ?』
「分からない、煙のようにしか見えない」
『目を凝らしてよーく見たまえ。どんな武器を持ってあるかだけでもいい』
改めて目を凝らして見てみると一瞬煙が消え
人の姿が見えた。
青い髪、背には大降りな大剣、白い簡素な鎧、
腰に差した細身の剣。
「大剣と細身の剣を一振りずつ持ってる!」
『なら、そいつはシュドムの記憶だ』
「シュドム?一体誰だ」
『種間戦争を終わらせた英雄だ。』
「あ?それはナイリー三世じゃないのか?」
『あー面妖な、いいか?お前の知る歴史は全て間違っている。それを正すためにここに呼んだのだ。今から見てくるのは真実の歴史だ、分かったな?』
「さっぱり分からん!だが興味はある」
『その意気や良し、そなたが見るのは460年の大陸だ。今から540年程前の世界だ。
覚悟ができたならシュドムに触れろ』
「その時代の状況は?」
『157年にフォルスがサピエに仕掛けた戦争が
種間戦争だ。
この戦争は暫くの間穏やかに行われていたのは
知っているな?
だが460年、突如フォルスによってローゼンガルド公国が攻め落とされた。
以降サピエ陣営は追い込まれている。シュドムはこの時最前線で部隊を率いて戦っていた。場所はサドナ湖の町、マイソーカだ』
「感謝するカルマ、また会おう」
そう言うと彼は記憶に飛び込んだ。
如何でしたか?これで第零章は終了となります。短いですね。第一章からはもう少し長くなる予定です。それではごきげんよう。zzz