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01 サヨナラ 02 暖かな背中
【サヨナラ】……2017年5月20日執筆
【暖かな背中】……2017年5月22日執筆
【サヨナラ】
ここで打たねば男が廃る。
そんな気持ちで打席に入って、マウンドに立つ敵の守護神を睨みつける。
9回裏ツーアウト満塁。一打サヨナラのチャンスだ。
ファンの応援も一段と熱が入る。投手はきっと委縮しているだろう。
――さあ来い!
ところが、初球、死球、試合終了。
呆気ない幕切れだった。
【暖かな背中】
いきなり目の前に広いがっしりとした背中が現れた。
脚に手を通されて体はピッタリ背中に着いている。
頼もしすぎる大きな背に揺られ、心地よい気持ちになる。
暖かな背中――それが誰の背中か俺にはわかっていた。
夢でしか逢えない存在になってしまった今、じっくりと背中の感触を噛み締めた。