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私の彼氏は超肉食系  作者: 蜘條ユリイ
第4章
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第12話 彼女は愛していると伝えた

「志保。それで何が不満なんだ?」


 署名運動が功を奏したのか。救ったのが親王殿下だった所為なのか。厚生労働省の審議会では条件付きで医師国家試験の受験資格は剥奪されなかった。しかし、私は医師になるかどうか悩んでいる。


「宮内庁病院に勤務しなくちゃいけないなんて条件付きなのよ。」


 もちろん2年間の臨床研修期間中も宮内庁病院で行なうことになっている。


「いいじゃねえか。就職先が決まったんだから。」


「だって初めから侍医だなんて。周囲は東大医学部卒業のエリートばかり、しかも各専門病院で何年も経験を積んでから、宮内庁病院に招かれているのにその中でひとり臨床研修医が混じるのよ。場違いにも程があるでしょ。」


「しようが無いじゃねえか。妃殿下たちや内親王殿下たちのご指名なんだから。そもそも女性は女性にしか打ち明けられないこともあるんだろ。今まで女医が居なかったというのがおかしいんじゃねえの。」


 まあ確かにそうなのだ。男女に関わらず人間は同性にしか打ち明けられないことや異性にしか打ち明けられないことがある。特に泌尿器科が担当する分野はその傾向が強い。


 だから多くの女性たちの悩みを聞いてあげれるようになりたかったのである。それが皇族の女性の方々や皇室関連業務に就く女性たちだけになってしまうのだ。男女雇用機会均等法違反じゃないかと思うほど女性が少ないのである。


「それにお前は『男の欲望』に関しては誰よりも大家なんだかから堂々としていればいいじゃねえかよ。これからの皇室では一番必要な分野なんだから。」


 療養からご公務に復帰する宮内庁の記者会見場に現われた綾仁親王殿下が重大発言をしてくれたのだ。それは皇室典範第6条の改正に関することだった。


 現行法では皇族は正室の子供しかなれないとある。それを廃止し側室の子供も皇族にしようというのである。そもそも皇族は一夫一妻制の形を取っているが一夫一妻制でなければいけないわけではなく側室を持ってもいいことになっている。ただ側室の子供は皇族になれないだけである。


 実は6摂家による裏の皇室会議というべきものが存在した。綾仁親王殿下が誕生した際にそれぞれの摂家から側室を持たせようということになったらしい。


 だから、殿下は非公式だが八條家を除く5人の側室を持ち4人もの子供も居るということだった。だがその後、複数の継承順位の高い親王が誕生し成長したことで側室たちは闇に葬られようとしていたらしい。


 つまり殿下は側室たちのひとりを正室に迎えることも適わず子供が居ることも認められなかったのである。それを記者会見の場で発表してしまったのである。


「確かに清く正しく国民に好かれる皇室を目指した所為で皇位継承ができなくなるのは本末転倒だし、これで男系維持や女系容認の議論も意味をなさなくなってしまったわ。でも嫌なものは嫌なのよ。それに『男の欲望』に関しては好きな人だから理解し容認できるのであって、好きじゃない人は理解できても容認なんかできないわよ。」


 幼少から側室を持たされ15歳の成人する前から子作りを強要されていたことは可哀想だと思うけど、それをこれとは別である。


 それにしても、八條家から何にも打診が来ないのよね。伯父様のことだから、てっきり私を八條家の人間に仕立て上げるつもりなんだと思っていたんだけどな。


「お前、裕也のことが好きだったのか?」


「もちろんよ。好みのタイプじゃなきゃ家に上げないわよ。家の前で待っていた裕也を見た途端、逃げ出していたでしょうね。」


「それに殿下のことは好きじゃないんだな。」


「そうね。泌尿器科医として相談されるところまでは容認できるけど、皇族の一夫多妻制を推進するために協力させようなんて考えには同意できないわ。」


「よかった。殿下のお前を見る目が尋常じゃねえんだもん。」


「わかっているわよ。だから、直接お礼を言いたいと仰ったときも和重に同行をお願いしたでしょ。」


 あの視線を意味するところはわかる。若いころから女性が切れたことが無いなんて完全に裕也と同じだ。6番目の側室にしたいのか正室に迎えたいのかは分からないけど私が命を救ったことで世間は許してくれるだろう。だけど好みのタイプじゃないのよね。


「だから悩んでいるんじゃないの。宮内庁病院に勤務して侍医になるということは、殿下の近くに行くということだもの。」


「だけどお前が医師の国家試験を受けなかったら、世間はお前を許してくれないと思うぞ。」


「何を言っているのよ。もちろん国家試験は受けて合格してみせるわよ。その後、宮内庁病院に勤務するかどうか迷っているんでしょ。・・・そうだ、いい案があるの。和重に協力してほしいんだけどなぁ。」


「なんだよ突然。お前を手放せとかは絶対嫌だぞ。」


「違うわよ。反対に国家試験に合格したら、直ぐに籍を入れて欲しいの。そうすれば、殿下のお相手としては不適格よね。殿下の近くに行っても期待させることにはならないわ。」


 宮内庁病院の侍医としての業務を優先させることになるから、和重の配偶者としての責務は放棄せざるを得ないだろうけど。


「そうか? 裕也は既婚者も相手していたぞ。お前大丈夫か?」


「大丈夫よ。和重さえ浮気しなければね。最後まで拒絶してみせるわ。」


「拒絶って、お前。」


 今の皇室にも十分な権力があるから殿下がイロイロな手段を講じてくれば、宮内庁病院を辞めて逃げ出すほか無いだろう。でも最悪なのは力ずくで迫られた場合のことだ。


 皇族と侍医という立場上、ふたりっきりにならないという保証は全く無い。仮病でも使われて、他の人間に見られたくないといわれれば従うざるを得ないのだ。そこまではしないと信じるほかない。


 恐いのは和重が私のことを嫌いになり浮気したときに殿下に優しくされたら、とても拒絶できるとは思えない。


 だから、和重にはいつまでも私のことを離さないでいてほしいと暗に伝えたのだけど。解ってくれただろうか。

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「帰還勇者のための休日の過ごし方」志保が探偵物のヒロイン役です。よろしくお願いします。
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