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私の彼氏は超肉食系  作者: 蜘條ユリイ
第4章
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第4話 往生際が悪いのは誰なんだ

「本当にこのメンバーで話すのか。せめて、あきえが寝てからにしない?」


 『お菓子屋』さんがこの期に及んで情けないことを言ってくる。それ『せめて』じゃないよね。


「そうね。じゃあ、私と和重でアル事アル事全て後で聞かせておくね。でも後のフォローはしないからそれでいいならね。」


「待った。待ってよ。それは僕に死ねと・・・。」


 おいおい。いったいどんなことをしたのよ。


「そんなに酷いことをしたのね。お父さん「ダメ!」」


 私が合いの手を挟むよりも先にあきえちゃんが反応する。


「ダメよ。先走っちゃダメ。約束してくれたでしょ。あきえちゃん。」


「うん。ごめんなさい。もう口を挟まない約束する。だから、このまま聞きたいの。」


「そうね。それで『お菓子屋』さんはどうしたいの? 黙秘権行使もアリよ。」


 一応、助け舟も出しておこう。どうしても言いたくないのなら仕方が無い。


「じゃあ・・・。」


「あきえちゃんも居るこの場で『マキ』さんからは話を聞くし、聞いた話を良く調べてみるわ。だから別の部屋に行っていてもいいわ。でも一方的な話を聞くのは良くないと思うの。だから、この場で話してほしいのよ。」


 こういうときは、双方から話を聞くのが正しいと思うのだけど、どうなんだろうね。


「うん。わかったよ。・・・3年くらい前だったかな。『台地マキ』さんとドラマで共演してね。『可愛い人だな。』って思って、お付き合いを始めたんだ。」


 やっぱり、男女の関係があったのね。それなら、『お菓子屋』さんの反応も分かるけど、『マキ』さんの反応が良くわからないな。


「3年くらい前って、お菓子屋さんは奥様と別れたのがそれより少し前だよね。」


「もちろん女房とは円満離婚したんだけどね。」


「お母さんったら、酷いのよ。自分が女優を続けたいものだから、全てを放り出したの。」


 あれっ。じゃあ、あきえちゃんが1番尊敬する女優って誰なんだろう。


「あきえ。そんなことを言うものじゃない。僕は結婚するときに『女優を続けることを応援する。』と言ったんだ。でも、あきえが産まれて12年も家庭に縛り付けてしまった。」


「でも、お母さん。ずっと女優を続けていたじゃない。」


「テレビドラマを少しだけな。だけどお母さんは根っからの映画俳優なんだ。映画のオファーがあっても、あきえの行事に重なって受けられなくてイライラしている姿を見るのは辛かった。僕は映画の中の彼女に惚れ込んでいたからね。あきえの小学校卒業を機に彼女を解放することにしたんだ。」


「そんな・・・そんなこと聞いてない! 聞いてないよ。」


「言えるわけ無いじゃないか。自分たちのエゴのために子供から親を取り上げるんだぞ。」


「言ってくれたら良かったのに。」


「そんな時期だから、『台地マキ』さんと付き合っていたことは誰にも言わなかった。僕は彼女に癒しを求めたんだ。イロイロと辛くなっていたからね。でもベッドの中での彼女は雄々しく常にリードを取りたがる女性だった。映画の中の彼女と同じようにね。」


「それは違うと思うよ。彼女は小学校から大学まで女の子の中で過ごしてきたみたい。こんな容姿だからそういう役割を押し付けられただけでそれしか知らなかったんじゃないかな?」


 ここに来るまでの間に有名私立女子大の一貫校に通っていたことは聞いていたが後は想像だ。


「なんで分かるの?」


 だいたい合っているらしい。


「私は中学のときに男の人が恐い時期があったんだ。そんなときにひとりの女性に出会った。同級生だったけど、私は彼女にそういう役割を押し付けたことがあったのよ。彼女は優しく抱き締めてくれたし、私がキスを迫っても嫌がらず応えてくれた。彼女と抱き合っているだけで幸せな気分になれたの。」


 今、思えば男の人が恐かったんじゃなくあの男が恐ろしかっただけなのよね。それに気付いたときに男性恐怖症から解放されたんだけど、彼女が居なければ今でも男の人が恐かっただろうな。


「もしかして、初めて番組に来てくれたときに話してくれた女性のこと?」


「『今日もコイコイハナハナ』で話をしたわね。覚えてくれたんだ。そうあの女性よ。」


「もちろんだよ。あの話・・・本当のことだったんだね。」


「酷いわね。嘘だと思ってたの? 視聴者を惹きつけるために多少誇張はしたけど本当のことを話したのに。」


「あのときはそのままスルーしたんだけど、後で良く考えてみると君がプロデューサーを守るために話をでっち上げたんだとばかり思っていたんだ。本当に『一条ゆり』さんって、バラエティ番組苦手だよね。根っからの女優なんだろうね。」


「話を戻すとベッドで雄々しい『台地マキ』さんを見て幻滅しちゃってそのまま別れただけ? 違うよね。本当のことを話して、これじゃあ私の過去を暴露されただけじゃない。」


「ははは。そうだね。本当はあきえに聞かれたくなかったんだけど、彼女と別れた後、信頼していた友達の何人かにその話を愚痴ってしまったんだ。それが尾ひれが付いたり、誤解されて『台地マキは女好き。』に変化してしまったらしいんだ。」

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「帰還勇者のための休日の過ごし方」志保が探偵物のヒロイン役です。よろしくお願いします。
https://ncode.syosetu.com/n7440ed/
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