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私の彼氏は超肉食系  作者: 蜘條ユリイ
第3章
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第13話 彼女のストーカーは誰だ

 私は、和重を手招きする。東山さんは私を抱きしめたまま、10分以上離してくれない。男だったら無理矢理ひっぺ返すところだが、女性じゃそう言うわけにもいかない。


「どういうことか。知ってる?」


 物凄く悪い予感しかしないんだけど。


「俺も噂でしか、知らないんだが。あの男の前に彼女がご執心だったのは『佐藤ひかる』という歌手で彼女から逃げるためにMotyの『北村多久実』と結婚したという話だ。」


 女同士だから大丈夫というわけにいかないのか。それは困ったな。


「それって・・・執着心の対象が私に移ったから、あの男と別れた。ということよね。そんなに酷いの?」


「ああ。噂では15分に1回のペースで電話が掛かってきたらしいぞ。それで一星テレビでは本番中は携帯電話を預けることにして、社長は常に何処かの番組で指揮を執っていたそうだ。」


 私の勘は当たったというわけか。まあ、ひとりくらいストーカーが増えたからといってどうなるわけでもないんだけど。しかし15分に1回の電話はキツイな。思わずあの男に同情してしまった。


「もしかして、私が一星テレビの株を受け取ってしまったら拙いんじゃ?」


 15分に1回は無いにしてもイロイロと理由を作って連絡が入る気がする。


「だがお前が彼女を突き離したら、執着心の対象が戻って、あの男が返り咲くかもしないぞ。」


 それもイヤだわ。じゃあ、黙って受け取るしかないのか。


「お父さん。『西九条れいな』さんが一星テレビの株主になってくださるというのは本当でしょうか?」


 いつの間にか、彼女が顔を上げて西海会長に質問をぶつけている。でも、私の背中に回った腕の力は弱まっていない。本当に泣いていたのか?


「ああ。今、それを話し合っていたのじゃよ。彼女に慰謝料として2パーセントを渡せは、オーナー一族からの独立性も保てるし、和重くんや彼女の承認無くして社長を決められないからのう。」


「お父さん。ナイスです。それで行きましょう。私も経営に携わります。取締役の末席で構わないので役職をください。」


 勝手に話が進んでいく。


「おお。やる気になってくれたか。これでわしも安心して引退できる。」


 西海会長の笑顔を壊してまで拒否する必要があるのか・・・。


「あの・・・。」


 待って待って。私にも考える時間を頂戴。


「『西九条れいな』さん・・・よろしくお願いします。大丈夫、貴女が立派な医者になるまでは我慢する。それだけは約束する。」


 何を我慢するというのだろう。相手は女性だが以前ご執心だったのは女性だったというし、私相手に欲望を我慢するというのであればあまり良くない。私が医者になった途端、暴走しそうで恐いわね。


 その歌手だった女性はテレビ局のTOPの父に持つことでテレビへの露出度を上げたり便宜を図ってもらっていたのだろう。あの男はテレビ局の社長という地位を持つことであらゆる番組に対して影響力を持てたという弱みが彼女に対してあった。


 だけど私には彼女に弱みなど何も無い。これ以上テレビに出たくないし、ましてやテレビ局の経営など絶対にしたくない。だから、こちらが主導権を取るべきね。さてどうしようか。


「東山さん、そこまで我慢しなくても大丈夫。貴女は私の友達よ。そうね1ヶ月に1回30分だけ会う権利をあげるね。その30分はどういう風に使ってもいいわ。電話を掛けてきてもいいし、何処かで会ってもいい。」


 まあ関係を迫られたからって、女性同士なんだから子供ができるわけじゃないから、大丈夫よね。かなり上から目線の提案だが、これくらい力関係の差をはっきりしておかないと付け込まれたら最後よね。


「『西九条れいな』さんが私の友達。」


「そうよ。生涯の友達よ。友達の握手をしましょう。」


 ようやく彼女が腕を解いてくれて、握手をしてくれた。


     *


「『れいな』ちゃん、全ての破片は拾いきれていないと思うけど、スマートフォンの残骸。拾ってきたわよ。」


 会議室で話し合いの間に『中田』さんとカオリお姉さまに旧社屋の屋上に落ちたスマートフォンを取りにいってもらったのである。


「でも、こんなものどうするんだい? どこに持っていっても修理できないと思うけど。」


 『中田』さんも不思議顔だ。それもそのはず、カオリお姉さまに頂いた袋の中身は、左上の角から落ちたらしく液晶が割れるどころか、スマートフォン自体が完全に折れ曲がってしまっている。


「そうね。こんなになってしまっては、どうしようもないわね。」


 そう言いながらも袋から本体を慎重に取り出す。


「・・・何をしているんだい?」


 そして、半分外れかけていたリチウムイオン電池を慎重に取り外す。


「・・・良しあった。これよこれ。買い換えるにしてもSIMと外部メモリが無いと話にならないの。」


 水没したわけじゃなければ、スマートフォンの奥に仕舞われているSIMや外部メモリまで破壊されるはずもない。これで明日何処かでSIMフリーのスマートフォンを調達できれば日常生活に戻れるはずだわ。


 『中田』さんには内緒だが、今日撮影した動画も外部メモリに保管されている。例え新しいスマートフォンでデータが取り出せなくなっていても、あの貴重な泣き顔は外部メモリのメーカーに送ってでも取り出しておきたいのよね。

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「帰還勇者のための休日の過ごし方」志保が探偵物のヒロイン役です。よろしくお願いします。
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