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私の彼氏は超肉食系  作者: 蜘條ユリイ
第3章
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第11話 何故男はスマホを壊したのか

「捕まえた!」


 暫くするとカオリお姉さまの声が廊下に響き渡った。流石は現役SP。


 西海会長と『中田』さんと一緒に恐る恐る近付いていくとカオリお姉さまに床に押さえつけられている元社長の姿があった。


「へっ。あのスマートフォンさえなければ。」


「ゴメン。貴女のスマートフォン。窓から外に放り投げられてしまったの。」


 あちゃー。


 ここって地上12階だよね。粉々だ。


「大変、あんなものでも地上の人間にぶつかったら大怪我を負ってしまうじゃない。なんてことをするのよ。」


「そのことだったら、大丈夫だ。その窓の外は地上3階建ての旧社屋の屋根だわい。」


 西海会長が教えてくれる。


「あー、よかった。」


     *


 最上階の会議室に移動した。ここは普段、取締役会議が行なわれる場所らしい。


「何故、こんなことをしたんだ。」


「・・・・・・・・・・・・・・・・。」


「黙秘か。『西九条』さん、何か心当たりあるかね。」


 スマートフォンの中で、元社長に関連するものと言えば、アレしかないわ。でもよくわからないのよね。


「ドラマ出演を依頼されたときに和重との関係をバラすと脅されたんです。」


 和重が父親の跡を継いだのなら、言っても和重の不利にはならないだろう。西海会長から他の一族たちに伝わったとしても私がさっさと身を引けばいいだけよね。


「何、本当か。」「嘘だ!」


 元社長と西海会長の言葉が重なる。


「ええ本当です。そのときは脅迫されたことをSNSに投稿する振りをして凌いだのですが、謝罪して頂いた動画を撮ったものがあのスマートフォンに入っていたのです。」


「なんということだ。空き巣どころじゃなかったわけだ。「嘘だ。何も証拠が無い。」うるさい黙っとれ。」


 またしても元社長と西海会長の言葉が重なる。控え室の件は誰か別の人物にやらせた可能性も残っているが、逆にその人物に弱味を握られてしまうことを考えると無いと思うんだけど。


「そうだ。和重、スマートフォンを貸してくれる?」


「構わないが、何をするんだ?」


「動画を見てもらおうと思って。「何ぃぃぃぃ!」本当にうるさいわね。もうすぐ辞めさせられる平取締役さん。」


 取締役を解任する場合は取締役会を開く必要があるそうだ。元社長とも呼んでやらない。


 私は和重のスマートフォンに入れてあったアプリを使って、自宅のネットワークストレージサーバーに保存されている動画をダウンロードする。


 最近はクラウドサービスに動画を預けることもできるそうだが、総容量が少なく維持費が掛かる上にアップロードやダウンロードする際にもパケット料以外にも料金が発生するので使っていない。


 一応理系女子の端くれとして、ネットワークストレージサーバーくらい扱えなくては困るだろうと自宅に導入してあるのだ。まあ、導入と言っても3万円くらいの製品を買ってきてネットワークに接続して、和重と私のスマートフォンにアプリをインストールしただけだが。


 そのアプリはスマートフォンの中の動画や写真などをネットワークストレージサーバーにアップロードしてくれる。手動でもできるが自宅でWifiに接続した際に自動でアップロードするようにもしてある。


「そんなことができるんだ。」


 和重にもこういうことができると伝えたのだが、文系だからなのか理解したくなかったのか覚えていないみたいね。和重がどんな動画や写真を撮っているか確認することもできるのだが、それは内緒である。


「ゴメンね。和重、今月のパケット料高そうよ。」


「いや。それは構わないが。」


「ダウンロードできたわ。これがその動画よ。」


 それをそのまま、西海会長に見せる。動画の中では元社長が土下座して脅迫した事実を認めた上で謝罪している。


「これは・・・なるほど、こんな動画があっては言い逃れできんな。これを取り返したかったわけか。」


「でも、社長を解任後スマートフォンを奪った意味がわかりません。」


「それは・・・わしの死期が近いからだな。肺癌のステージ4でもう医者にも匙を投げられておる。娘が全てを相続すれば返り咲けると思おておるのだろう。」


「そんなっ。」


 それは酷い。死に向かう人間になんていうことするのよ。


「和重くん。やはり、わしが持っている株式をオーナーたるお主に渡したほうがいいのじゃないかのう。今まで娘可愛さにズルズルきてしもうたのが拙かったようだ。」


「しかし、我々は経営に直接タッチしないのが原則で・・・グループ全体の方針を決めたり、今回のような経営危機があった時だけ資金貸付と人材交流させるためにあるのであってですね。」


「それはわかっているが、このままでは『西九条』さんに告訴という泥を被って貰うことになってしまうではないか。」


「それは覚悟しています。」


 今度こそ、私に女優としてオファーをしようという人間が居なくなるだろう。そうなれば医者だけを目指せる。元社長の返り咲きを阻止できるのであれば一石二鳥というものよね。

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「帰還勇者のための休日の過ごし方」志保が探偵物のヒロイン役です。よろしくお願いします。
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