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私の彼氏は超肉食系  作者: 蜘條ユリイ
第3章
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第8話 彼女がイジメ役のリーダーだ

「ながら・・とら・・ないでよー。」


「あっ。バレた?」


 『中田』さんがいつまでも泣き止まないから、再び動画撮影を始める。リアルで泣いているシーンなんて貴重だよね。


「消す!!」


 ようやく泣き止んだ『中田』さんとスマートフォンの奪い合いになってしまった。ピンヒールを履いている分だけ、こちらが有利だ。飛びついて取り上げようとしてきたので、さっと腕だけをかわす。


「あっ。」


 『中田』さんの腕が宙を舞ってそのまま私に抱きついてくる。


「今度はラッキースケベ? そんなに飢えていたのね。「違う・・ぷぷぷ。」」


 『中田』さんの顔が丁度、私の胸の辺りにきていた。そのまま抱き締めてあげる。好きなだけ堪能しなさい。周囲から見ればバカっぷるだろうが、もう既に芸能界では公認に仲なので何も言われないし、週刊誌の記者もいないはずである。


 当然、スマートフォンの撮影は続いている。いったいどんなニヤけた顔が撮れるか楽しみ。


「十分堪能したかしら、そういうわけでこの動画は私のもの。わかったかな?」


「うっ。・・・はぁー・・・分かりましたよ。」


 ふふふ。泣き顔は編集して、あきえちゃんへの結婚式のプレゼントにしようっと。


 ニヤついているであろう動画は、私の秘密のコレクション入りに決定。あきえちゃんには渡せないものね。


「ああ、もう本番だわ。このスマートフォンは預かっておいてね。」


 電源を切って、『中田』さんに手渡す。ロック解除は7文字の文字列だから簡単よ。1時間あれば解けるね。きっと。


     *


 『春のスター感謝大会』はクイズ形式で番組対抗で賞金300万円を争うみたい。1番組3人出場しているから、一人当たり100万円の計算だ。この番組のギャラがドラマ2本分の100万円からすると少ないような気もする。


 目立ちたくなかったから、優勝なんて狙わず適当にやろうと思ったのに。なんでこうなるかな。


 タイトルコールの後、出場メンバーと番組紹介で30分が経過していた。


 初めのクイズは一般問題らしいのだが、手前の取り易い位置の問題は難しく、奥の問題は簡単らしいのだが前屈みになって取りに行かなくてはいけないらしい。しかも取りに行くのは女性タレントの役目らしい。道理でこの衣装が指定されたはずだ。


 視線を感じてそちらのほうに目を向けると・・・いたいた一星テレビの社長がニヤついた顔を向けてきた。どうやら土下座させた報復らしい。やることがセコい。


 まあ、この程度なら問題無い。適当に真ん中辺りの問題用紙を念のため胸元を押さえて取ってくる。間違えようにも間違えられない高校生くらいの学力があれば答えられる問題ばかりだった。ついこの間、大学入試を突破した私に取っては楽勝すぎるだろう。


 あっという間に得点を重ねていく私を見て苛立ったのか、司会者が途中でルールまで変えてきた。奥まで行き、取ってきた問題は4倍の得点にしたのだ。リハーサルの説明には無かったから、勝手に変えたのは確実だ。どうぞお好きなように。


 それでもドンドン点差が開いていく。奥から持ち帰った小学生でも解ける問題をワザとなのか本当なのか、皆間違えるのである。考える仕草がワザとらしくないということはバカキャラじゃなく本当なのかもしれない。


     *


「ズルい! 何かズルしてるでしょ。」


 次の司会は『中田』さんの番だ。


 『中田』さんが司会でクイズを出した際に私が正解するとタレントのひとりが言い出す。どうしても優勝させない気らしい。スタッフが笑っているところを見ると仕込みらしい。


 そのタレントは私をイジメようとしたタレントのひとりだ。あの時、真ん中に立っていたから、あのグループのリーダーなのかもしれない。


 真面目にやるのがバカバカしくなった私はその後の答えを『わかりません。』で通すのだが、私がそう答える度に『中田』さんの表情が厳しくなっていく。一星テレビは『中田』さんを怒らして大丈夫なのだろうか。


 CMの間にスタッフが飛んできて、なにやら言っていたが自前の無表情で押し通した。こんなとき無表情は楽だ。


 もちろん、その後も『わかりません。』で押し通す。『中田』さんの表情が変わる度、真っ青になっていくスタッフの表情が面白い。こんなところかな、十分にお灸になったかな。


 次のCMに入る前の正解を答える。と、スタッフの表情が和んだ。やらなきゃいいのに。


 その後は順調に回答を重ねていく。計算上、私の所属する番組チームが最下位から2位に上がったところで、『中田』さんの司会分は終わりとなった。最後は和やかな表情だったが心の奥底は知らない。もちろんフォローする気などサラサラ無い。


     *


 次の20分は休憩タイム。何かを食べながら談笑しなければならないらしい。今日のメニューが番組で伝えられるがどれもこれも美味しくなさそうだ。それでも美味しそうに食べなきゃいけないなんて、どんなバツゲームなんだか。


 仕方が無いので手近にあったお寿司を皿に盛り付けると『中田』さんに近寄っていく。


「はい。あーん。」


 私とのバカっぷるの振りと不味そうなお寿司を美味しそうに食べなきゃいけないという二重の演技を強要しているのだが、結構嬉しそうに食べてくれる。


「さっきの娘に気をつけて。あの娘は例の監督が演出家のときに女優デビューしたんだ。監督が逮捕されて恨んでいるかもしれない。」

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「帰還勇者のための休日の過ごし方」志保が探偵物のヒロイン役です。よろしくお願いします。
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