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私の彼氏は超肉食系  作者: 蜘條ユリイ
第3章
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第7話 彼は何故泣き止まないのか

 そんなことを真面目な顔をして言われるとは思わなかった。


「一瞬、口説かれてるのかな。って思っちゃったじゃない。あきえちゃんに言いつけちゃうぞ。」


 照れ隠しで呟いてみる。好きなアイドルにここまで言われてぐらつかないほど強靭な精神はしていないのである。和重は違うと言いそうだが。


「僕は真面目に言ってるつもりなんだ・・・って何をしているんだ?」


「別に動画に撮って、あきえちゃんに見せてあげようなんて思っていないわよ。」


「わー! 待って、待って! ダメ。ダメだよ。冗談だよね?」


「でも、あきえちゃんに頼まれているんだよね。『中田』さんが格好いいところを沢山撮ってきてって。このままじゃ格好悪いところになりそうだけど。」


 『中田』さんがあまりにも情けない顔でお願いしてくる。あきえちゃんに頼まれているのは本当である。毎回、あきえちゃんに会いに来るタイミングだけだと怪しすぎるからカモフラージュのために『中田』さんがノリノリでアッシーをやってくれるので、あきえちゃんよりも会う回数が多いからだ。


 実は『お菓子屋』さんもコッソリ、『中田』さんを撮っているらしい。あちらは主に情けない姿だったりする。


     *


 『無表情な女』シリーズの第2作目は『無表情なキャバ嬢』というタイトルで既に撮影に入っている。キャストもほとんど同じで、今度は私の微笑でドモるところをまんま使う気らしい。悪趣味よね。


 その所為か衣装は、肩ヒモの無いハイレグ水着のような感じで胸アテ部分がブカブカなのだ。当然、下着も付けられない。撮影の際にはニップレスも着用厳禁で見えそうなカットの場合は画像処理で誤魔化すそうだ。


 エロ爺役の俳優さんが覗き込むシーンまであるらしい。恥ずかしいといえば恥ずかしいが赤面も出来ない。なにせ『無表情な女』だかららしい。むしろエロ爺役の俳優さんが気の毒だ。万が一、チラリと見えて『男の性』で欲望がもたげてもエロ爺の役を続行しなければならないからね。


「激写! さっきから全然カッコ良く撮れないんですけど『中田』さん?」


 さっきから、隣に居る『中田』さんがチラ見してきて鬱陶しい。鼻の下が伸びていてもイケメンはイケメンなのが憎たらしい。


「激写!」


 スマートフォンで動画を撮りながら、ブカブカの胸アテを開いて見せる。


「ア―――。・・・なんだ。ニップレスを付けてるのか。がっかり。」


 撮影の時は厳禁と言われているが、この特番でもダメだとは言われていない。動画をチェックするとあんな一瞬なのに喜怒哀楽が移り変わっていって面白かった。面白動画でも、あきえちゃんは喜んでくれるだろう。


「付けているに決まってるじゃない。特番なのよ。エロハプニングくらい期待してるでしょうよ。」


「でも、いつも付けてないよね。」


「何で知ってるのよ! さてはチャッカリ見ていたわね。」


 『中田』さんにアッシーをしてもらうときはいつ週刊誌の記者に見られてもいいように露出度が高めなのよね。特にブラのサイズは特殊だから、可愛いデザインを優先すると少し大きいものを買わざるを得ない。そのときに浮いて見えてしまったようだ。


「いや・・・あの・・・。」


「別にいいわよ。見られて減るもんじゃないし。でも、あきえちゃんには悟られないでね。」


「えっ、いいの?」


「『中田』さんはあと何年間か我慢しなきゃならないんでしょ。まいっかで余所の女に手を出したことが分かったら一発終了だもの。チラリと見えたくらいじゃ、大した欲望の解消にはならなくて悪いけど。」


 アイドルだからこそ、何処かで処理してもらうわけにもいかない。何処かで処理してもらっていることがバレたら、アイドル生命に関わってくるのだ。


「詳しいんだね。医大生だから?」


 流石に裕也の件を漏らすわけにはいかないから適当にながしておく。


「まあね。和重とあきえちゃんの許可さえもらえば手伝ってあげてもいいのよ。本当に我慢の限界を超えると思ったら、絶対に相談してね。万が一、余所の女になんか手を出したら、あきえちゃんが許しても私が許さないんだからね。分かってる?」


 これまでお膳立てしてあげたことを全てパーにされたら、泣くに泣けない。そんなことになるくらいだったら、どれだけ時間が掛かっても、あきえちゃんを説得してみせる。


「・・・・何・・そんなことあるわけないじゃん・・・。・・・・なんだよ・・・それ・・・。そんなことまでしてもらったら・・・僕・・・どうしたら・・・いいんだよ。今だって・・・碌に・・・返せてないのに・・・。」


 しまった。大の大人を泣かせてしまった。どうやら、彼が司会を務める番組のレギュラーを保留にしていることが負い目になっているようだ。気にしなくていいのに。


「大丈夫よ。返して貰ってる。私に取って、あきえちゃんの笑顔こそがご褒美なのよ。貴方は一生、彼女を大切にして笑顔にしてあげればいいのよ。わかった?」


 ぽろぽろと涙を零す。彼の両手をそれぞれ握り締めてあげる。彼はこれまでいくら辛くても誰にも相談できなかったのだ。これは結構切羽詰っていると思ったほうがいいみたい。何処かのタイミングで『お菓子屋』さんと、あきえちゃんに相談したほうがいいかもしれない。

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「帰還勇者のための休日の過ごし方」志保が探偵物のヒロイン役です。よろしくお願いします。
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