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私の彼氏は超肉食系  作者: 蜘條ユリイ
第2章
30/66

エピローグ

お読み頂きましてありがとうございます。


この章のエピローグとなります。


 私が天才?







 そんなバカな。私があの男と同じ。






 和重が言った血のなせる業?


 私があれだけやりたくなかった演技を誰にも教えられずにやっていたという。









 そんなの知らない。そんな私はいらない。あの男と同じ私は存在してはいけない。




 それはこの世に存在してはいけないものだ。


 だがそれが認められてしまった。





 それも超一流と呼ばれている女優にである。


 これは滅ぶべきものだ。これを滅ぼすにはどうしたらいいのか。






 簡単だ。私が死ねばいいのだ。死ね。死ね。死ね。





 シネシネシネ死ね。



     *


「おおっと。間に合った。」


 私は死んだのでは無かったのか?


 和重の声が聞こえる。これは和重の指だ。和重の指が私の口に押し入ってくる。



 横から和重の唇が重なり、さらに私を抱き締めてくれる。




「今、彼女は何をしたの?」


 遠くで優しかったお母さんの声がする気がする。


「見てわかりませんか? 彼女はたった今自殺を図ろうとしたのですよ。貴女の言葉に追い込まれてね。」


「そんな・・・だって・・・。」


「ええ分かっています。賞賛の声だったのでしょう。その言葉は。でも、彼女には怨嗟の声に聞こえるのですよ。」


 和重の声が優しく響く。


「貴女にもトラウマや後悔することがあるように、彼女にもトラウマや後悔することがあったのですよ。それだけのことです。もうこれ以上彼女を追い詰めないであげてください。」


「和重さん貴方はそれが何かを知っているのね。しかも私にも明かせないことなのね。」


「そうです。貴女知ってはいけない。彼女にどうしても女優の仕事をやらせたいのでしたら、彼女が立派な医師になるまで待ってください。それまでは貴女の手で彼女を守ってあげてください。貴女にはその力があるはずだ。」


「そうね。1年くらいだったら私の権限で彼女に対するオファーを跳ね除けることもできるわだけどそれ以上は・・・。」


「そうですか。じゃあ1年後に夏季休暇を利用して映画を作ることにしましょう。それなら1年先延ばしにできるでしょう。」


「話は終わりましたか?」


「遠藤先生。貴方が素直に喋らないからですよ。もう少しで彼女を失うところだった。」


 遠藤先生の声を聞くと何故か安心する。


「すみませんね。私の・・患者の秘密は喋れないのですよ。それに常に彼女の行動を把握できる立場になったと思ったら、和重君が邪魔をしていたとは・・・。」


「遠藤先生の顔を見ること自体が精神安定剤代わりになっているとは思わないじゃないですか。それは暗示ですか?」


「暗示とか洗脳とかを行なうのは薬を使っても無理なんですよ。自ら精神科の医者に掛かること自体本人が安定を求めている。彼女みたいに顔を見るだけで精神が安定することも多いんだよ。」


「自己暗示ですか?」


「そうだね。彼女の場合、目の前で母親が死んだことが引き金に心のバランスを崩した。」


「「先生!」」


「大丈夫だ。今の彼女は自己防衛本能が働いているから、聞いても記憶に残らない。いや記憶はされているのだが隔離される。克服したときに必要なら思い出せる。」


「私が彼女に言ったことは隔離される。ということ?」


「そうです。話を合わせてあげてください。彼女の場合、『自分は母親のような尽くす女じゃない』『自分は父親のような俳優としての才能は無い』と自己暗示を掛けることでバランスを取っている。」


「なるほど。だから1年も裕也に尽くしてくれたのにあっさり手切れ金を受け取ったのね。そして、『私が天才だ。』と言った言葉が引き金になった。ということなのね。どうすれば克服できるの?」


「それは分からない。元凶である父親が傍から居なくなればと思い、自分の目標を持ちそれに邁進するように仕向けてみた。あの目標なら10年は持つはずだったんだ。」


「俺が邪魔をしたんだな。」「私もよ。」


「遠藤先生。何故貴方はそこまで・・・只の医者と患者の関係じゃないですよね。」


「ああ、彼女にね。ひとめ惚れだったよ。父親に対する怒りで燃えていた彼女は凛として綺麗だった。」


「ええ、分かります。が、過去形ですか。今の彼女も父親のことを語るときは人が変わったように聡明になる。」


「あんなものじゃなかった。それを私が壊してしまったんだ。彼女の母親は決して弱い人じゃ無かった。特に彼女の父親に対しては強気でいることこそ精神の安定を図る上で必要なことだった。だから会わせた。だが、父親と母親の会話を聞いてしまった彼女が母親を詰ったことが死の引き金になってしまったんだ。」


「そんな・・・。」


「和重君。私は卑怯者なのだよ。彼女に気が遠くなるような目標を持つように誘導し、彼女から私に頼らせるように画策した。私は彼女を見誤ったんだ彼女がそんなことで心が折れるような人間じゃないということをね。まさか裕也君に取られるとは思わなかったが。あのタイプが一番嫌いだと思ったんだかな。」


「そうですね。よく1年も続きましたよね。」


「だが和重君。次は積極的にいかせてもらうよ。ここに君の後釜を虎視眈々と狙っている男がいることを教えておく。私は医者だ。彼女を何処までも守りきれる。」







     *



 まただ。またベッドに居る。


 最近、大学で授業を受けているか。こうして和重と寝ているか。どちらかだ。


 和重は喫茶店の店長を別の人間にやらせ、他のことをしているらしいのだが教えてくれない。余程ストレスらしく、夜は欲望を抑えきれなくなっているようである。下手をすると裕也よりも欲望が強いかもしれない。あんな浮気癖は無いようだが気を付けなくては・・・。


 初主演の映画は興行収入を順調に伸ばしているらしい。『一条ゆり』のデビュー作のブルーレイも順調に伸びていることので、新たに『一条ゆり』のファンになったという人間が多いのだろう。


 聞いた話では出演料1億円を超えるオファーも届いているらしい。バカな話だ。私は『一条ゆり』のコピーしかできないのだ。1時間ドラマ程度ならまだしも映画を撮影するのであれば『一条ゆり』主演作の表情だけでは足らない。


 そこはうまくプロデューサーが断ってくれているらしい。来年の夏に第2作目を撮るという条件付きだったが、そのくらいならなんとかなりそうである。次回は初めから監督『一条ゆり』の作品になるのだから、撮影期間が延びることも無いに違いない。

第2章いかがでしたでしょうか。


もちろんまだまだ続きます。


どんなハッピーエンドが待ちうけているのやら、引き続きご愛読のほど、よろしくお願い致します。

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「帰還勇者のための休日の過ごし方」志保が探偵物のヒロイン役です。よろしくお願いします。
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