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私の彼氏は超肉食系  作者: 蜘條ユリイ
第2章
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第9話 脚本家のセンセーは確信犯

「これなんか。可愛いでしょ。」


 ここはラコールのショップだ。私のブラはアンダーのサイズが少し特殊なのでメーカー直販のショップでしか手に入りにくいのである。


「4分の3カップかよ。ハーフカップのほうが好きだな俺は。それよか、恥ずかしくねえのかよ。下着姿を見られて。」


 何言ってんだかこの男、下着を付け終わった途端、試着ルームに乱入してきておいて。それに恥ずかしいに決まってる。単に表情に出ないだけよ。


「医者なんて職業は誰の前でも手術着に着替えなきゃいけないんだから、下着姿くらいどうってことないですよ。それに女優なんて大勢の男性スタッフの前で裸で演技しなきゃいけないときもあるんですよ。」


 女優『一条ゆり』も映画第5作目でそんなシーンを撮ったと言っていた。まあ私は第1作目でポシャる予定だから関係無いけど。


 それにしてもいつまでジロジロ見てる気なんだこの男。もうさっさと出て行ってよ。


「これだから女医と女優ってヤツは。お前の場合兼業か。そりゃ羞恥心も無くなるわな。」


「勝手に人の羞恥心を無くさないでください。それよりも、着替えるんで出て行ってください。」


「えー。俺に外させてくんねえの。」


 何考えているんだこの男。ビッチな女優な振りをしてても私は和重ひとすじよ。


「当たり前でしょ。彼氏でもないのにさせるわけが無いでしょ。ほら、出て行く出て行く。」


 何点か試着したあと、そのうち1点を購入して店から腕を組んで出て行く。


 カシャ、カシャカシャカシャカシャ。


 ひとりの男性がこちらにカメラを向け、写真を撮って逃げていく。


 ち、まただ。


 最近、多いな。週刊誌の記者さんたち。


 『お菓子屋』さんに誤解させてもいけないと思ったから、下着も洋服もねだらなかったんだけど正解だったみたい。流石に下着ショップから出てきたところなんて撮られたら、あきえちゃんにも誤解されるだろうから遠慮していたのよね。


「おい。なんだよ。アレ。」


「何って、私に張り付いている記者たちだよ。今週の週刊誌には載っちゃうね。『恋多き女優。今度はベテラン脚本家か?』って感じかな。」


「マジか。お前、新人女優だろ。なんで記者が張り付いているだよ。・・・ヤベー。」


 この男、業界人のくせに週刊誌も読まないのか?


 先々週は『お菓子屋十万石に新恋人の新人女優N』で私に目線が入っていたが『お菓子屋』さんのマンションから車で出た瞬間の写真が掲載されていた。

 仮名で目線入りなのに、具体的に「お菓子屋芸能ステーション」のレギュラーコメンテーターとまで書いてあってバレバレじゃんと笑ってしまった。


 先週は『元Moty中田。結婚秒読み』。皆で食べようと思って5人前分のすき焼きセットを高級スーパーで買っているところの写真が掲載されていたのよね。なんでスーパーで買い物をしていただけで結婚に結びつけるんだろ。訳わかんないよね。

 私と和重とあきえちゃんと『中田』さんと『お菓子屋』さんで食べたんだけど高級国産牛肉5人分では足らなくなって冷凍庫にあったしゃぶしゃぶ用のお肉まで食べられてしまったのよね。すき焼きセットは『中田』さん持ちだからいいけど、あれは私の生活費なのに。


「何でヤバイんです? 脚本家だなんて誰も知らないんでしょ。貴方の顔には目線が入るだろうし、誰にも分からないでしょ。」


 芸能事務所の社長は完全に恋多き女のセンで売り出す気になっているから、抗議もしていないらしい。プロデューサーは相変わらず渋い顔してるけど・・・。


「だって女房には言ってあるんだよ。あーあ、なんていい訳しよ。」


 奥さん?


 私は男の左手に視線を移す。


「奥さんが居たの? 結婚指輪付けてないよね。」


「あんなん付けてたら女口説けないだろ。それに女房が元看護師なんだよ。病院で調達するとすぐに足がついちまう。だから、コッチの業界の新人を調達していたってのに。」


 うわー。確信犯だよ。自業自得だよね。

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「帰還勇者のための休日の過ごし方」志保が探偵物のヒロイン役です。よろしくお願いします。
https://ncode.syosetu.com/n7440ed/
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