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私の彼氏は超肉食系  作者: 蜘條ユリイ
第2章
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第4話 大嫌い大嫌い大嫌い大好き

「お邪魔します。」


 挨拶をしても返事は無い。住み込みの家政婦さんとかは居ないようだ。まあ、居たらインターフォンに出てくるよね。後ろを振り返り、扉のところで入ろうか悩んでいる家主に向かって手首で入るように指示する。


 12畳はあると思われる部屋には年頃の少女らしい薄いピンク色で統一された家具やベッドカバー、机にソファなどがゆったりと配置されていた。


「お姉様はここで待っていて。」


 彼女は私をソファに案内すると部屋を出て行こうとする。お茶か何かを運んでこようというのであろう。


「いいの。何もいらないわ。話を聞くのが先よ。」


「そう・・・。なっ。」


 彼女は向かいのソファに行こうとするところを捕まえて私の隣に座らせる。


「ほら。怒ってもいいのよ。悔しいんでしょ。殴る? 叩く? 1発くらいなら、受けてあげるわ。」


 私は彼女の方に向いてそのまま目を閉じる。


「な、なんで・・・。」


 返ってきた答えは暴力じゃなかった。彼女はもたれ掛かるように私に体重を預けてきた。私はそのまま抱き締めると彼女は静かに泣き始めたのだった。


     *


「気が済んだかしら。ごめんね。何も知らなくて・・・。」


 彼女が泣き止んだのを見計らい声をかける。


「そんな、お姉様は何も悪くない。私が勝手にイライラモヤモヤして、それで・・・。」


 私の予想通り、彼女は『中田』さんが好きなのに週刊誌の記者たちに邪魔をされて、なかなか会えないことで苛立ちを感じていたようだ。


「うん。そうだね。辛かったね。悲しかったね。ヤダだったんだよね。彼が私に絡むのが・・・大丈夫よ。私が彼のファンだったことなんて遠い昔のことなんだから・・・。」


 まあファンといえばファンというだけ、そこまで熱烈なファンというわけじゃない。


「そうなんですか?」


「そうよ。私は彼らがブレイクする前から好きだったんだけど、ある出来事があって幻滅しちゃってね。これがその時の写真よ。ほら、ここでグループ全員が正座させられているでしょ。『中田』さんなんて・・・滅茶苦茶、情けない顔してるでしょ。」


 スマートフォンに入れていった写真は秘蔵のもので、彼らが出席した結婚式に私も居合わせたのだ。写真撮影は禁止されていたのだが、こっそり何枚かの写真を撮らせて頂いた。


 その1枚に『中田』さんの情けない顔が映っている。これは彼らが余興で歌った際に備品を壊してしまい司会のお姉さんに正座させられているシーン。30分以上も放置されたせいか。皆、泣きが入っている。


「ほんとうだ。これ欲しいです。」


「本当に好きなんだね。」


 その場で赤外線通信を使って写真を渡してあげる。


「だから、そんなにファンじゃないの。今回のことだって、ただイジメられて泣かされていただけだから。ふふふ、大したことじゃないでしょ。」


 本当は今でも好きなのだが、言わないほうがいいだろう。あのときの自分は心底動揺して、全然大丈夫じゃなかったんだけどね。


「酷い。酷いです。お姉様をイジメるなんて、お父さんが許せません。」


「それはいいんじゃないかな。『お菓子屋」さんは幾らでも受け止めてくれるよ。ね。ソコで盗み聞きしているお父さん?」


「なんだ。知っていたのか。そうだよ、殴っても蹴ってもサンドバッグにしても構わないから、家に入れてくれると嬉しいな。」


 そこで扉が開き、お菓子屋さんがお盆にお菓子とお茶を載せて現れた。そのまま、お盆を受け取り、テーブルの上に載せると『お菓子屋』さんを羽交い絞めにする。


「なっ。当たってる当たってる、背中にその胸が当たってるって。」


「ほら、スケベなお父さんを好きなだけ成敗して頂戴。」


「お父さんなんて大嫌い! 大嫌い! 大嫌い! だいっきらい!!! でも、大好き。ごめんね。」


     *


「やっぱり、邪魔者は週刊誌の記者? 『お菓子屋』さんは邪魔してないよね?」


 『大嫌い』攻撃が効いたのか暫く床で悶えていた『お菓子屋』さんに聞く。


「まあね。未成年だから少しでも手を出せばスキャンダルだからな。あの頃は、記者たちは手ぐすね引いて待っていた。もちろん、僕も一線を越えさせるつもりは毛頭なかったけど・・・。」


「何か会う手段があれば、ここまで酷くはならないと思うけど、こればっかりはね。・・・ああ、もうこんな時間なのね。タクシーを呼んで貰えるかしら。ごめんね、ずっと愚痴を聞いてあげられれば良かったのだけど。」


 もう既に夜中の12時を回っていた。とにかく、明日の課外授業は欠席できない。少しでも寝ておかなくちゃ・・・。


「電話・・・メール・・・してもいいですか?」


「うん。いいよ。じゃんじゃんしてきて、でも返事は遅くなるかもしれないから覚悟しておいてね。」


 その場でスマートフォンの携帯番号とメールアドレスを交換する。


「お忙しいんですね。」


「『西九条れいな』さんは医大生なんだって、明日も課外授業があるのにわざわざ足を運んで貰ったんだ。礼を言いなさい。」


「『れいな』お姉様と呼んでもいいですか? 私のことは、あきえと呼んでください。今日は本当にありがとうございました。また、時間があれば遊びにきてくださいね。」


「あきえちゃん。また寄らせてもらうね。」


「ほら、僕が送っていくよ。場所は何処?」


     *


 この場所からなら、近いのでナビゲートするつもりで助手席に乗り込む。


 地下駐車場から出るとき、突然、目の前が真っ白になる。フラッシュだ。


「しまった!」


「な・・なに?」


 そのまま近くのコンビニに駐車する。


「写真週刊誌に撮られたみたいだ。また、あきえに怒られる。」


「そうですね。まあ存分に怒られてください。」


「冷たいな。それよりも大丈夫かな。君のプロデューサー。」


「ええまあ。清純派女優として売り出すのは諦めたみたいですが、芸能事務所の社長が何というか・・・。」


 バッシングされて、大々的にタレントとして売り出すことも諦めてくれるといいのだけど・・・。あの人のことだ、『お菓子屋』さんに無理難題を吹っ掛けて更に多くの仕事を取ろうとするような気がする。


「後で謝りに行こう。それよりも、僕と写真週刊誌に載ったりして拙く無いのかい。彼氏とかさ。」


 うっ。それは拙いかもしれない。和重怒るかな。それとも良かった良かったと『お菓子屋』さんに私を押し付けようとするかな。後者のような気がする。


10/8 誤字修正。指摘ありがとうございます。

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「帰還勇者のための休日の過ごし方」志保が探偵物のヒロイン役です。よろしくお願いします。
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