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私の彼氏は超肉食系  作者: 蜘條ユリイ
第2章
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第2話 彼女の夢を邪魔するのは誰だ

「君のファンクラブはもうあるのかな?」


 10分以上熱く語った彼が、他のイチユリストと全く同じことを言い出した。


「それが・・・、プロデューサーが早いと言ってまして、私が映画デビューをしてからでいいそうです。」


 私も映画デビュー後芸能界を引退する際に足枷になるであろうファンクラブの存在を疎ましく思っていたのでその言葉に甘えていたのである。


「僕が頼んであげるよ。」


 そう言って彼がスマートフォンを取り出すと、何処かに電話を掛けた。


「あ、今晩は。お菓子屋です。はい・・・こちらこそ・番組を盛り上げてもらって感謝してます。」


 相手はうちの芸能事務所の社長のようである。もちろん、社長もプロデューサーの意向は把握しているはずなので断ってくれるはずなのであるが・・・。嫌な予感がする。


「それでですね。僕が発起人になって公式ファンクラブの設置をですね。許可・・・そうですか・・・ありがとうございます。そうですね・・・忘れてました。・・・はい、じゃあ変わります。」


 またか。


 どうやら、芸能事務所の社長がプロデューサー『一条ゆり』の意向を確かめず、先走っているらしい。


「ごめん。ごめん。そういえば、君の意思を確かめてくれって、事務所の社長に変わるから、答えてあげてくれるかな。」


 私は、彼からスマートフォンを受け取る。やはり、芸能事務所の社長は興奮していて、私の意志も『一条ゆり』の意思も関係なく押し通そうとしてきた。その上、目の前では『お菓子屋十万石』さんが今か今かと笑顔で待ち構えているのである。


 これで拒否できる人間が居たら、お目にかかりたい。YES以外に答えは残されていなかったのである。


「はい。よろしくお願い致します。」


 芸能事務所の社長が言うには、『お菓子屋十万石』さんが発起人とする公式ファンクラブを設置してもらったタレントは彼の冠番組でレギュラーを与えられるだけでなく、彼を尊敬する噺家、お笑い芸人などの冠番組からお呼びが掛かるらしい。


 このことだけで10年はタレント活動が続けられるだけの仕事が約束されるということだった。確かに興奮する理由は分かる。


 分かるのだが、女優活動はさっさと終わらせるにしても、細々とでもタレント活動6年間医大に通いながら、臨床研修医として昼も夜も無い生活を送りながら続けていかなければ、いけなくなったということである。


 しかも、相手は善意でしてくれているので嫌な顔もできない。彼が好きだというシーンの笑顔を貼り付けつつ頭を下げるしかない。なんでこうなったのだろう。


「はい。こちらこそ、よろしくね。実は女優の公式ファンクラブの発起人は初めてなんだ。僕も沢山の演出家の友達にアッピールして頑張るからね。君も女優の仕事を頑張ってね。」


 ・・・これって・・・まさか・・・タレント活動だけでなく。女優活動の仕事も持ってくるということだろうか。まあ、映画第1作目で大して売れないことがわかれば、逆にタレントの仕事も舞い込んでこなくなる可能性もあるということだよね。


 よし。


 前向きにそう考えればいい。彼には悪いけれど、彼の顔を潰さない程度にその方向で頑張ることにしよう。


「はい。頑張ります。」


「将来は、僕が映画監督をやるからさ。その主演女優を務めてくれると嬉しいな。でも、その頃にはビッグネームになっているだろうから難しいか。」


 さらに飛んでも無い話が・・・いや夢を語っているのだろう。彼がこの手の夢を語ることは良く知られているが、あまり実現していないから大丈夫だよね。


「いいえ。その節はよろしくお願いします。」


     *


「それで俺にどうしろと。」


 私は喫茶店のカウンターに座り、和重さんに愚痴を言う。こんな話、誰にもできない。


「聞いてくれるだけでいいんです。どうにも出来ない問題になってしまっているのは分かっているから・・・。」


 もちろん、医者になる夢は捨てていない。皆さんに学業優先なことは伝えてあるし、無理強いしてくるわけでも無い。唯一、芸能事務所の社長が不安だが・・・。


「できないことはないぞ。お前が誰かとスキャンダルになればいいだけだ。不倫関係をスクープされれば完璧だ。」


 昔は映画の宣伝に主演女優のスキャンダルを利用してヒットさせた例もあったが、今はご法度だ。徹底的にその女優は潰されることになる。


「そうね。第1作目の映画が撮り終わったころに頑張ってみるわ。貴方はそれまでに結婚しておいてね。」


「おいおい。俺かよ。俺を巻き込むなって。」


「冗談よ。」

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「帰還勇者のための休日の過ごし方」志保が探偵物のヒロイン役です。よろしくお願いします。
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