2
「いや、暑ない?」
夏に差し掛かろうとしていたある日、僕達は川沿いの道をだらだらと歩いていた。
その昔、日本の首都があった街の中心を流れる川の上の方、要は上賀茂あたり、駅にして市営地下鉄北山駅近くにあるのが僕の高校、私立上賀茂高校だ。
さて僕たちはどこにいるのか、駅に向かって歩いているのかと言うとそういう訳ではない。
鴨川を無意味にぐだぐだと下っているのだ、今は出町柳近くのデルタにいるのだが、それにしたって
「暑いわ!今日は暑いわ!!帰ろう!!」
「うっさいねん!ぼけ!!ぼけ生駒!!この時間に家帰ったら授業サボったってオカンにバレるやんけ!」
「本当に、だから生駒は馬鹿って言われるんやで」
僕含め3人の男女が怒鳴り合っていた。
暑いのだから大きな声で喋らなければ良いのに暑すぎるために大きな声でも出さなければやってられないのだ
「じゃあ、どうすんねん。このまま鴨川下るんけ?」
「・・・俺でもそれはイヤやな」
「・・・うん、イヤ」
「せやろ、とりあえずお前ら金出せや。今何円もってんねん。」
お金があるならどっかでかき氷でも食べれば良いだろうと提案してみる
と同時に後の二人も同じ事を考えてたのか特に反論することなくゴソゴソとポケットをいじり出した。
「いや、待って?なあ、筒井、狛田、なんでお前ら財布じゃなくてポケットから直接手のひらを前に出してくんの?おかしない?」
「「財布にいれるほど金がないから」」
「ええ・・・嘘やろ、財布ぐらい持っとけよ。
ほんで何円やねん」
「21円やな」
「36円」
「カスやんけ」
「シバくぞボケ」
「まあまあ、狛田そう怒らんと。で生駒は何円やったん?」
まあまあと筒井が狛田をなだめようと動いたとき、後ろにくくった髪が少し太陽に反射して光って見えた
僕はそれに少し感嘆をし、それを誤魔化す様にため息をつきながら仕方がなく財布を出す。
「え?うそやん。13円やった」
「お前がイチバン雑魚やんけ!!」
「うそやろ?高校生三人会わせて100円もいかないって何なん?」
暑いは金は無いはでみんなが項垂れ、そしていつもの流れで話が進む。
「はあ、下鴨神社行くか」
「せやな金ないし」
「涼しいしね」
「へー下鴨神社に行くのかー」
「まあ、ここからならそこが安牌やろ」
「悲しいくらい金ないしな」
「そうなんかー、涼しいとこ連れてったろか」
「マジで!・・・あ、」
「よお、交番は涼しいで、不良高校生達」
何かおかしいと疑問があったけど、何て事はない声が一つ増えていたのだ、涼しい場所という甘い言葉に釣られ後ろを向くと、警察の制服を着たおっさんが建っていた
「うわ千葉やんけ!」
「うわ、マジやん!!」
脱兎の如く走り出す僕、生駒信治に狛田和也
「ちょっと待って!走れない!」
出遅れた筒井智香
これが僕たちの生活だ。
授業たまにサボって、金の無さに嘆いて、よく走る、こんなもんだ。