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「君だってもうこんなに細くなってしまったじゃないか」
「うるさいな」
慣れない標準語を使う僕に彼女はそう言う。強い言葉だけどその言葉に力は感じられない。
「ねえ、何であなたは泣いてるの?私が居なくなると思ってるの?」
「泣いてないし君が居なくなるなんて思ってない」
「嘘、泣いてるよ」
彼女は優しく笑って僕の目頭に手をやった。
その手は僕に一層現実を突きつけるんだ、その冷たい手が強ばった手が、そして僕はまた後悔するんだ。こんな思いをするなら君となんか出会わなければ良かったのにって。
出会った日を思いだそう。
君と僕が出会ったあの日のことを。