番外編 ロアラの熱い日々2
わたくしがコンラッド様と一緒に寝た翌日の朝にメイドのルネとレーネの2人がやってきた。
既にコンラッド様は皇宮に出仕していていない。ルネは茶色の髪と瞳の可愛い子でレーネは薄い赤茶色の髪と赤い瞳の綺麗な子だ。2人は似ていないが双子で年は同い年だった。わたくしよりは2歳ほど上だが。
「……奥様。コンラッド様とは仲睦まじくて羨ましいです」
「……ちょっ。ルネ。睦まじいって。外では言わないでよ」
「ふふ。心得ておりますとも」
ルネが言うとレーネも苦笑する。わたくしは顔に熱が集まるのがわかった。コンラッド様と結婚して既に半年は過ぎている。けどまだまだ新婚であるのには変わらない。
「ロアラ様。今日はお疲れでございましょう。朝食を済ませましたら。休息を取ってください」
「まあ。そうね。昨日はラド様が離してくださらなかったから」
本当は添い寝していただけだが。まあ、こう言っておけば。2人は疑わないだろう。そう思いつつ、ソファから立ち上がった。食堂に行くためだ。その後、朝食を済ませた。給仕は家令のローレンがしてくれたのだった。
朝食を済ませたら自室に戻る。寝室に行くとルネとレーネがワンピースからネグリジェと室内履きに替えさせてくれた。ベッドに行くとそのままシーツの中に入った。ルネがカーテンを閉めてからレーネと共に出て行く。ほうと息をついた。
(……今日こそはラド様ともっと良い雰囲気にならないと)
秘かに決めたら瞼を閉じる。そうだ、元気になったらラド様の似顔絵でも描こう。後はジークさんの剣を持って佇む姿とか。それから……。色々と考えていたらかえって眠れない。こういう時にラド様がいてくれたら。そう願ってしまう。彼の優しい春の空の眼差しが恋しい。大きくて温かい手もだ。サラサラの黒髪も。全てが愛おしくて。だからこそ早く会いたい。ラド様、帰ってきてね。わたくしは待っているわ。そう思いながら眠りに落ちていったのだった。
夕方になりやっとわたくしは目覚めた。髪に触れるかさついた大きな手の感触に意識は浮上する。ラド様だろうか。
「……ん。ラド様?」
「……ああ。ただいま。ロアラ」
低い心地よい声。ああ。やっぱり彼が好き。わたくしは気がついたらふにゃと笑いかけていたようだ。
「お帰りなさいませえ。ラド様」
わたくしが寝ぼけて言うとラド様の頬が気のせいか薄っすらと赤い。どうしたのだろう。ふとわたくしは気がついた。ガバリと起き上がる。胸元を見たらネグリジェの襟元がはだけていた。リボンが外れかかっている。
「ロアラ。ちょっとこっちに」
「……ラド様?」
コンラッド様はそう言うと手招きをした。わたくしは不思議に思いつつも彼の方に行く。コンラッド様はすぐ近くまで寄ると器用にもネグリジェの外れかかったリボンを手に取る。しゅるりと音が鳴る。気がついたらはだけてしまっていた胸元は元通りだ。ところが彼は苦笑してわたくしの脇腹のあたりに両手を差し入れる。ぐいっと体が持ち上がって縦抱きにされた。コンラッド様はすたすたとベッドの端に座った。そうしてわたくしを膝の上に座らせたのだ。向かい合わせなので彼の顔がよく見えた。
「……な。ラド様!?」
「ははっ。この体勢はいいな。ロアラの顔がよく見える」
コンラッド様はご満悦だ。わたくしの頬を優しく撫でる。にっこりと笑って頬にキスをしてきた。
「……ロアラ。そろそろ子供が欲しいと思わないか?」
「まあ。子供ですか?」
「ああ。俺はもうできてもいいと思っている。ロアラはいいとして。俺もじきに30だ。1人くらいてもいいしな」
わたくしは確かにと思った。コンラッド様がなかなか手を出さなかったのはわたくしの体に理由があった。わたくしは生まれつき、魔力が溜まりやすい体質だ。そのせいで幼い頃はよく寝こんでいた。ベッドの住人とはよく言ったものだった。瞳が金色なのが魔力が濃くて高い証拠になるけど。そういった子供は大体、大人になって魔力を調節できるようになるまで訓練する必要があった。つい、去年までわたくしも例に漏れずに魔力の調節の訓練を行っていた。まあ、魔力の相性が良い相手とそういう事をするのもうまく体に循環させる一つの方法ではある。
「……わかりましたわ。けど1人と言わずに。2人でも3人でもわたくしは構いません」
「……ロアラ。そう男を煽るな。どうなっても知らないぞ」
コンラッド様はいつになくやんわりと言う。わたくしもふふっと笑って彼の首に両腕を回す。頭をキュッと抱きしめた。
「ラド様。愛していますわ」
「ロアラ。いつになく積極的だな」
「あら。わたくしの気持ちを言ったまでです」
にっこりと笑って言う。コンラッド様はわたくしをぎゅっと抱きしめる。再び、体が浮き上がった。ベッドにそっと降ろされて押し倒された。
「……ロアラ」
コンラッド様はわたくしの額にキスをした。瞳はちょっと濃い青になっている。わたくしはコンラッド様の髪を撫でた。ちょっと硬いけどサラサラとした手触りが良くてつい、何度もしてしまう。コンラッド様は苦笑しながらも「もういいか?」と訊いてくる。頷くと唇にキスが降りてきた。その後、情熱的な一夜になったのだった。
これにてロアラ編は終わりです。




