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番外編 ローズの新婚生活1

  私が幼なじみのジークと結婚してから半年が過ぎていた。


  今日も朝から二人でいちゃいちゃしている。といってもジークは皇宮で剣術指南のお仕事があるから時間はあんまりないはずだけど。それなのに食事の支度と後片付けは彼がテキパキとやってくれていた。今日の朝食はパムとサラダ、野菜スープだ。これが悔しいことに私が作ったものよりも美味しい。


「……ジーク。私も朝食は作れるよ」


「いいんだよ。俺がやりたいだけだから」


  そう言って譲ってくれない。仕方ないのでお掃除とお洗濯は頑張っている。朝食を食べ終えるとジークは私の額にキスをして甘く蕩けるような笑みを浮かべた。コンラッドさんやケビンさん達が見たら驚くような表情だ。


「んじゃ。洗い物をするよ」


「う、うん。行ってらっしゃい」


  そう言うと使ったお皿やスプーンなどを流し台に持って行く。私もこれは手伝う。するとジークは座っているように言ってきた。


「ローズ。座ってろよ。俺は大丈夫だからさ」


「……でも。私だけ怠けてるわけにはいかないわ」


「いいって。お前、実は腰が痛いんだろ。今日はゆっくり休んでいてくれ」


  私はどきりとする。いつから知ってるの?!顔に熱が集まった。今、赤くなっているだろう事がわかる。


「ジークが昨日は朝まで離してくれなかったからじゃないの。誰のせいだと思って……」


「……わかったよ。今日からしばらくの間。ローズの腰痛が治るまでは夜の事は控えようか。それでどうだ?」


「いいよ。私、腰痛以外にも足を軽く捻っちゃって。お医者様に診てもらおうと思ってるんだ」


  ついでに言ったけど。ジークはぎょっとした顔になる。これは逆効果だったかな。


「なんだって。足を捻った?!」


「……うん。昨日の夕方、買い物の帰りに小麦粉の袋を抱えていたの。家に帰って袋を棚に上げたまでは良かったんだけど。棚の引き戸を閉めた後でよろけてしまって。机に手をついたんだけど。その拍子に捻挫をしちゃった」


「……お前なあ。だから昨日は右足を引きずっていたのか」


  頷くとはあとため息をつかれた。呆れているらしい。私はどうしたものかと慌てる。


「……ご、ごめんなさい。今度から気をつけるから」


「ローズ。謝るよりも先に先生を呼んでくるから。もう動かなくていい。今日から半月くらいは家事は俺がやる」


  私はしゅんとなった。昔からジークはこうと決めたら引かない。まあ、捻挫に腰痛もとなったら誰でも普通は慌てるけど。


「……わかった。本当にごめん」


「謝らなきゃならないのは俺の方だ。気付かなくって本当にごめんな」


  ジークは頭を下げてからすぐに朝食の後片付けをした。急いでお医者の先生を呼びに行ったのだった。


「……ローズさん。捻挫と腰痛なんだけどね。二、三日は放っておいたでしょ。おかげで炎症が酷くなっている。湿布と鎮痛剤を処方しておくから。旦那さんの言う通り、半月は湿布を貼ることだね。後、無理に動かさない事。最初の一週間は安静にしておく必要があるよ」


  そう言ったのは皇都のお医者様であるウェンディ先生だ。ふうとため息をつきながら掛けていた眼鏡を押し上げる。ウェンディ先生は平民貴族など身分関係なく診てくれる人だ。年齢は三十代前半の男性ではあるが。穏やかだけど飄々とした一風変わった先生だった。


「……すみません。俺が付いていながらこんなことになってしまって」


「ジークさんが謝る事じゃないよ。けど夜は最低一ヶ月は禁止だ。ローズさんの腰痛の原因は疲労と軽い捻挫だからね」


「そうなんですか。じゃあ、休暇申請しないとダメですね」


「そうだね。奥さんのお世話、できそうかな?」


「……頑張ります」


  ジークが言うとウェンディ先生は苦笑した。


「……まあ、旦那さんがいるとはいえ。僕も心配だから。また明日も様子を見に来るよ」


「ありがとうございます」


「私からも言わせてください。今日はすみません。ありがとうございます」


  ウェンディ先生は笑みを深めた。ジークに近づくとぽんと肩を叩く。


「……じゃあ。僕はこれで帰るよ。これが腰痛と捻挫用の湿布で。後は鎮痛剤。全部で十日分はある」


「ありがとうございました」


  ジークがお礼を言うとウェンディ先生はにっこりと笑って軽く会釈をしてくれた。そうして帰って行ったのだった。


  その後、ジークに手伝われながら足と腰に湿布を貼った。足には包帯も巻かれる。念のために鎮痛剤も飲む。じくじくと痛かった足と腰がこれのおかげで随分と楽になる。


「……ローズ。何か食べたい物はないか?」


「……そうだね。じゃあ、チーズのリゾットが良い」


「待ってろ。作ってくるよ」


  ジークはそう言って台所に行く。しばらく経ってほかほかと湯気の立つチーズリゾットを持ってきてくれた。良い香りもする。


「できたぞ。食べられそうか?」


「うん。水もありがとう」


「いいって。自分で食べられるか?」


  頷いて受け取った。太ももの上に乗せるとスプーンですくう。一口食べたらじんわりと温かさが体に染み渡るようだ。味もコショウが効いているけど優しい感じで食べやすい。気がついたら八割方はお腹に収まっていたのだった。

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