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五章7

この回は残酷な描写があります。苦手な方はご注意ください。

  ジークとアレクセイの剣戟は続いた。


  コンラッドとフィルディンはそれを圧倒されながら見ていた。剣舞と言って良いほどジークの剣の腕は確かだった。ここまでとはとコンラッドは感嘆する。


「……くっ。なかなかやるね」


「お前もな」


  ジークはそう言ってアレクセイとつば迫り合いをした。その刹那、2人は離れて間合いを取る。ジークは玉のような汗を額に浮かばせていた。ゼイゼイと肩を上下させる。


「……太陽神アスナ神に請い願う。かの者を浄化せしめむ」


  祝詞を唱えるとジークは再び間合いを詰めた。アレクセイの一瞬の隙を突いて剣を振り下ろす。ざくりと右肩から胸にかけて袈裟斬りする。アレクセイの外套が破れて長く深い切り傷ができた。ポタポタと赤い血が滴り落ちる。


「……ぐっ。おのれ、人間ごときにやられるとはね」


「お前。イライア様に恨みを持っているようだな」


「あの女は僕の両親を剣で斬り殺した。妖魔化したという理由でね」


  そうだったのかとジークは納得した。アレクセイの両親は妖魔化してしまい、やむなくイライアの手で退治された。だが幼かったアレクセイは理由がわからずにイライアを恨むようになってしまったのだろう。ジークはそれでも魔王の力を無闇に使ってはならないと思った。白光剣でアレクセイを浄化しなければ、国が危うい。


「……アレクセイ。せめて安らかに眠ってくれ」


「……安らかにだって?」


  アレクセイはふらりとしながらも顔を上げる。赤い瞳には怒りと憎しみ、恨みが混じり合ってグラグラと煮え立つようだ。


「ふざけるな。眠るのはお前の方だ!!」


  アレクセイは袈裟斬りにした傷に御構い無しにジークへと斬り込んでくる。再びギインッと剣同士がぶつかり合う。あまりの速さと重さにジークの両手が痺れるようだ。それでも何とか受け止めた。


「お前も妖魔化しているな」


「……僕は妖魔なんかじゃない。人間だ!」


「あれだけ人間ごときがって言ってたのに。勝手なもんだ」


  ジークはそう言い捨てると白光剣を上にあげた。アレクセイは虚を突かれて剣を下げてしまう。その一瞬を見逃すジークではない。剣を横に薙いでアレクセイの喉元を斬りつけた。鮮血が辺りに舞う。さすがに彼の体はぐらりと後ろに倒れこむ。ドサッと石床に音が響く。ジークはとどめとアレクセイの胸--心臓に剣を突き立てた。めりめりと剣がアレクセイの胸に沈んでいく。こぽりとアレクセイの口から血が溢れ出した。


「ゆっくり眠ってくれ」


  アレクセイの胸から剣を引き抜く。ざしゅりと音がして剣から血が滴り落ちた。途端にアレクセイの体は黄金と白の光に包まれる。そのまま、すうと消えてしまった。こうして魔王との戦いは幕を閉じたのだった。



  迷宮が崩れだしたのは少し経ってからだった。ローズは慌てて月玉で浄化をした。だがジークに大声で怒鳴られた。


「……ローズ。浄化はもういいから。走れ!!」


「わ、わかった!」


  大慌てで駆け出した。他の面々も後に続く。特にコンラッドは先頭になって通れそうな道を探した。


「こっちは通れるぞ。行こう!」


「……はい!!」


  ジュリアナが頷くと全速力で走った。ローズも後に続いた。ジークも必死で付いていく。迷宮はガラガラと崩れていき、皆が入り口に着いた時には跡形も無くなっていたのだった。



  その後、ジーク達は無事に何とか地上に出られた。もう皆へとへとだ。ジークは白光剣を鞘に収めてローズに近寄る。体がまだ熱い。それでも彼女の腕を掴んだ。そっと引き寄せて腕の中に閉じ込めた。


「……ジーク。どうしたの?」


「……ローズが無事で良かった」


「……ジーク??」


  ジークはそのまま、ふらりと前のめりに倒れた。ローズは彼の額に手を当てた。すごい熱だ。気がつけば、叫んでいた。


「……ジュリアナさん。コンラッドさん。ジーク、すごい熱です!!」


「……ローズちゃん。本当?!」


  ローズの叫びにいち早く気づいたのはフィルディンだった。慌てて駆け寄ってくる。


「うわ。本当にすごい熱だ。コンラッド、クォーツ。こっちに来てくれ!!」


  フィルディンの大声に何事かとコンラッドとクォーツが慌ててやってくる。その後、大騒ぎになりジークは皇宮の客室に担ぎ込まれたのだった。

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