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プロローグ4

 夜が更けて、ジークは剣の稽古を終えた。


家に帰り、いかつい顔の父と兄たちが出迎える。唯一、ほっそりとした母だけが清涼剤のようだ。


「…ああ、お帰り。ジーク、今日も剣の稽古だったの?」


「ただいま。そうだけど」


「今日、ローズちゃんをお婆様の館から出てくるのを見かけてね。手に小さなガラスの瓶を持ってたの。深刻な顔をしてたから気になって。ジークは何か知らない?」


 母が話しかけてきたがジークは首を横に振る。


「…いいや。知らないな」


「そう。あの、お薬。たぶん、高価なものだと思うの。もしかして、ローズちゃんのお家で誰か大怪我でもしたのかしら」


 母はふうと大きく息をついた。ジークはまさかと肩を竦めた。


「そんな事はないだろう。偶然、手に入ったんじゃないか?」


「そりゃそうだけどね」


 母はため息をつくと台所へと行ってしまった。父も兄たちを促して目配せをしあう。

 ジークはどうしたのだろうかと首を捻る。


「…ジーク。剣をしまって台所へ来なさい。もう、夕食の時間だからな」


「…わかった」


 父にそういわれて、ジークは頷いた。剣をしまいに庭の物置小屋へ向かった。



 それから、夕食になった。ジークはローズの事を考えながらも母お手製のジャガイモのポタージュを木製のスプーンで口に運んだ。

 ローズがもらったという月の雫。あれをお婆様が入手できたのは何故なのか。

 それが頭の中を()めていた。もしかすると、お婆様は月の巫女関連の何かを知っていたりするのだろうか。

 だとすると、当代の月の巫女と繋がりがある事になる。勘でピンときた。お婆様は月の巫女に関するツテがあるのは間違いない。

 でも、ローズに渡した理由が今一つ、わからなかった。ジークは頭を悩ませながらもポタージュを飲み終えた。



 その後、ジークは自分の部屋に戻った。まんじりとせずに寝台に寝転がる。(どうしたもんかな)

 ふうとため息をついた。夜中なので静かだ。ジークは寝台から起き上がると窓まで近づいた。

 月が部屋の中まで照らしている。ローズがいたら綺麗だと言いそうだが。

 生憎、ジークは男だからそんなことは思わない。ただ、黙って見るだけである。

 昼間にお婆様が月の雫という薬をローズに渡していた事を思い出した。あれは自分たちのような庶民が持つような品ではない。むしろ、月の巫女や王様などお偉いさん方が持つものだ。

 だとしたら、明日になったらローズに言って薬をお婆様に返すように言わなくては。ジークはそう思いながら寝台から下りた。外に出るためにブーツを履いた。外套を羽織って部屋を出る。廊下はひんやりとしていて肌を粟立たせた。ジークは足音を忍ばせながら家の玄関に急いだのだった。



 外に出るとジークは父から昔にもらったカンテラに火を灯してある場所に急ぐ。村の近くの森だ。いつも、剣の修行で行っているために足取りに間違いはない。月明かりとカンテラの灯りを頼りに進んでいくと生ぬるい風が吹いた。魔物かと後ろを振り向くと何故かそこにはお婆様がいた。


「…ジークの坊や。こんな夜中にどうしたんだい?」


 いつものしわがれた声で話しかけてくるがジークは警戒しながら腰に差した剣の束に手をかけた。


「お婆様か。こんな夜中にはこっちの言葉だ。何をしている?」


「何もしていないよ。白雷の神子さん」


「…何だって?!」


 ジークがそう叫んだ瞬間、お婆様はにたりと笑った。


「だが、運が悪かったね。あんたはここで死ぬ定めなんだよ。白夜剣と白光剣を手に入れられるとわたしも面倒なんでね」


「どういう事だ?」


「答える義理はないよ。さあ、わたしの言うことを聞きな!」


 お婆様がジークに襲いかかってきた。とっさに剣を抜き、鋭い短剣の一撃を受け止めたのだった。

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