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三章4

  謁見の間に入ると赤い絨毯の上をゆっくりとコンラッドが歩く。


  その後をジークとローズが続いていった。壁際には騎士や文官達がずらりと並ぶ。そうして一番奥まった場所の手前の階段まで来るとコンラッドは立ち止まる。

  彼はそのまま跪いた。胸には手を当てる。ジークもコンラッドと同じようにした。ローズは片膝をつき、ドレスの裾を両手で摘んで王族用のカテーシーをする。

  そんな姿勢で待っていたら玉座に誰かが座る気配がした。


「……頭を上げてもよいぞ」


「はっ。陛下に置かれましてはご機嫌麗しく……」


  陛下のお言葉に対してコンラッドが答える。ジークとローズはコンラッドから目配せをされて恐る恐る顔を上げた。玉座には白金の髪に薄藍色の瞳の美男が腰掛けていた。それでも目元や口元にシワが見受けられて中年にさしかかる年齢だとわかる。


「……コンラッド。堅苦しい言葉は良い。だが。こちらが新しい神子達だな?」


「はい。こちらのジークとローズ嬢がそうです」


「そうか。ジーク殿とローズ殿といったか。これから二人には剣試しの儀とイライア殿の捜索を頼みたい。コンラッドに命じてはいたが。今、このナスカ皇国には妖魔が跋扈している。そなた達にはコンラッドに協力してやってほしいのだ」


「……陛下。私達にどれほどできるかわかりませんが。一生懸命やってみます」


「俺もそれには同意します。陛下。イライア様を必ず見つけ出してみせます」


  ジークとローズが交互に言うと陛下はそうかと微笑んだ。


「ふむ。頼もしい返事を聞けて何よりだ。今日の午後には剣試しの儀が行われる。ジーク殿は参加するのだろう?」


「そのつもりですが」


「じゃあ、もう謁見は終わりにしようかな。今日はそなた達に会えてよかった。新たなこの国の希望にそなた達はなるだろう。これからよろしく頼むぞ」


「「はいっ」」


  ジークとローズは元気よく返事をした。コンラッドはやっと一仕事終えたと息をついたのだった。


  その後、ローズは客室で動きやすいワンピースに着替えると騎士団の鍛錬場に向かう。案内はコンラッドがしてくれる。ジークは儀式に先に行くといってこの場にはいない。

  幾つかの廊下を通り過ぎ、階段を降りて鍛錬場に行く。そうして鍛錬場らしき場所にたどり着いた。


「ここが騎士団の鍛錬場だ。剣試しの儀は剣を抜けた人物が主として認定される。気に入られないと抜けないと聞いた事がある」


  コンラッドの説明にへえと言いながらローズは呆気に取られた。鍛錬場には体格の良い男性が列をなしていたからだ。たくさんの参加者にコンラッドも驚いたらしく目を見開いた。

  が、誰もが抜けなかったのか剣を諦めて帰っていく。一人が抜こうとしたが。全然びくともしない。

  そうする内にジークの番が回ってきた。彼は先ほどよりは動きやすい格好をしている。剣の柄を握った。するとどうした事だろうか。全く抜けなかったはずの剣が少しずつ刀身を露わにしたのだ。ジークが剣を完全に抜ききると周囲がどよめいた。

  側にいた神官と騎士が恭しく一振り目の剣を受け取ると二振り目も抜くように促した。ジークは言われた通りにその剣も見事に抜いてみせた。


「……ふうむ。やっぱりジークが白雷の神子のようだな」


「え。本当に剣を抜いちゃった」


  二人が呟くと同時に神官が大きく声を上げた。


「……白夜剣と雷光剣の新たな主が今現れました!!」


「ジーク・プレアデス様。おめでとうございます!!」


  神官と共に騎士が祝いの言葉をかける。が、ジークは複雑そうだ。それでも周囲は新たな剣の主の出現に興奮の熱が冷めやらない。コンラッドはローズに振り向いた。


「ローズ。君も月玉を神官長から受け取らないといけない。明日、行われるからそのつもりでいなさい」


「……わかりました」


  ローズは頷いた。コンラッドは持て囃されるジークを心配そうに見つめたのだった。

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