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三章 剣試しの儀1

久しぶりの更新になります。

  ジークとローズ、コンラッドの三人が王都に着いたのは旅立ってから一カ月後の事だった。


  意外とコンラッドは旅慣れていた。そんな彼にジークは剣術を鍛え直され、少しは腕が上がったように思われる。ローズも治癒魔法などが上達した。コンラッドは元々、騎士団長らしく野営は慣れたものらしい。なので森に行っては水を汲んできたり野兎などを捕まえてきたりと割と活躍していた。妖魔との戦いもジークに冷静に指示を出してくる。その通りに動くと勝率も上がってきたのだから見直さざるを得なかった。ローズもコンラッドを信頼し始めいていたのだった。


「……ローズ。もう王都に来て二日が経つな」

 

  コンラッドご用達の宿屋の食堂にてジークが言った。ローズは鶏肉の照り焼きをフォークでつつきながらも頷いた。


「そうね。私もやっと実感が出てきたわ」


  鶏肉の照り焼きをナイフで切り分けてフォークに突き刺す。ローズは口に運んだ。美味しいと思いながらスパイスの効いた味を堪能する。ジークはさてどうしたもんかと考えていた。

  コンラッドは皇帝陛下と面会してもらいたいと言っていたが。信用していいものか悩む。騎士団長というのは伊達ではないらしい。本人もそれは本当だと言っていたし。


「……ジーク。眉間にしわ寄せてどうしたの?」


「……ちょっとコンラッドさんの事を考えていたんだよ。信用していいもんか決めかねていてな」


「ふうん。あたしは信用してもいいと思うよ。コンラッドさん、見かけはいかつい人だけど。けっこう頼り甲斐あるし親切だし」


  ジークは能天気なと呆れた。ローズは昔からお人好しな所があった。ふうとため息をつきながら朝食の牛肉と野菜炒めを口に運んだのだった。



  朝食を終えるとジークはローズに部屋にいるように言ってコンラッドの元へと向かう。コンラッドは自分用の部屋にいた。ノックをすると中から返事がある。


「……コンラッドさん。ちょっと今から話したいんだが。いいかな?」


「ああ。構わんが」


  ジークはドアを閉めると防音魔法と結界を張った。無詠唱で。コンラッドは目を見張る。さすがに白雷の神子--光の神子候補なだけはあるなと感心した。


「……で。話したい事とは何だ?」


「ああ。その。コンラッドさんはこのナスカ皇国の騎士団長なんだよな。皇帝陛下に面会してもらいたいと言ってたが。実際は俺たちをどうする気なんだ?」


「……なるほど。そうきたか。私はどうもこうもお前とローズを正式に神子として陛下に認めていただきたいだけだ。それとこのナスカ皇国は危機に瀕している。妖魔の王である魔王が現れてから地震や火事など天災が多発しているんだ。そして妖魔が跋扈(ばっこ)して被害者が増える一方だしな。ジークとローズには魔王を倒してもらい、神子として綻びが出てしまったナスカ皇国の結界を直す事もしてもらいたいんだ。陛下もそれを願っておられる」


「ナスカ皇国にそんな危機が迫っていたんだな。俺はただ、剣試しの儀で白夜剣と雷光剣を手に入れたかっただけなのに」


「お前が言いたい事はわかる。が、今の月の巫女であるイライア様方では魔王と対峙するには無理がある。若く体力のある新しい神子達でないとな」


  コンラッドがそう言うとジークは黙り込んだ。思ったよりも壮大な話になってしまった。でも魔王と戦い、妖魔とも戦わないとナスカ皇国には平和が来ない。そうしないとローズや自分の家族も守れないのだ。そこまで考えるとジークはコンラッドを見据えた。


「……わかったよ。疑ったりして悪かった。コンラッドさんなりにこの国の行く末を考えていたんだな。俺もローズやこの国の人達を守りたい。そのためにも頑張るよ」


「そうか。ジーク。明日になったら皇宮に行くぞ。早速、陛下に面会して剣試しの儀に臨んでもらうからな」


「いきなりかよ?!」


「事態は一刻の猶予もないんだ。早く剣に主と認めてもらえ。やる事はたくさんあるぞ」


「わかった。じゃあ、よろしく頼むぜ。騎士団長さん」


  ジークがそう言うとコンラッドはにっと笑った。二人はがっと手を握り合い、男同士ならではの握手をしたのだった。

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