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二章3

男性がにっと笑うとジークは睨みつけた。


「……あんた。俺達が旅の途中だとわかるのはいいが。何であんな辺鄙な村にわざわざ行くんだ。あそこは何もないぞ」


「……ほう。なかなか鋭いところをつくな。確かにディアールの村は辺鄙なのは確からしい。だが、君は何故それを知っているんだ?」


反対に男性は質問をしてきた。ジークは返答に困った。


「ふむ。答えられないか。では言おうか。君達は白雷の神子と月玉の巫女は知っているな?」


この質問にジークとローズは固まった。この男性は何者なのか。それは二人共通の疑問と言えた。ジークとローズは顔を見合わせる。


「……知っているようだな。ならば言うが。私はコンラッド・スレイター。王都で皇帝陛下にお仕えする騎士団の一員だ。極秘でとある方を探している」


「ふうん。あんた、騎士だったのか。だとしても俺達の名を明らかにする事はできない」


「何故だ?」


「……あんた。極秘と言ったが。その探している方というのは誰なんだ。俺達にそれを話してどうする気だ」


「成る程。ただでは答えぬというわけか。ならば、拳で語るのみだな」


コンラッドと名乗った男性はいきなりジークに素早く拳を振り下ろしてきた。驚いたジークはローズを抱き抱えて後ろに飛びすさった。荷物は転移魔法で異空間に移動させたので無事だったが。


「……驚いた。いきなり何すんだ。横に女もいるのに殴りかかるとは」


「ほう。女一人を抱えて後ろに飛んだか。やるな。そんなにその娘が大事か?」


「大事も何も。この子は俺の旅の連れだ。怪我なんてさせたら親父さんに殴られる」


「ならば、その娘にも聞こう。君はその若者のなんだ?」


「……私ですか。ジークの連れで。こ、恋人です」


ローズは顔を赤らめながらも答えた。ジークはちょっと嬉しそうに一瞬だが笑った。


「その若者の恋人ねえ。あんまりそういう風には見えないんだが」


「なっ。私はジークとは本当に恋人同士なんです!」


「……本当にか。だが恋人だと言うのなら証拠を見せてもらおうかな」


また、ジークとローズは固まる。証拠だって?!さすがにジークも焦った。


「……ローズ。ちょっとごめんな」


小声でジークは謝るとローズの後頭部をとらえてもう片方の手で頬を撫でた。そして顔をぐっと近づける。ローズは柔らかな何かが触れてくる感触に唖然となった。そう、口付けをされたのだ。


「……やるな。こんな公衆の面前でおおっぴらに接吻をするとは」


コンラッドが呆れ気味に言う。でもジークも必死だ。ローズを疑われたということは引き離される可能性が高いからと判断していたのだから。ローズはまだ何も判断できていない。

ジークはローズの頭と頬から手を離すとコンラッドを睨みつけた。


「あんたがやれと言ったんだろうが。何を今更、呆れているんだよ」


「それでも実際にやる奴がいるか。君はやられた側の気持ちをわかっていない」


「何だと?!」


ジークとコンラッドは一触即発の状態だ。どうしたものかとローズは慌てる。二人はギロッと睨み合う。


「……ふう。わかった。君達には本当の事を話そう。でないと少年。君は引き下がりそうにない」


「ふん。俺は言ってくれとは一言も言ってない」


「少年。私がお探ししている方は君達とも関係している。それに皇帝陛下もな。仕方ない、私の泊まっている宿屋があるから付いて来なさい」


ジークは警戒しながらコンラッドに付いて行く。ローズも戸惑いながらも一緒に行ったのだった。



しばらくしてコンラッドが案内したのはこの町ーーサルサの町でも一番と言っていい高級の宿屋だ。コンラッドはこの宿屋でも三番目に広いらしい四人用の部屋にジークとローズを案内した。二人は圧倒されていたのだった。


「……さて。私の泊まる宿屋の部屋まで案内したんだ。名を言ってくれるな?」


「……わかったよ。まず、俺がジーク。ジーク・プレアデスだ」


「ほう。ジーク・プレアデスか。聞いたことはあるな」


「……私はローズ。ローズマリー・シェイラスです」


「シェイラスだと。君はあのシェイラス魔術師団長のお孫さんか?!」


コンラッドが驚くのをローズは不思議そうに見ていた。ローズはシェイラス魔術師団長の事は何も知らない。誰だろうと思うばかりだった。

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