整理整頓は学校生活のキホン
「誰か…いるの?」
俺は、おずおずと、無人の教室内に声をかけた。
返事はない…
一歩、教室の中に踏み込む。
さっきの物音は、絶対に偶然なんかじゃない。
あんな音が、二回も続くわけがない。
ここに誰かいるのは、確実だ。
しかし、なぜ、そいつは隠れているのだろう?
なぜ出てこない?
もしかして、この校舎に包丁かなにか凶器をもった危ない奴が侵入していて、それでみんながあわてて避難したのではないか?
あの携帯のいっせい着信は、それを知らせる警察からの連絡だったとか?
俺の頭には、そんな考えがぼんやりと浮かんだ。
いまこの教室に隠れている誰かは、俺をその侵入者と誤解しているのかも…
俺は、思いきって名乗ってみた。
「あのさぁ…。俺、隣のクラスの落合なんだけど…。いるんでしょ? ちょっと出てきて、なにが起きたか教えてくれないかな?」
だが、教室の中は、あくまでも無音だった。
しかたなく、俺は教室の中を歩き回って、人が隠れていそうな場所を探しはじめた。
といっても、じつは教室の中に人が隠れられそうな場所は、そんなにない。
俺は、教室のいちばん後ろの窓際にある掃除道具入れの前に、ゆっくりと進んだ。
そして、気がついた。
ほうきやチリとり、バケツといった掃除道具が、道具入れの近くに乱雑に置かれていたのだ。
それはどう見ても、中身をあわてて出した後に見えた。
誰かかが隠れているとしたら、ここしかない…
少し距離を残したまま、俺は掃除道具入れの前に立った。
「そこにいるんだろ?出てきてくれよ」