隣の教室に入るドキドキ感
教室中の携帯が、いっせいに着信音を鳴らした。
その直後、いきなり気を失った俺が目を覚ましたら…
なぜか教室には、俺以外誰もいなかった…
携帯電話には、
「アト 9フンデス」
のメッセージ…
こうして、俺の日常が、崩れはじめた…
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アト 9フンデスって、いったいなんのことだろう?
あと9分ってこと?
でも、なにが?
誰もいない教室の中で、俺はパニックになりかかっていた。
呼吸が荒くなって、だんだん苦しくなる。
やばい…
落ちつけ、俺…
俺は深呼吸を何度かして、ようやく少し冷静になれた。
もう一度、まわりを見回す。
傾いた机に、倒れた椅子…
俺が気絶しているあいだに、この教室でなにかがあって、みんながあわてて逃げ出したのは、たぶん確実だ。
いったい、なにが起きたのか?
それは、わからないけれど、あのとき、携帯がいっせいに鳴ったことと、無関係ではないはずだ。
とにかく、まずは、みんなと合流しよう。
俺はそう思った。
誰かに会えば、教室でなにが起きたか聞ける。
それに、なにより、一人は心細い。
俺は、廊下に出た。
廊下にも、人の姿はない。
それどころか、学校全体が恐ろしいほど静まりかえっていた。
まるで人の気配がしない。
念のため、隣の教室にも入ってみた。
こんな状況でも、隣の教室に入るときというのは、妙にドキドキしてしまう。
が、やはり誰もいない。
隣の教室も、俺のクラスと同じように、椅子や机が乱雑に動いた形跡が残っていた。
どうやら、この教室の連中も、大急ぎで逃げ出したようだ。
だが、いったいどこに?
体育館にでも、集まっているのだろうか?
きびすを返して、教室を出ようとした。
そのときだ。
カタッ
という小さな物音が、教室の中から聞こえた…ような気がした。