間の悪いタイミングで携帯が鳴るヤツ
間の悪いタイミングで、携帯が鳴ってしまうツイてない奴というのは、どこにでもいる。
俺がそうだ。
そのときも、よりにもよって、学校でいちばんキレやすい英語教師の中野が、ミニテストのプリントを配っている最中だった。
俺のア⚪︎フォンが微妙に振動し、同時にメッセージの着信音を鳴らした。
「こら!落合‼︎携帯の電源は切っておけよ!」
即座に中野が、鋭い視線をよこした。
俺はあわててポケットからア⚪︎フォンを取り出し、電源を切るフリをしながら、メッセージを確認した。
どうせ、級友の高田あたりが、つまらない画像かなんかを送ってきたのだろう。
そう思いながら、画面を見ると、
そこには、
「アナタハ オニニ ナリマシタ」
と表示されていた。
ただそれだけの、シンプルなメッセージだ。
差出人は、kanrininとなっている。
カンリニン?
いったいなんの冗談だろう?
高田のやつなのか?
俺は後ろを向いて、高田の席を見た。
途端に、また中野の怒鳴り声が響いた。
「こら落合!今からテストなんだぞ‼︎まっすぐ前を向いてろ!」
こんどは、教室のあちこちから、クスクス笑いがもれた。
高田は、あきれ顔で「なにやってんだよ、おまえ」と口だけ動かした。
俺は釈然としないまま、正面を向いた。
どうやら、あのメッセージと高田は関係ないみたいだ。
じゃあ、いったい誰が…?
全員にプリントを配り終えた中野が、
「よーし、いま1時45分だから、2時まで15分のミニテストだ。これは先週予告していたテストだからな。みんな、ちゃんと予習してき…」
中野が話している途中だった。
教室中で、いっせいに携帯の着信音が鳴った。
クラス全員の携帯が、いっせいに。
それはメッセージの着信を知らせる音だった。
教室中が、ざわめいた。
みんなが携帯を取り出して、画面をチェックしようとした。
中野も、なにか言おうとしたが、すぐにポケットに手を入れた。中野の携帯も、鳴っていたのだ。
俺も、自分の携帯を見た。
そこには、
「10プン メヲ トジテクダサイ」
とあった。
は?
と思った次の瞬間、
俺の視界は真っ暗になった…。