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イクトールは貴族でイケメンです!

オークのイクトールとして転生を果たした郁人だったが、その母であるルルゥはその事実を知らなかった。


当然、彼女は何か魂が見えるだとか、そういった特殊技能は持ち合わせていなかったので、自分の息子の肉体に異世界の人間の魂が入っているということはわからなかった。


というか、ほとんどの高度な魔術師もその魂の出自を見抜くということは不可能だった。


そういうわけで、ルルゥにとってイクトールは特段気にもかけない手の掛からない子供、という認識であった。


ルルゥがイクトールに気にもかけないのは、イクトールを含めて4人の子を持ち、さらに日々の労働があるからだ。


労働とは藁を編んだり、狩りや戦に使う矢を作ったり、山菜や果実を取りに山に入ったり、水を汲みに行ったり……というものである。


であるから、イクトールに構っている時間はなく、あまり夜泣きもしない大人しい息子という認識だけだった。


しかしその認識は徐々にイクトールの年齢が高くなっていくにつれて変わっていくことになるが。


イクトールはオークのほとんどと同じように、駆け回ったり殴り合ったりということは好まなかった。


異母兄弟との交流も積極的にはしなかった。


イクトールの父にあたる人物は、その集落の族長である。


オークの族長はハーレムを形成し、子を成し、一族を発展させていく。


特に強大な集落は城壁を持ち、人間の都市ほどにまで成長するが、その実態はいくつかのハーレムが集まってできているものである。


ブルナーガの納める集落は、そのような巨大なオークの都市ではなく、あくまでも一般的なオークの集落である。


家は藁と砂を固めたのものが殆どで、集会所と族長の家だけがレンガ作りの頑丈なものであった。


ルルゥとその子どもたちは族長の家の近くの、藁と砂でできた小さな家に住んでいた。


彼らオークは厳格な族長制度をもってその社会を形成している。


イクトールの所属している集落の主であるブルナーガ、つまりイクトールの父にあたる人物は、その集落の族長である。


ブルナーガは総人口100に満たないこの小さな集落の領主、つまり貴族であるのだ。


その点に関して女神の言ったことに相違はない。


いくらみすぼらしい小屋に住むことになったとはいえ、ブルナーガは少数ではあるものの領民と呼べる一族を率いているわけだ。


さらには大領主というすべてのオークの上に立つ、族長会議で決められる王がいるわけであるからして、やはりブルナーガは貴族であり、しかるにその息子であるイクトールは貴族の息子なのである。


それが44人いる兄弟姉妹の1人というものであっても、貴族の息子であるということにはかわりはない。


先述のように、オークは基本的にハーレムを形成する。


厳しい迫害を受けながらも人間の町で暮らすオークなどは、人間の風習である一夫一妻の制度に収まっているが、それ以外では最も強いオークが一族を率い、唯一子孫を残せることになっている。


もっとも、そのせいで集落を抜けて町に暮らして自由を得るオークが増加し、結果的に女神の信仰を失うことに繋がっているのであるが。


イクトールは女神の説明に違わず、イケメンである。


頑強そうな風貌、鋭い眼光、剥き出しになった長い牙、大きな鼻、ごつごつとした四肢。


オークの価値観から見て、イクトールは子供であるがすでにイケメンであった。


人間が見れば腰を抜かすだろうことは想像に難くないが。


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