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女神アンジェリカが「あなたって本当に最低の屑だわっ」って郁人に言われないための言い訳ロンパ

アンジェリカは女神である。


腐っても女神である。


かなり力は衰えたが、女神であることは一切変わっていない。


なので、どうしようもないクズの、功徳を積んでいない軽い魂を、いやむしろ罪に汚れ重く黒くなったタールのようなドロドロの穢らわしい魂を、自分の管理する種族の特定の胎児に滑り込ませることは簡単だった。


簡単とは言ったが、信仰を失って力の衰えたアンジェリカにとっては、かなりの重労働だった。


というかそんな穢れた魂にあまり触れたくなかった。


とにかく、万道郁人は異世界に受肉した。


アンジェリカの計画通り、貴族に受肉した。


イケメンに受肉した。


さて、イケメンというのはかなり曖昧な言葉である。


なぜならば顔の良し悪しの判断基準は見る人の主観であり、またその時代や環境によって非常に大きく左右される。


例を挙げるなら、平安時代とかそのへんの日本では、しもぶくれで太眉の女性が美人とされていたという話は有名だろう。


他にも肥満は裕福の象徴であるとか、そういった類の環境で、大きく左右されるのである。


そういうわけで、郁人は貴族のイケメンに転生したのである。


郁人は貴族のイケメンに受肉したのである。


大事なことなので何回も言いますよ。


さて、貴族という身分についても解説しておこう。


貴族とは特権階級の総称である。


封建制の下においては、大規模な領地と領民を管理し、王に仕える身分のもののことを言う。


つまるところ、領地を持って領民を有している点では、貴族の機能は王と異なる点は少ない。


法律も税金も、その管理する領地では自由である。


その点も「王の管理する王国」という枠が、「貴族の管理する領地」という枠に変わるだけである。


つまり管理する領地があり、そこに住む領民がいれば貴族である。


ということが郁人の認識だった。


しかし事実としては、貴族というのは王が「お前今日から貴族な」と言えば貴族になるのであり、その身分の保証は王が持っているわけである。


逆に言うと王がいなくなれば貴族はその正当性を失うことになる。


その正当性を保つために王と貴族は兵力をもって、それを維持するのである。


さて、話が紆余曲折したが、郁人はイケメン貴族に転生したことになっている。


そう。


郁人は、主観と環境によって評価が左右されるが特定の環境下においては良いとされる顔の造形で、王を自身で名乗るものが主観に基いて選んだ身分の与奪を他人に委ねている土地と人民の管理者の血族に、転生したのである。


その点に関して、公明正大で、清く、正しく、美しく、しなやかな四肢を有し、母性溢れる精神と肉体をも有し、三千世界を遍く光で満たし、生命宿るものが須らく礼賛すべき、慈愛と憐憫を持ち、柔らかな髪と澄みやかな瞳を有し、その足先の爪1つ1つまで定命の世界が泣いて跪く高貴さを有し、特定の姿を持たず変幻自在の、オークを守護する女神アンジェリカは、一片の嘘も伝えていません。


さらに言えば、エルフの定義がされていません。はい論破。


さらにさらに付け加えるならば、何の種族に転生するかなんて言ってません。はい論破。


オークの貴族の息子として転生し、イクトールと名付けられた郁人は、物心ついて意識が段々はっきりしてきた3歳のときに、夢の中で女神アンジェリカにそのようなことを言われた。


その日、意識のはっきりした状態で、生前のすべてを思い出したイクトールは、ただただ泣いた。

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