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>突然の死<

その日は一般的に特に何もイベントのない日だった。


といっても今が何日だろうが、何かイベントがある日でも郁人にとっては関係がないのだが。


ただ長期休暇が訪れるとスレが荒れるので、面倒である。


あとバレンタインデーやクリスマスが近付くとカップル板のコピペがあちこちに貼られるので毛嫌いしている。


それと春になると春っぽい画像寄越せというスレで憂鬱になるので嫌いである。


それと夏になると夏っぽい画像貼ってけというスレで憂鬱になるので避けたいと思っている。


それと秋になると秋っぽい画像貼るというスレで憂鬱になるのであまり好きではない。


それと冬になると冬っぽい画像が集まるスレで憂鬱になるので大嫌いである。


とにかくありとあらゆる季節が嫌いである。


好きな季節はない。


いつも地球が滅べばいいと思っている。


ノストラダムスもマヤ文明もジョン・タイターもとんだ肩すかしであった。


郁人が恨んでいない生命体は存在しないと言っても過言ではなかった。


さて、話を戻すが、その日郁人の人生を大きく狂わせる出来事が起きた。


元々大きく狂っていたという説もあるが、それがさらに大きく狂うのだから手のつけようがない。


児童ポルノという言葉をご存知だろうか。


その言葉のとおりのものなのだが、郁人はそれに手を出してしまったのである。


もちろん、故意ではない。


いや、完全に故意ではなかったかと言われれば非常に微妙な線を10年以上の裁判で争って黒なのだが。


とにかく、郁人にはそれが児ポに相当するとは思ってもいなかった。


いつものように現役○Cがうpするスレでうpうpとか支援とかもっと過激なのとか書き込んでいただけである。


これが悪かった。


特にもっと過激なの、の一文が悪かった。


プロバイダからの警告等一切なく、一発アウトだった。


そんな書き込みをしたことなんて忘れて、いつもどおり政治系スレで俺ならああするこうすると書き込んでいたときだった。


母がノックも無しにドアを開けた。


「おいクソババア!勝手に開けんじゃねえ!ノックしろや!」


そう言おうとして、実際には掠れた音を喉が出した。


アマゾンで代引きで注文して、代金を母に支払わせて手に入れた高機能オフィスチェアがくるりと回って、ドアのほうに体を向ける。


そこには、常日頃彼がネットで無能無能と罵っている国家権力の象徴が3人立っていた。





そこで、郁人の脳は思ったより早く回転した。


さすが幼稚園の頃は天才と呼ばれただけはある、と不必要なことを考えるくらいに早く回転した。


実際に早く回転したかどうかは、第三者機関を通しての実測がされていないので証明不可能である。


郁人は自分の脳の回転効率が実数値化できないことを残念に思った。


実数値化したところで、良い数字が出ればそれで満足して終わりだし、もし悪い数字が出たときには装置が壊れているか計測方法が悪いか、はたまたそのような計測自体が人権侵害であるなどと喚き散らすに留まるのだが。


とにかく郁人個人の感想として素早い脳の回転で導き出された答えは、五十三計逃げるに如かずであった。


本来なら三十六計であるし、おそらく東海道五十三次と混同したのだろうが、とにかく郁人は逃げることに決めた。


部屋の中は郁人のテリトリーである。


ここ以外に郁人は行かないのだから、不本意ながら逆説的にここがテリトリーである。


であるからして、郁人は十分に窓の位置を把握していた。


郁人は(馬鹿め……!)と口元を歪める。


窓の位置なんてひきこもっていなくともだいたい覚えているし、覚えていなくとも見ればいいだけの話でもあるし、3人の警官は少なくとも国家試験を合格している点では郁人より頭の出来は優秀である。


さらに言えば警官はこの時点で、いや、この時点以降も、このすえた臭いのする非衛生的なほぼ密室状態で生活していた骨と皮という表現がこれ以上なくしっくりくる27歳の男性が、いきなり窓ガラスに頭を自ら強打するとは思ってもみなかったし、思うことも今後ないだろう。


郁人は窓の位置は把握していても、窓ガラスが防犯のために内部に針金を含んで強度を強化していることまでは把握していなかった。


それもこれも、窓から外の景色を見たことなんてここ数年なかったし、たぶんもし警察が来ずにさらに数年ひきこもっていたとしても、窓から外の景色を見ることなんてことは隣の家が火事にでもならないかぎりありはしなかっただろう。


さらに言及するなら、もし仮に一般的なガラスの強度だとしても、その結果は変わらず、郁人が強かに頭を窓ガラスに打ち付けて死亡する事実は変わらないのであった。


そういうわけで郁人は窓ガラスに頭を自ら強かに打ち付け、その生涯を終えたのであった。


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