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ヒキニート郁人

どこで人生を失敗したのだろうか。


その原因を探っていくと、結局のところ生まれてきたことが間違いなのだという結論に至る。


それがわかっているので、万道郁人(ばんどういくと)はあまり考えないようにしている。


しかし、今回ばかりはその現実をもう一度眼前に突き付けられた思いだった。


郁人を絶望のドン底に陥れたのは一枚の紙だった。


二つ折りの紙で、その材質はそこそこ厚い。


つまるところハガキである。


そう。


郁人が母からドア越しに受け取った紙は、高校の同窓会のお知らせだった。





郁人の1日は単純である。


起きてから眠くなるまでパソコンに張り付いてインターネットである。


これでも実は忙しい。


ふたばのgifスレに溜め込んだ面白gifを貼ったり、壷のSSスレに支援しにいったりしなければならないし、日課の1日3回のオナニーだって欠かさない。


その合間に趣味である軍事系の掲示板を覗きつつ、無知な質問者に上から目線で微妙に的はずれな答えを与えなければならない。


定期のエルフ嫁スレがあれば妄想の中のエルフ嫁との生活を書き込むし、腹筋スレがあれば5桁オーバーのIDにレスをアンカーを打って煽る。


無表情でワロタwwwwwと書き込み、学歴スレがあれば医大生のふりをして煽り、姉スレではパンツうpと煽り、女神スレでうpうpと煽る。


煽ってばかりである。


これだけ煽っているのだから、郁人の人生という海原で、少しでも追い風に煽れられてもいいものだと思うのだが、風呂とトイレ以外は部屋から一歩も出ない生活に、順風も逆風もありはしなかった。


郁人の日常は、概ねそんなものだった。


そんなものだから、言葉はほとんど発さない。


いつだったか動画コミュニティサイトで歌ってみた動画に対して「下手すぎワロタwwww」と赤文字でコメントしたところ、同じく赤文字で「じゃあお前がうpしてみろや」と返されたことがあった。


そのときに歌おうとして小一時間かすれた呼吸を繰り返したのには、さしもの郁人も驚きを隠せなかった。


体はガリガリに病的に痩せており、すでにトイレや風呂にいくのも億劫であった。


有り体に言ってしまえば、郁人はひきこもりの末期症状ともいうべき状態に陥っていた。


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