第六章
今回は、少しベルの話を書きました。
主に、リヒトの趣味の部分と、リヒトの仕事
である問題点の解決などを
ヒロインを絡めつつ書いてみました
今回は、今まで少しアップテンポ
気味だったのを少し落ち着かせました。
いい意味でまったりした話では
ないでしょうかね^_^
アーデルハイトの眩しいが
優しい日差しで目が覚めた。
ま、まぁ昨日みたいにピスティアさん
に冷水で起こされないように
するために意識して早起き
したんだけどね....。ナイスタイミング
というか、なんというかバケツに
冷水を入れたであろうピスティアさん
が部屋に入ってきた。
「チッ.....あら、おはようございます
リヒト様。今日は珍しく
早起きなんですね。」
ピスティアさん舌打ちした?
気のせいだよな?冷水かけるの
楽しみにしてたの?危なかった。
「おはようございます。それはですね
ピスティアさんに迷惑をかける
訳にはいかないですので。」
「なるほど、いい心掛けです。
ん?隣にいるのは誰ですか?」
「何のことですか?俺は昨日誰も
部屋に入れてませんよ。」
ピスティアさんは、俺の横に
置いてある布団の塊を指差した。
ん?確かにこんなにボリューム
なかったよな。
めくって見ると、ベルが寝ていた。
な、なんで!?
「ほう、リヒト様。ベルを
連れ込んでいたのですか。
リヒト様は年下好きのロリコン
だったのですか?幻滅しました。」
ピスティアさんは俺をゴミを
見るような目で見た。やめて、
そんな目で見ないで!まるで
俺が汚らわしいみたいじゃん。
「違うんです!ピスティアさん!
寝ていた間に勝手に忍び込んだ
はずです!俺は知りません!」
大声で騒いだせいか、ベルが
目を覚ました。こうして見ると
本当に14歳に見えない。
ベルは眠そうな目を擦っていた。
「....リヒト、おはよう...。」
「お、おう。おはよう。」
あくびをすると、ベルは
とんでもないことを言い出した。
「リヒト...昨日は...激しかった。
ベル、あんまり寝つけなかった。」
待て待て待て待て、俺は
何かしたのか!?
ピスティアさんは例の笑顔を
浮かべていた。ヤバイ。
「へ、へえ〜リヒト様は昨晩は
お楽しみだったようで?
それで、朝の目覚めがスッキリ
してたんですね?納得です。」
「待って下さい!ほら、ベル!
俺は昨晩何もしてないよな?
というか、勝手に忍び込んだろ?」
ベルは首をかしげた。
「うん?...ベルは昨日一応ノック
した...返事なかったから
お邪魔した...」
「ほら!ピスティアさん!ほら!」
これで、俺の身の潔白は
証明された。はず。
「ねえ、ベル。リヒト様は
あなたに何かした?」
「リヒトの...とても熱かった」
ピスティアさんは短剣を
取り出した。
「リヒト様、言い残す言葉は?」
「待って下さい!」
いや、おかしいって!
俺は本当に何もしてないって!
だ、だってパンツどうも
なっていからね!
「ベル、何が熱かったんだ?」
「むぅ...リヒトの..布団だよ...?」
よかった、本当に良かった。
「はあ、リヒト様をうっかり
殺しちゃうとこでした。」
「何もやってないって
言ったじゃないですか」
「.........リヒト様を信じていたので
先程までのは茶番ですよ。」
絶対嘘だ。短剣だしたとき
明らかに本気でしたよね。
「それはさておき、リヒト様
今日お出かけになるご予定は?」
「いや、特にありません。今日は
調べ物をしたいので。」
「リヒト...調べ物?ベル、手伝う」
「おっ、助かる。ありがとな」
俺はベルの頭を撫でた。
どうやらベルはうちの妹同様
撫でられるのが好きらしい。
「このロリコン....」
「ピスティアさん、何か
言いましたか?」
「いえ、ロリコンなんて一言も
言ってませんよ?では
何かあればお呼びください。」
そう言うとピスティアさんは
部屋から出て行った。あぁ、うん。
ロリコンって言ったんだ。
ここ何日かで、俺の心は
ボロ雑巾のように廃れていってる
気がするな。
「ベル隊長!訓練が始まりますよ!
今日は武器の点検もしなきゃ
いけない日なんですからね!
早く来てください。」
勢いよくドアがあいたかと思うと、
いつぞやのベルを連れて行った
兵士だった。
おうおう、今日はやけに部屋の
出入りが激しいな。ベルは
しょんぼりした顔をした。
「むぅ...ベルの武器はベルが
毎日点検してる...問題ない...」
「この前そう言って、刃がボロボロ
だったじゃないですか」
点検できてないじゃんかよ。
「早く行きますよ!」
「やっ...今日はリヒトのお手伝い...」
ベルは俺に目を向ける。
か、可愛いな。でも、その助けを
求める子犬のような目はやめろ。
何故か良心が痛む。
「ベル、いざって時に戦えない
兵士は大人じゃないぞ。」
ビクッと反応するベル。
「ベル、大人。訓練行ってくる
またね、リヒト。」
「あぁ、行ってこい。」
兵士がベルを連れて行き
俺の部屋にもようやく静寂が
訪れた。今日することは、さっき
言ったとおり、調べ物をする予定だ。
俺は調べ物や読書が好きだ。
まぁ、大きく言えば読書というものか
好きだ。そして、読書する時
欠かせないものが俺にはある。
いわゆる、美学?とでもいうのか。
それは、紅茶だ!読書には紅茶。
うん、鉄則だ。
「いや〜、アーデルハイトの水は
美味しいからきっといい紅茶
が出来るはずだ。」
アントリエから持って来た
俺専用のティーセットを取り出す。
うん、久々に紅茶が飲める。
ちょうど、さっき温めていた水が
沸騰したところで、温めていた
お気に入りの
ボーンチャイナのポットに入れる。
騎士学校の知人に、紅茶を
鉄製のポットに入れてる輩が
いたが、考えられない。鉄製で
してしまうと、茶葉に含まれる
タンニンとくっ付いて、色や渋味が
ダメになるんだ。その場で
俺が紅茶を入れて飲ませると泣いて、紅茶の良さを分かってくれた。
今はどうか分からないが、それ以来
知人は立派な紅茶マイスターに
生まれ変わった。いい事だね。
いや、実にいいね。茶葉は
どうしようか。茶葉が入った瓶と
にらめっこをしながら、俺は
一つの茶葉が入った瓶を取った。
「そうだな〜今日は
ブロークンのニルギリかな。」
ニルギリとは、フレッシュですっきり
した香りで、味もしっかりしている
ことが特徴の茶葉だ。時間帯的にも
本当は
イングリッシュブレックファースト
とかみたいなブレンドも
捨てがたいけど。今度飲もう!
楽しみすぎて、鼻歌が出てしまう。
お湯をポットにそそぐ。
ジャンピングしている茶葉を
見ながら、俺は時を待った。
「きたっ!今だ!」
俺は、カップに紅茶を注いだ。
いい匂いだ、これなら調べ物も
捗ること間違いなし!
「あら!リヒト、あなた紅茶入れるの
うまいわね!うん、いい香り
おかわりあるの?」
「ん?あぁ、また作ればある...よ
エルピス、どっから入ってきた?」
「やだな、人を虫みたいに
扱ってさ。素直にドアからだよ」
びっくりしすぎて、驚くことすら
忘れてしまった。こんな隠密行動
出来るなら、アサシンとか
向いてるんじゃないのか?
そんな俺など気にせず、エルピスは
紅茶を飲んだ。
「美味しいわ、こんなに美味しい
紅茶を飲むのは久々よ。
うむ、褒めてつかわす!」
エルピスはすごくいいドヤ顔で
そう言った。天真爛漫とは
きっとエルピスのような人を
さすのだろう。
「せっかく、楽しみにしてたのに
また入れ直さなきゃいけない
じゃないか。」
俺はまた、準備に取り掛かった。
「悪かったわよ、入れ直せば
飲めるんだからそんなに
ふてくされないの。」
あのですね、エルピス陛下。
紅茶はそんなに生半可な気持ちで
するものでなくてですね。
まぁ、いいけどさ。
「で、何しに来たんだ?」
「何か調べ物するって、さっき
引きずられてるベルに聞いたから、
もしかして、この前の賞の事とか
アガペ・テクネについてなのかな
って思って。そしたら、私も
関係あることだから、手伝おう
と思ったの。」
ベル、引きずられてたのか。
簡単に想像できるよ。
「まぁ、そこらへんについて
整理したり、対策だったりを
考えようかなと思って。」
「私、何すればいい?」
「寝てていいよ。」
即答だった。それが何よりもの
手伝いかな。騒がれたら集中
できなくなりそうだ。
「ひどっ!まさか!私が寝てる間に
変なことする気ね?」
「そんな事しないって。」
「そんなにはっきり言われると
自信なくすわ。」
「魅力はあるから安心して」
「あ、ありがと...」
エルピスは俺から距離を取ると
俺が適当に持って来た本を
読み始めた。
俺も作業に取り掛かりますかね。
まずは、アガペ・テクネ問題だが、
やっぱり情報がまだ足りない。
セレーネ達にも、そろそろ
聞かなきゃいけないし、その時に
まとめて情報収集しないと。
個人的に気になるのは、なぜ
今回アガペは国に技術提供を
しようとしたのか、だな。
調べたところ、アガペは今までにも
国に技術提供をしたことはあるが
数えることが出来るぐらいの数で
尚且つ一番最後に技術提供が
なされたのは、今から100年程
前の話で、それ以来されてない。
となると、100年ぶりの技術提供
となる訳だ。理由は、あくまで
予想だが、ここ100年で一番
自信のある発明と思ったからこそ
提供したというところか、な。
俺は紅茶を、飲みながら
考えを紙に書いていった。
チラッとエルピスの方を見ると
ベッドで横になって、本を
読んでいた。一応、手伝う気は
あるらしいな。変わった陛下だ。
しかし、真剣な表情のエルピスは
なんだか新鮮でとても凛々しかった。
「いつもそうなら、カッコいい
陛下でいられるのにな。」
思わず、ボソッと出てしまった。
しまったと思ったが声が
小さかったので気付いていなかった。
「悪かったわね、凛々しくなくて!」
と思ったら、やはりきづいていた。
なんというか、エルピスは地獄耳
なんだよな。発言には
気を付けないと。閑話休題。
ひとまず、城下で情報収集
するだけじゃなくて、テクネにも
一回尋ねとかないとな。
今は、二つの勢力が噂程度でしか
確認されないぐらいの規模で
収まっているが、何があるか
分かったものじゃない。
女一人のために滅びた国ですら
昔から多くあるんだ。
大事になる前に解決しないと。
気づくと、いつの間にか外の空は
茜色がかった綺麗な夕焼けを
していた。見ていると、心が
洗われるような清らかな気持ち
になった。俺は紅茶を飲みながら
しばしの休憩をいれた。
次は、賞だな。褒美は陛下やら
ピスティアさんに任せるとして。
そうだな、接客部門みたいな
品物だけの価値で決まらない物を
いれたりすると、より平等性が
上がるよな。うん、いいかも。
エルピスにも意見を聞こうと
思った俺は振り向いた。
「エルピス、この賞どうか...な?」
「リヒト...私この本の
内容わからな...zzz」
エルピスは気持ち良さそうに
ピスティアさんからもらった
手作りクマを抱いて寝ていた。
「陛下が風邪引いたらダメだろ」
騎士団のマントをエルピスに
かけた。このマントは見た目よりも
厚手で、まだ少し肌寒い日には
いい防寒具になっていた。
それから、俺は様々な賞のアイデア
を考えた。
「ん?このマント、リヒトの?
私ってば寝ちゃってたのね 。
手作りとか言っておきながら
寝るなんてダメね、私。でも、
リヒトも寝てるしいいかっ!
ありがと、リヒト。紅茶
また飲ませてね。」
エルピスはリヒトの頬にキスをし
そっと部屋から出た。
そのまま、次の日まで
ぐっすり眠った俺が
ピスティアさんに冷水を
かけられ、風邪を引いたのはまた別の話だ。
じかい、主人公が風邪を引いた
と言ったら、ヒロインの看病ですよね。
幼馴染?国王?団長?専属メイド?
さぁ、誰が看病するんですかね?
もちろん、次回はアップテンポで
ノリ良くいきますよ!