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劣等のシュヴァルツ  作者: ファンタスティックペロペロ
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第三章

アーデルハイトの問題について

少し触れていきます。



「起きてください、リヒト様。」

「あと、もうちょい。」


朝にはめっぽう弱い俺の体は

まだ起きるべきでないと

信号を発する。

寝させてくれたまえ。


「リヒト様、起きてください!」

「たのむ、ピスティアさん。

あと少しだけ寝させてくれ~」


その瞬間、体に痛みと冷たさが走る。


「え!何?何があったの?」


体を起こすと、ピスティアさんが

水がしたたっているバケツを

持ちながらすごく怖い笑顔

でたっていた。


「リヒト様、起きないと冷水

ぶっかけますよ?」

「....................」


髪からしたたる水を手で拭う。

これは、水だよね?


「どうしました?」


何食われぬ顔で首を傾げる。


「いや、ぶっかけてから

言われてもですね」


布団でヌクヌクしていたのだが

冷水のせいで台無しだった。


「それで、どうしたんです?」

「陛下がお呼びです」

「わかった、でも次からは

こういう起こし方は改めましょう!

もう少し平和的なのを頼みすよ」

「あっ、はい。善処します」


その問題起こした政治家みたいな

言い方は信用できないのだが。

俺は濡れた寝巻きを着替えた。

はぁ、張り付いて着替えにくい。

脱いだ寝巻きをしぼりながら

ふと、思い出す。

ん?肝心な事を忘れている気がする。

あっ、....アイギスさんに

謝ってないじゃないか......。

追い打ちをかけるように

ピスティアが続けた。


「あっ、そうそう。アイギス団長

からの伝言です。


昨日の事を黙ってて欲しければ

早く謝りに来ること。

期限は今日の昼まで。


だそうですよ。何をしでかしたか

分かりませんが、これは

相当お怒りですね~」

「..........さいですか」


明らかにピスティアさん

楽しんでらっしゃる。

水だけでなく、気の重さも

加わってよりだるくなったように

感じる。


「陛下はどちらに?」

「陛下の部屋におられます。

ご案内しますので、早めに

着替えて下さいね。」

「分かりました。」


ズボンに手を掛けたとこで

ピスティアさんの視線を感じた。


「あの~、出来れば部屋の外に

いて下さるとありがたいのですが」

「そうですか、気にせずにどうぞ」

「............。」


このメイド、女性の前でパンツを

脱げと言うのか!

ひどい、ひどすぎる!鬼畜だ。

薄々気付いてはいたけど、

ピスティアさん

かなりのドSとみる。


「あの、パンツ脱ぐのですが...その

醜いものが見えるかと?」


顔を赤くしながら

俺は遠回しに伝えることを試みた。


「仕方ないですね、後ろを

向いてますのでどうぞ。」


何をそんな気にすることが、と

ぼやきながら後ろを向く。

よしっ、これならまだ着替えれる。

俺はパンツに手を掛けた。

一気に下ろし、素早くはきかえる

一連の動きをイメージしたのち

気合を入れた。

これなら、いける...。始めるっ!!


「あっそうそう、リヒト様...」

「ちょっ!」


危ないっ!俺は脱げかけたパンツを

海老反りの要領で素早くはいた。

自己新記録かもしれない。


「な、何ですか!」

「い、いえ。後で言います。」


ちょっと顔が赤く見えるのは

気のせいか。

気を取り直して、俺は素早く

はきかえた。


「終わりましたよ。で、さっきの

話はなんですか?」

「さ、さぁ~、忘れました。」

「もしかして、覗く気でした?」

「もう一回、冷水かけられたい

ですか?リヒト様。」


俺は無言で首を横に振った。

お互いだんまりのまま、部屋に

案内された。ドアを開けると

そこにいたエルピスは

着替え中だった。何というか、昨日

といい今日といい人の着替えによく

遭遇するものだ。

目が合うと、エルピスは

ベッドに潜り込んで顔だけ出し

すごい目で睨みつけられた。


今日も厄日だなー。(棒読み)

横目でチラッと見ると

ピアティアさんはものすごく

悪い意味で綺麗な笑顔だった。

くそッ!はめられた!

なんてこったい!


「ごゆっくり、どうぞ~」


はぁ、今後ピアティアさんの

行動には気をつけようと心に

誓った俺だった。深いため息を

つきながら部屋の近くの席に

腰を下ろし、脳内で早急に

謝罪の言葉を探す。


「あー、なんだ。エルピス

悪気はなかったんだ。本当だ。」

「本当に~?」


エルピスの疑念の視線がささる。


「本当だ!」

「普通はさ、レディーの部屋に

入る時はノックぐらいしなさい

って、妹とか両親とかからさ

教わらなかった?」

「妹に、たしかそんなことを

言われた気が....しなくもない」


はい、全くその通りです...。

俺は椅子から下りて、エルピスの

ベッドの下で正座をした。


「うーん、でもさ習って

なくても考えたら分かるよね?

それなら、あれ?私はレディー

としてカテゴライズされてない?」


首を横に傾けながら尋ねる。


「そ、そんな事はないぞ!

遠くからパッと見ても、すごく

綺麗な体の線だったと思うぞ!

メリハリもあってだな!

そ、それに...ええと」

「も、もういいから!」

「え?あっ、うん」


エルピスは俺の言葉を聞いて

ベッドの中に隠れてしまった。


「ふ、ふーん。もういいわ。

許してあげる。私、寛容だから」


自分で言うことじゃないと

思うが、許してもらえるなら

ありがたいな。気を取り直して、

本題に入るために切り替える。


「で、呼んだ理由は?」


エルピスはベッドに潜り込んだ

まま言った。


「リヒト、あんたに昨日の続き

じゃないんだけどさ、さっそく

お願いがあるの。」


昨日の続きというのは、俺が

力になりたいと言ったことだろう。


「なんだ?何かあったのか?」

「実はね、最近城下で民で

研究をしている男性の集まりが

あるんだけどね、アガペって

言うんだけど。そこで何か

あったらしくて。男の人だし

私よりかはあなたが適任かな

って思って。お願いできる?」


なるほど、そういうことか。


「任せてくれ。何か分かったら

報告するよ」


早速与えられた任務に

少しばかり心が踊った。

民の研究機関で、男だけか。

探ってみるか。

初仕事ということに胸が躍る

俺は、早々と城下町に降りた。


「相変わらず、ここの町は活気が

途絶えないな」


それに、未だに騎士団の

マントを着けて歩くのは慣れないな。

どうやら、城下町の民には

だいぶ俺の存在は浸透した

らしいが、それでも疑いはまだ

あるらしく...。それにここでは

男の騎士団はまずありえない存在

というのもあって珍獣を見るような

好奇の視線があちこちから飛んで

くるし、良いも悪いも噂は耳にする。

その中で、小さな子供達などは

怖いもの知らずと言うか

なんというか「リヒトさん」

と無邪気に声をかけてくれる。

アーデルハイトに来てまだ

日の浅い俺にはこういう声は

とてもありがたいものだった。

しかし、まだ俺を不審な者として

か見れない民も少なくないようで

声を掛け、こちらから近寄ろう

と思っても逃げられてしまう。

うーん、これじゃ情報を

集めることができないじゃないか。

親が道の真ん中で途方にくれていると

見知った顔が声を掛けた。


「リヒト、あんた道の真ん中で

なに落ち込んでるのよ」

「リヒトお兄様?どうなされた

のですか?」

「ん?おう、二人ともどうした?」


セレーネとミスラだった。

おぉ、そうだった、そうだった。

俺には幼馴染というなんとも

都合の良い諜報員.....じゃなくて

親戚がいたじゃないか。


「どうした?ってのは私たちの

セリフなんだけどね」

「ちょっと陛下から頼み事

されてるのだが、これが俺には

少しばかり厄介なものでな。

よければ、丁度いいし二人にお願い

したいことがあるんだけど。」

「はい、荷物」

「ーー分かったよ」


俺はそれから、二人の荷物持ちを

させられ、二人の家に向かう

事になった。荷物の9割は

ミスラの物なんだけどな。

家に着くと、二人にエルピスに

頼まれた内容である


<民の研究機関で最近、何かしら

不穏な空気があること。

エルピス自身が直接聞きたいのは

山々だが、相手が男のため

俺に頼んだこと>


を話した。

話を聞いた二人は、しばらく唸った。


「そうね~、確かにちょっと前まで

すごく活発に色んな技術開発を

試みてる!って話を聞いてたけど

最近は聞かないわね~。」

「私もそのくらい.....あっ。」


セレーネが何かを思い出しような

顔をした。そこから顔を渋らせた。

おそらく、あまり良くない噂

だったりするのだろう。

俺はセレーネの手の上に手を重ねた。

俺の行動に驚いたのか

セレーネはハッと顔を上げた。


「り、リヒトお兄様。何を!?」

「セレーネ、君が知ってることを

教えてほしい。大丈夫だから。」


セレーネは意を決したのか

大きく息を吸った。


「アーデルハイトには民に

男の人達だけで構成された

半ば趣味で発明とかをしている

人達がいるのですが、彼らは

アガペと言われてます。

彼らの技術は

今でも使われていて、私達の

生活にも大きく関わっています。

そしてもう一つ、リヒトお兄様も

知っての通り、王国内にも

研究機関があります。テクネという

名称がありますね。そちらも

大変素晴らしい発明をされている

ので、騎士団の方と同等な人気と

信頼を得るほどです。」

「うん、続けて。」

「リヒトお兄様は最近テクネが

発明をしたという噂を聞いた

ことはありませんか?」


俺はゴチャゴチャになっている

記憶をすることにした。

なんか、聞いたことがある気がする。

なんだっけ、確かこっちに来て

すぐの時に聞いた気が......



「あとね、研究機関もあるんだけど

そこもすごく優秀でね~。

つい最近、空を飛べる...気球?

とか言ったものを発明したそうよ」


思い出した。串焼きお姉さん

が言ってた奴か。


「確か、気球とか飛行船とか言うのを

聞いた気がする。」

「その通りです、リヒトお兄様」


セレーネが出来のいい生徒を

褒めるように微笑んだ。


「正確に言えば、飛行船とか

いうものらしいです。」

「ヒコウセン?船が飛ぶのか?

海を渡るのではなく?」

「私も確かのことは分かりませんが

船が空を飛ぶようです。」


すごいな、テクネ。俺が知る限り

だと今までの歴史上その飛行船

とやらに似た発明を試みようとした

国がたくさんあるのを知っているが

実際発明できたのはアーデルハイトが初めてじゃないか?

俺は改めて、アーデルハイトに

驚かされた。


「しかし、そこで絡むのが

この噂なのです。」


ここからが、本題か。


「この飛行船の発明に着手したのは

テクネではなく、アガペだという

噂です。アガペ側はその飛行船

を発明し、国に技術提供をしたのは

自分達だ!と主張しており、

テクネ側はアガペ側の介入は

一切なく全て自分達の手による

発明だ!となっているようで。

アガペの発明をテクネが技術提供

の話をなくして、まるまる自分達

の物にしたのでは?という噂です。

実際、アガペをよく知っておられる

方も飛行船の発明について

よく話し合われていたという

本当かどうかは分かりませんが

証言もあって....。」

「テクネはテクネで今までの

実績があるから嘘にも思えない。

ってところ?」


セレーネは黙って首を縦に振った。

うーん、思ってたより深刻な

問題じゃないか?

なるほど、セレーネの話をまとめると


アガペが国の為になる

と思って提供した発明を、テクネが

その発明を自分達のものとして

公に発表したかもしれない。


という噂なんだよな。

これが本当ならかなりめんどくさい

ことになりそうだ。いくら、男が

少ないとは言っても内乱が起こっても

おかしくないよな。

ひとまず、俺は頭の中に

状況整理をした。


「セレーネ、ありがとう。でも

どうして言うのを躊躇ったんだ?」

「それは.....それは、敵同士でも

ない同じ国の者同士が互いに

いがみ合うなど気持ちの良い

話ではないからです。」


そうか、昔からセレーネは

こういう子だったな。

いつも、自分より他人を

考える子だった。

そんなセレーネを見てると

不思議と笑みがこぼれた。


「優しい子だな、セレーネ。

そういうところ変わってなくて

俺、嬉しいな。」

「なっ!?リヒトお兄様!?」

「うん?」

「リヒトお兄様もそういう発言を

無自覚にするのは変わってない

のですね!もぅ~。」


セレーネは頬を膨らませながら

すねてしまった。

なんか、俺悪いことしたかな?

まぁ、いい。それより

横からの視線の方が痛い。

ミスラが今にも目玉が飛び出すのでは

と思ってしまう程、こちらを

睨みつけてた。と思ったら

目にも留まらぬ速さで

ヘッドロックをされてしまった。


「ちょっと、あんたね~!昔から

セレーネに甘過ぎんのよ!」

「痛い!痛いって、ミスラ!」

「はぁ?こんくらい我慢しなさいよ

ビリケツリヒト!」

「お前っ!言ってはいいことと

悪いことがあるんだぞ!

このひん....にゅ.......」


急に締め付ける力が大きく

なったのは気のせいではないな。

頭が、頭が潰れるっ!!


「ぁぁん?何か言ったかしら?」

「いえ、何も発してません!」

「まぁまぁ、ミスラお姉様。

リヒトお兄様も懲りてますし

もうそのへんで。」

「あんたもあんたでリヒトに

甘いわね~。まぁいいけど」


セレーネが諌めてくれたおかげで

やっと地獄から解放された。

マジで天国見えかけたぞ。


「とりあえず、俺はまだ民の人にも

怪しまれてることも多いし

うまく情報が集められそうにない。

できる限りでいいから

なにか分かったら俺に報告

してくれないか?」


答えは即答だった。

「もちろん、構いませんよ。むしろ

力になれて光栄ですわ。」

「別にいいけどさ~、後でなんか

しなさいよ。」


「ありがとう、二人とも。じゃあ

また今度。」


よし、これで少しは多く情報が

集まるはずだ。2人に礼を言って

外に出ると、もうすっかり夕方に

なっていた。

随分、話し込んだな~。それだけ

有意義な話し合いになったって事

だったということにする。

俺は早く城に戻ることにした。

.....っ!?体に寒気が走った?

確かに、冬が明けたばっかで

決して暖かくはないけどさ。でも、

そういう寒気じゃないんだよな。

なんていうか、誰かに

目を付けられてる感じ。

殺し屋に後ろから狙われてる

みたいな。気のせいだとは

思うけどな。まだ騎士団に

入りたての俺を狙うような

相当殺気立った人もいない

はずだしな。


城に帰って、エルピスに今日

教えてもらった事を報告した。


「ふーん、そういうことが

あったの。私がもっとしっかり

してなかったからよね。」


エルピスは落ち込む。


「エルピスのせいじゃないさ。

責任を感じることは無いと

思うよ。うん、本当に。」

「そうかしら?」

「ちゃんと、俺が責任持って

解決するから。」


絶対成功するとは確証は

今の時点ではなかったが、エルピス

を不安にさせたくなかった。


「言ったわね~?頼りにしてるわ

私に出来る事があったら

言いなさいよ。」

「承知致しました、陛下」

「よろしい」


さてと、明日も情報収集に

励みますかね~。

よしっ!おやすみっ!


その時、リヒトの寝込みを

狙う人影があることに

気付くことなく、眠りに

ついてしまった。

次回は

問題により触れつつ

アイギスについてかけたらなー

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