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景色が暗転した。
どうやら転移したみたいだ。
転移魔法が序盤で使えるとするなら、都市間のワープリンクゾーンのみはず。
そしてまだ都市間をコネクトしてないから出来ない。
あとはゲームマスター権限。
その効果により、途轍ない数の人々がこの暗闇に降り立った。
「たった今──5万人目の最後の一人がログインした。これを機にあるゲームを始めよう」
闇は語り出す。
「みんなはこのDestiny Gate Onlineをデスゲーと略しているそうだが、これより本当のデスゲームを開始する」
俺はこの時、一瞬何を言っているのかさっぱり分からなかった。
数秒程遅れたあと俺はこの言葉の意味を理解した。
俺の思った事は、
──ふざけるな。
そう言葉にしようとしたが何故か喉の辺りで詰まる感じがする。
周りを目をやるとみんなも同じ様子だった。
どうやら声が出せない空間らしい。
「ルールは簡単だ。このゲームでHPが0になったらそのプレイヤー自身も消滅してもらう。ゲームクリアするまではログアウトは不可──それ以上の説明は必要ないだろう」
なんだよ──それ。
そんなの事になんの意味がある。
理不尽だろ──
「それと現実における体の心配は無用。これでデスゲームの説明は終了だ」
闇は淡々と告げて
「命は大切に──諸君らの健闘を祈る」
闇は消え去ると同時に文字が表示された。
Death game start
その無機質な文字ほど残酷な物を俺は知らない。
景色は元に戻り──
ギルドハウスの前に戻ったが、人々の様子は戻らなかった。
一部の人々は叫んでいたが、ほとんどの人の様子は
──絶句。
───絶句。
────絶句。
実際に俺なんかもそんな心境に至っている。
でもこうしちゃいられない。
このままだといけない。
だから──嫌でも行動を起こすしかないのだ。
「三人とも聞いてくれ。この先俺たちが最優先で取る行動はレベル上げだと思っている。」
「どうしてだ?」
アルが不思議そうに聞いてくる。
「まず一つは、序盤の狩場が人で埋まるだろう。そうなる前に一つでもレベル上げて置いた方がいいはずだ。」
「たしかにそうだが、それだけじゃ危険を冒す理由にはならないだろう?本音はどうなんだよ?」
アルは一見チャラそうだが、このように鋭いところを突いてくる。正直読めない奴だ。
「この世界では法律がない。つまり──マナーしかないわけだ。この世界には5万人も人が居るのだから少なくともいるろう?」
「何がだ?」
「プレイヤーキル」
《プレイヤーキル》通称PKと略される。要するにプレイヤーをプレイヤーが倒す事を意味する。
そしてこの世界では──殺人を意味する。
つまり、俺はそいつ等からの自衛としてレベルをあげようとしているわけだ。
「なるほどな──それなら納得できるな。正直怖いが、ミナトに賛同するぜ。」
流石はアル。たのもしい奴だ。
「私も兄さんに賛成。大体、ゲームをやりに来たんだし。」
「じゃぁ、僕も賛成だね。」
──満場一致。
正直な話、妹弟にはちょっと遠慮してほしかったが、俺とアルがいるわけだし大丈夫だろう。
「話はまとまったし、一狩りいこうぜ!」
早速だな、おい。
まぁ、早ければ早いほうがいいんだけど。
「おう。行くか」
──俺達は始まりの町を後にした。